2016年12月01日

北海道通信〜甚大な台風被害と災害補助の状況〜vol.6

AMネット会報LIM81号より

「北海道通信〜甚大な台風被害と災害補助の状況〜vol.6」
白川 博 さん

 北海道では、台風7号(8/16〜17)、11号(8/20〜21)、9号(8/22〜23)、10号(8/29〜31)など、北海道に、一連の台風が猛烈な勢力を保ったまま連続で直撃したことは、観測統計を開始した1889年(明治22年)以降過去に例がなく、各農作物においても壊滅的な被害を及ぼしました。農地・農道などの復旧には今もメドが立っていません。

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<通行止めが続いている国道274号線。日勝峠では複数箇所で道路の損壊や土石流が発生した。増水した沢に基礎部分が削られ、路面が落ちた日勝峠「三国の沢覆道」
(9月3日、胆振管内日高町:帯広開発建設部提供)>


■甚大な台風被害

 今般の台風災害の集中豪雨・強風などにより、89ヵ所の河川氾濫、農地の土砂流入、住宅損壊・浸水被害が発生しました。これまで、北海道内の災害規模では過去最悪と呼称されていた1981(昭和56年)の通称【56水害】の被災規模も大きく上回り、道路及び河川なども含めた被害総額が2,740億円にも上る未曽有の災害状況となりました。

 台風被害による宿泊キャンセルなどの影響が報告されている施設は120件以上(北海道観光局調べ)と、一連の台風被害によって、ライフラインや公共交通網が寸断されたことにより、観光・運輸業界等にもかつてない経済的損失を及ぼしています。

 今般の台風の影響等によって、高齢者や障害者が入居する道内18の福祉施設に大きな浸水被害などが発生しましたが、7割が国の水防法に基づく「浸水想定区域外」であったことがわかりました。また、「想定区域内」であっても、洪水などに備えた避難計画づくりは遅れているため、今後は、北海道の各地で台風の大雨・浸水被害の恐れがあることを「現実」として、想定区域指定の有無に関わらず、万全な防災対策を講じる必要があります。

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<生活道路が一面で冠水し、住宅街を不安そうに手をつないで見つめている親子(8月31日、十勝管内芽室町)>


■収穫目前の農作物被害

市街地のみならず、自然の猛威によって『実りの秋』を奪われた農業・農村地域は、次年度以降の農業経営はもとより、今年の農作物や販売収益などはどうなってしまうのか?
今秋の収穫を目前に控えていた農地・農作物、農業用関連施設においても、惨憺たる被害状況が報告されています。北海道内の農林水産業の被害総額は675億円(うち農業分野は543億円)、被害面積で3万8,927haもの甚大な被害報告となりました。

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<河川氾濫により、農地を超え広範囲にまたがり冠水被害が発生。収穫を目前に控えた玉ねぎが回収不能となり、道路を横断した。(8月30日北見市常呂・日吉地区)>

来春の各農作物の作付に向けた農地復旧には、「客土」と呼ばれる土を入れることが不可欠です。11月中旬頃より土壌凍結が始まることから、現在も農地復旧に資する緊急対策の構築を、国や道に要請していますが、被災から2ヵ月以上経過しても復旧スケジュールのメドが立っていない農地が散見されています。

 また、台風の豪雨の影響によって、土壌含水量が多く農地が乾くことができません。畑地のみならず、大きな影響被害が報告されにくいはずの「牧草地」にも湿害となる『根腐り』が発生し、牧草収穫の遅延と品質劣化の両面で、酪農家の経費増として重くのしかかっています。

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<氾濫増水した影響で、幹線道路の崩落並びに原形をとどめていない「牧草地」(9月1日、十勝管内)>


■「激甚災害」指定での災害補助

国は、北海道を襲った台風を「激甚災害」に指定しましたが、災害補助率は最大で98%までかさ上げされ、被災した農地や農業用関連施設などの万全の復旧対策を進めていくこととなります。
 
 一方、被害を受けた農作物は国の激甚災害の「補償対象外」となります。これは、全国の農業者が任意加入(作物によっては強制加入もあり)できる「農業共済制度(相互保険)」で、農作物が補償されることが大きいと思われます。


■相互扶助の「農業共済制度」

 農業者の「経営セーフティネット対策」と呼ばれる農作物の相互保険制度(農業共済制度)の観点から、生産者や地域JAの取り組みなどをご紹介します。
「農業共済制度」は、農業災害補償法の下で昭和22年、農業者に対して国の公的な、相互扶助の保険制度として設立されました。

各都道府県(地域ブロック単位)の農業者が毎年支払う共済掛金を原資として、自然災害に被災した農業者に対し、被害程度(減収量補償)に応じて共済金が支払われる制度です。(運営資金の約半分は国の公的資金(国庫負担)で賄われる)

 一方で、主力作物である長いも・ニンジン等の野菜・果樹や飼料用トウモロコシなどは原則加入できません。しかし、今般の台風被害により、市場価格の変動が大きい上記作物なども壊滅的な被害を受けたことから、JAグループ北海道では、補償対象外となる各農作物に対して、緊急支援対策を国や、全国共済連合会などに求めることを決議しました。

 「農業共済制度」は、共済金が支払われた場合、翌年度の保険料率(基準単収)が上がります。国の災害保険制度である特性、保険業務上では当然のことと思われるかも知れません。

 一方で、自然災害の猛威には、なす術もなく、ただただ未曽有の被害状況にさらされ、茫然自失の状態にある農業者が多くいます。加えて、次年度以降も、甚大な台風被害以外にも自然相手の農業者には様々な農作物の『減収要因(長雨、干ばつ、日照不足、霜、高・低温被害など)』があることから、今回の一連の台風被害は「特例扱い」とし、翌年の査定に影響を及ぼさない様、粘り強い団体要請が必要となります。

 とりわけ、北海道では、これまで大きな台風被害に直面することがなかった地域・気候条件などに加え、地域農業者の不断の努力こそが、国内外に冠たる最高峰の収量・品質の両面で大きな評価を得てきました。
 
 それが、今般の台風被害によって、先祖伝来の『地力(表土)』が1mも削り取られた地域もあり、当地のプロ農家の言葉にして【半世紀以上もかけ大切に作ってきた農地】が、一瞬にして表土流出に加え、土砂・風倒木の流入などによって目を覆う変わり果てた「姿」となってしまいました。

 そのため、次年度以降も農業経営を諦めることなく、生産現場のプロ農家が意欲的に営農を再開できるためには、地域間レベルのきめ細かな不安払しょくと同時に、国や道、各自治体に対して、1日も早い農地復旧と農業用関連施設などの復興対策要請が今、何よりも求められています。

 被災された皆さんへ心からお見舞いを申し上げると同時に、次年度以降も意欲をもって基礎食料生産を担う農業者とともに一日も早い回復を願ってやみません。■
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「グローバル化、変える時〜未来志向の貿易協定を!」AMネット会報LIM81号(2016年11月25日発行)より

AMネット会報LIM81号(2016年11月25日発行)より

「グローバル化変える時」〜未来志向の貿易協定を!

武田かおり AMネット

◇強行採決されたTPP
2016年11月4日、TPP承認案と関連法案は衆院TPP特別委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決されました。なぜ強行採決と言われるのか。手続き軽視といえる経過をまとめてみます。

山本有二農水相は「強行採決するかどうかは佐藤勉さんが決める」と述べ批判を浴びる渦中、JA関係者に対し「農水省に来て頂ければ何かいいことがあるかもしれません」と利益誘導を匂わす、問題発言が再びありました。その他、@SBS米の不祥事(バックマージン)も明らかとなり、日本政府のTPP影響試算の前提条件が誤りだと分かった。試算し直すべき
ATPP協定文の誤訳・抜け落ちが発覚。内容が変わるため正しい協定で再度議論すべき、といった議論から「今国会での承認は拙速だ」と維新を除く野党が反発を強めていました。

上記の理由から当然、議事運営に混乱が生じ、佐藤議院運営委員長が「TPP特別委員会を開く状況に至っていない。与党に努力を求めたい」と同委員会で説明していた“本会議開会をめぐる協議のさなかの休憩時”に、国会の規則を破って一方的に開会。自民、公明と維新の3党で賛成多数となり、衆院TPP特別委で、TPP批准案を強行採決しました。

TPP特別委員会での採決は、野党議員が委員長席を取り囲んで抗議する中行われ、速記録は承認案と関連法案の採決部分の5カ所含む9か所が「聴取不能」の状態。民進党は「何を採決したのかがわからず無効だ」と、採決のやり直しを求めましたが聞き入れられまず、11日参議院に審議入りしました。

衆院通過後は、日本国憲法第60・61条の規定により、参院に議案が送られて30日経過すると「採決なしで自然成立」してしまいます。
今批准することは「この条件までは日本の国会は飲むのだ」と意思表示するようなもの。今後、別の貿易交渉でも譲歩を迫られるでしょう。


◇それでも日本政府はTPP批准するのか?

これまで「我が国が率先して動いて米国を引っ張り、早期発効の機運を高めていく」と日本主導でTPPを進めていくと何度も主張していた官邸は、完全にハシゴを外されました。他国の発言も混沌としています。

11月17日安倍総理は、大統領就任前のトランプ氏と異例の会談を行い、「トランプ次期大統領はまさに信頼できる指導者であると確信」と発言、その数日後「TPPは米国抜きでは意味がない。再交渉が不可能であること同様、根本的な利益のバランスが崩れてしまいます」と記者会見しました。

しかし、その約1時間後トランプ氏がTPP脱退を表明、その後オバマ大統領も、任期中の議会承認を 断念する考えを正式表明しました。

強行採決された11月4日、本来予定されていた衆院本会議が流れ、「パリ協定」の承認案の採決も延期。京都議定書の流れをくみ、日本主導を国際約束したはずのパリ協定は、日本は批准すらできないまま、同日発効しました。
安倍政権は、あまりにも世界情勢を読めないまま、信じたい情報だけを信じ、突き進んでいることが世界中に露呈した結果となりました。


◇日米FTAにつながる二国間交渉の中身

これまでTPP交渉と並行し、各国の交渉が進められてきました。これはTPP本体の協定とクロスし、より複雑化している所以でもあります。中でも、日米並行交渉は日本側のみの約束が非常に目立ちます。

安倍政権が2013年4月に日米で交わした書簡に
「両国政府は,TPP交渉と並行して,保険,透明性/貿易円滑化,投資,知的財産権,規格・基準,政府調達,競争政策,急送便及び衛生植物検疫措置の分野における複数の鍵となる非関税措置に取り組むことを決定」
とありこれだけ幅広い分野が、参加直後に日米交渉で取り組むと決定されたことが分かります。

2016年2月、「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」とした日米交渉結果が政府からようやく出されました。

日本側のみ29ページに渡る米国政府に約束させられた内容が書かれる一方、米国側からの約束は一つもないという驚愕の結果となっています。

◇「保険」
アフラックの保険が全国の郵便局で販売されたことを想起させる
「民間の保険サービス提供者に対し、透明性あるかつ競争的な方法で日本郵政への販売網へのアクセスを与えることの重要性を確認」
と冒頭から書かれていることが象徴的です。

◇「透明性」
「政府審議会・諮問委員会において、外国の関係者を含む全ての利害関係者に対し、自国の関係者に対して与えられるものよりも不利でない条件で意見書を提出、会合を傍聴、出席を認めること」とあります。

つまり、日本企業より有利な形で政府の審議会などに「米国企業が日本の食の安全基準や、健康保険への薬の価格・保険収載などに口出しできる」仕組みです。

その他も非常に細かな部分まで約束され、明らかな内政干渉です。これ以外にも書簡があり、詳細な分析と国会での議論が必須です


◇「これから」の貿易協定は

2016年12月号「世界」の首藤信彦氏によると、米国NGOパブリックシチズンのロリ・ワラック氏とコロンビア大学ジャード・バーンスタイン教授が連名で、新しい貿易協定構想を提言しています。(但し、アメリカの国民益が第一という視点との首藤氏の指摘あり)

そこでは、「今後の貿易協定に必ず含まれるべき」として、通貨操作禁止の強制、労働者の権利・環境権の基準化など、「貿易協定から排除されるべき」として、投資家特権・ISDS条項、食の安全等を抑制する条項、金融規制を制限するルール、公共サービスを民営化しサービス部門の規制を制限する条項、政府調達政策への拘束条項などが挙げられています。

また、11月23日朝日新聞に掲載されたピケティ氏のコラム「グローバル化、変える時」は、非常に今後の私たちのあり方も示唆していると感じるため、抜粋、一部要約し紹介します。

「大統領選の結果から学ぶべき教訓は明らかだろう。一刻も早くグローバリゼーションの方向性を根本的に変えることだ。今そこにある最大の脅威は格差の増大と地球温暖化である。…貿易は本来あるべき姿、つまりより高次の目的を達成するための手段でなければならない。

関税その他の通商障壁を軽減するような国際合意は、もうやめにしないか。法人減税による財政ダンピングや、環境基準を甘くして生産コストを下げる環境ダンピングに対抗すべく、強制力ある数値規定をあらかじめ協定に盛り込んでおくべきだ。たとえば法人税率の下限や、罰則を伴うCO2排出量の確固たる目標値を定めよう。なんの対価もない貿易自由化交渉など、もはやあってはならない。

EUカナダのCETAは時代遅れで、破棄すべきだ。内容が貿易に限られ、財政面でも環境面でも拘束力を伴った内容がない。そのくせ「投資家の保護」のためにはあらゆる手立てが講じられ、多国籍企業は国家を民間の仲裁機関に訴えられるようになる。開かれた公の法廷を回避できる。

このタイミングで司法を弱体化させるなど常軌を逸している。優先すべきはその逆で、強力な公的機関を立ち上げ、その決定を守らせる力を持つ欧州検察庁のような組織を創設することだ。今こそ、グローバリゼーションの議論を政治が変えるべき時なのだ。」■


【朝日新聞2016年11月23日】
(ピケティコラム@ルモンド)米大統領選の教訓 グローバル化、変える時
全文はこちらから→http://www.asahi.com/articles/DA3S12671539.html
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2016年11月26日

奈須りえ氏×岸本聡子氏×神田浩史氏パネルディスカッション「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

東京都大田区議の奈須りえさんとオランダのNGO「トランスナショナル研究所(TNI)」の岸本聡子さん、さらにAMネット理事の神田浩史をコーディネーターに加えたパネルディスカッションの様子をお伝えします。

文責 AMネット 事務局

■講演1.「民営化でどうなる?公共の可能性は?」≪奈須りえさん≫ 
http://am-net.seesaa.net/article/444348256.html

■講演2.「より良い公営へ〜最新海外レポート」≪岸本聡子さん≫
http://am-net.seesaa.net/article/444348316.html


■パネルディスカッション(以下敬称略)

神田−−後半のパネルディスカッションは、会場からの質問を元に進めて行きたいと思います。

水道事業の民営化については、現政権下で成長戦略にも盛り込まれており、推進していこうという動きがあります。それと、現在進んでいるTPPやTiSA(新サービス貿易協定)の流れをつなげてみたときに、どのようなリスクが考えられるでしょうか。

奈須−−国内で行われている規制緩和と違い、TPPやTiSAが実施されると、ラチェット条項によって、いったん規制緩和されてしまった民営化はあと戻りできない、再公営化できないという状況が生まれてしまいます。さらにISDS条項によって、企業が見込んでいた収益を得ることができなかった場合も、企業が国家を相手に訴えることや損害賠償を請求することもできるようになってしまいます。

いくら大阪市が、水道事業を行う企業に様々な縛りを設けても、TPPが実施されれば、その縛り自体が機能しなくなる°ーれがあるのです。

岸本−−アルゼンチンで18の水道民営化事業が行われ、そのうち9つの事業が再国有化されました。そのうち6つが国際調停に持ち込まれて、全てアルゼンチン側が負けています。

さらに最近は、「国際紛争調停ビジネス」が広がっています。企業が海外投資を行い、うまくいかなかった場合に、弁護士事務所が企業と組んで訴訟に持ち込み、莫大な損害賠償を勝ち取ろうということを行っています。

そうしたことを背景に、ISDSにからむ国際紛争調停の数が、飛躍的に伸びています。日本がこうした訴訟の対象になるということも考えなければなりません。


神田−−大阪市がこのような時期に、簡単に民営化を進めようとしているのは、とても危険だと言えます。
一方で、国や自治体が自ら民営化を進めるのではなく、市民も知らないうちにIMFなどによって民営化が進められてしまうケースもあります。

岸本−−IMFの介入による民営化政策は、1つのパッケージとなっています。しかも、そういったことは昔の話だけではなく、現在も続いています。

例えばギリシャやスペイン、イタリアなどヨーロッパの債務国がヨーロッパ中央銀行、IMF、債権国などによって、半ば強制的に公的資産の売却を進められてしまうといった状況が生じています。

神田−−財政難に陥った政府が、財政支援の見返りに公的資産の売却、民営化を迫られるというケースは至るところで見受けられます。
もう1つ、現在の状況で考えておかないといけない論点に「人口減少」があります。人口減少を前提とした水道事業の見直しでも、民営化やあるいは広域化といったことがあり、大阪では都構想や府市の水道事業統合などの話も出ました。

奈須−−民営化によるコスト削減が達成できたとしてもその中身は、実際には非正規雇用などで人件費を削減しただけで、質の向上も望めないといったものかもしれません。

広域化についても、いったい適正規模がどれくらいなのかという基準も定かではありません。ニースの場合のように、給水人口が60万人程度であれば適正かもしれませんが、270万人の大阪市が、これ以上広域化して、本当に効率的になるのか、あるいは意思決定の問題はどうなのか、そういったことが、まだまだ不明確であり、多くの問題を抱えています。

これまで広域化で提示されてきた仕組みは、広域連合や一部事務組合など、私たちが直接選挙で選んだ人ではない人たちが、意思決定する仕組みです。民営化の問題で問われているのは、民主主義そのものなのです。

神田−−日本で民主的統治を考える上で、どのような仕組みが求められるのか、あるいはそれに適した事例はあるのだろうかと考えたときに、興味深い事例があります。それは岩手県の矢巾町での取り組みです。ここでは、水道事業の見直しのために、徹底した情報公開と住民主体、住民参加のワークショップを積み重ねています。
また、全国的に見れば、流域の中での水道事業の連携をどう高めていくのか、といったことも興味深い取り組みだと言えます。

大阪のような大きな都市で、水道の質を高めるためにはどうすれば良いのか。「公営」か「民営」かといった二者択一ではなく、現行の公営がベストで民営化はダメということでもなく、もっと幅広い議論が必要です。最後にお二人に意見をお聞きして締めくくりたいと思います。

奈須−−例えば「広域で効率的な経営」と「住民関与がきちんと担保されるガバナンスのある統治機構」、あるいは、少しぐらい非効率的でも住民の監視の目がちゃんと届くのが良いのか、少しくらい監視の目が行き届かなくても経済性を求めるのか、本来そういったところまできちんと考えることが、水道民営化を考える上で必要だと思います。

公務員の給料が高いとか、非効率だとかいう一面的な情報ばかりが表面化していますが、私たちはもっと大切な問題が隠されていることに気づかなければなりません。いかに必要な情報を市民に伝えていくかが重要です。今日の集会もその貴重な一歩だと思います。

岸本−−民主的な統治というものを考えたときに、選挙に行かない人が半分近くもいるのが現実で、果たして水道事業にどれだけの人が関与したいと思うのか、必要な情報が公開されたとしても、どれだけの人がそれを欲するのかという問題があります。こうしたことを考えたときに、水道の問題としてとらえるだけでは、なかなか解決策を見出すのは難しく限界があると思います。

こうした現実を踏まえた上で、民主的統治をどうやって実現していけばよいのか、今そういったことを考える上で、面白いことがスペインで起こっています。

街角や広場で集まった人たちの声が政治に反映されるようなことが実際に起きているのです。そうなったのは、若者の失業率が40%とか50%とか、そういう極端な状況が起きて、大規模なデモが続き、それでも自分たちの声を本当に反映してくれる政治が行われない失望の中で、自分たち自身の政党を、と実際につくられたのが「ポデモス」です。この党は、わずか数年で国政において第3党にまで躍進しています。

水道民営化の問題は、民主主義の根幹にかかわる問題でもあります。私たちは地道な活動を続けるだけでなく、気運をしっかりとつかみ取ることが大事です。ポデモスの広がりは、そういったことも表していると思います。

神田−−「民主化」、「民主的な統治」の重要性が、今日のお二人の話の中で、何度も出てきました。そして、それは皆さんと一緒に築いていくものだということ、また、そのためのヒントも数多く出して頂きました。是非、このことを活かして一緒に実現していきましょう。■

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2016年11月25日

「より良い公営へ〜最新海外レポート」≪岸本聡子さん≫「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

文責 AMネット 事務局

■講演2.「より良い公営へ〜最新海外レポート」
≪岸本聡子さん≫ 

本日は、国際的な視点も含めて議論の素材を提供できればと思っています。「民営化」「再公営化」さらに「公営」について考えるきっかけになればと思います。

国際機関でも民営化を疑問視
世界銀行は、公共事業の民営化という新自由主義に基づく政策を展開し続けてきました。しかし、その一方で、最近は民営化がうまくいっていないのではないか≠ニいう調査報告も行っています。

世界銀行は、2014年に442件の官民パートナーシップ(PPP:民間委託、指定管理者制度、PFI、民営化など)の検証を行い、そのうち「貧困対策に効果あり」としたのは9件しかなかったとしています。

また、国連経済社会局でも官民パートナーシップという枠組みが2030年の持続可能な開発目標に合致しているか≠ニいう検証を行い、「水」「道路」「エネルギー」「交通」など、効率的なサービスを供給するために導入されたにも関わらず、それに失敗している≠ニの結論を出しています。

国連機関や世界銀行は、もともと民営化推進の立場であるにもかかわらず、このようなレポートを発表していることは、大きな変化の現れであり、世界中で官民パートナーシップの失敗が無視できなくなってきていることを表しています。


再公営化は世界的趨勢
再公営化の動きは、2000年の時点では、たった2例しかなかったのですが、15年経ってその数は235にも膨らんでいます。しかも実際の再公営化は、この数字よりもさらに多いとことは確実です。

一方、再公営化したらそれで良い成果が出るのか、民主的な統治が行われるのか、と言えば必ずしもそうとばかりは言えません。実際のところ、理想的な住民参加や透明性確保がなされていると言えるのは、むしろ少数であり、運営や所有だけが移行したというケースも少なくありません。

しかし、こうした活動によって議会や市民参加が促進され、活発な議論を通して民主的運営が行われるきっかけになったことは、大いに注目すべきことだと思います。 


公公ネットワーク
フランスやスペインでは、公営企業がネットワーク作りを始めています。民営化の波を食い止めるためには、公営企業間の知恵や資源を結集して対抗していかなければならないからです。

例えばニースというフランス第5の都市で水道事業が最近再公営化され、先に再公営化したパリやグルノーブルが支援したという実例もあります。

ニースは、地理的に80%が山間地です。ニースに流れるバール川流域の49の市町村に適正にサービスを提供し続けるには、各自治体が民間企業と個別に契約している状態では、十分に対応しきれないというのが最大の理由となり、流域間の公的な連帯を作るために再公営が行われました。これは自治体間の公公パートナーシップが再公営化を支援できるということを示すものです。


「民営化」ではなく「民主化」を!
再公営化を考える上で、民主的な統治はとても重要です。公営でも民間でも透明性や効率性を高め、最低限の金額でより高いサービスを提供するための手段として、市民と自治体がいっしょに会社を作ろうという動きが進んでいます。

市民と自治体でつくったロンドンのエネルギー供給会社では、水道や電気料金を払えない貧困層の人々のために、貧困層でも支払い可能で、しかも自然エネルギーによる電力を供給するという提案が行われています。

これは市議会側からの発案ですが、市民側からも民主主義を公営企業のなかで、どう確立するのかという視点での提案も行われています。このロンドンの例は、新しいビジョン、そして本当の意味での公共を考えさせてくれるものです。

「民営化ではなく、民主化を」といった議論が大切です。これからも、そういった議論を皆さんと重ねていきたいと思います。

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2016年11月24日

「民営化でどうなる?公共の可能性は?」≪奈須りえさん≫ 「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

文責 AMネット 事務局

現在、大阪市では水道民営化案が議会に提出され、民営化に向けた動きが進んでいます。こうした中、7月16日に大阪市の「ヴィアーレ大阪」で、シンポジウム「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」をAMネットなど市民団体の主催により開催しました。
シンポジウムでは、東京都大田区議の奈須りえさんとオランダのNGO「トランスナショナル研究所」の岸本聡子さんによる講演、さらにAMネット理事の神田浩史をコーディネーターに加えたパネルディスカッションが行われ、参加者も250人を超え、このテーマに対する注目の高さを示しました。【以下シンポジウムの概要】


■講演1.「民営化でどうなる?公共の可能性は?」
≪奈須りえさん≫ 

公共サービスで重要なことは
一般的に民営化のメリットとしては、「価格の低下」や「サービスの向上」が言われています。しかし、民営化とは「非営利の公共サービスを、営利の経済活動に置き換える」ことです。現在、大阪市が提案している民営化では、たとえ経営の効率化によりコスト削減ができたとしても、それは価格ではなく、株主配当や内部留保などに回される懸念があります。さらに利益を縮小させるようなサービス向上など望めないし、最低限の質の確保にとどまる可能性も高いと思います。

水道に限ったことではなく、公共サービスについては、「質の確保」「適切な価格」「公平・平等・適正な提供」が重要です。

事業の継続性に関しても、経営破たんや大規模災害の時にはどうするかなど、様々な問題があります。さらに、私が気になっているのは、民営化した場合に「地域独占性の弊害」をどう排除していくかということです。水道料金に対する適正かつ有効なチェックをどう働かせることができるのか。現在は、それを議会が担ったり、公務員法による様々な制約の下で行われていますが、民営化すれば、それをどのように担保していくのか…。

大阪市自体も、水道民営化に関していくつかの課題を指摘し「持続性の確保や公共性の担保を維持するためには、市や市会によるガバナンスを確保することが重要」としています。しかしそのためにどうするのか、相当の工夫が必要ですが、その工夫が見られません。


 利益は企業に、リスクは市民に?
もう1つ、民営化に関してあまり表面化していませんが「事業に伴うリスクを、誰がどのように負担するのか」という問題があります。水道事業には「急激な物価上昇」や「金利変動」、「法制度リスク」、「不可抗力による遅延」など様々なリスクを伴います。大田区でも「PFI」など、民間の活力を利用した取り組みを行っていますが、現実には事業運営に伴うリスクは、いつも自治体の側が負い、民間事業者はリスクを負わないようになっている≠ニいうのが実情です。

また、公共事業が民営化されても、それを請け負う民間事業者は、公共助成が受けられたり、税制面での優遇措置があったりすることも考えられ、かなり優遇された中で事業を行うことが予想されます。
今回、大阪市が出している提案でもリスクの多くは自治体の側が負う内容になっています。つまり、民間事業者はリスク負担は少なく、何かあった場合には「市」がそして「市民」が税金などのかたちで負担しなければならない仕組みとなっているのです。

こうした状況下で、毎日使い続ける水を経済活動に組み入れることは、企業にとっては必ずもうかる美味しい仕組みがつくられる半面、リスクは最終的に市民が負うことになってしまいます。質の向上や料金の値下げなどは、長い目で見ればどこまで実現できるのか。将来的に、議会のチェックも働かなくなる中で、どうやって「質の確保」「適切な価格」「公平・平等・適正な提供」を担保していくのか、様々な懸念が払拭されない中で、大阪市の水道民営化が進められようとしています。

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2016年10月18日

TPP日米並行交渉結果サイドレターは、日本側の約束は29ページにわたる一方、米国側の約束はゼロという結果。

2016年10月17日TPP特別委員会 民進党 岸本周平氏の質疑で改めて驚いた。
TPPと並行して行われてきた日米交渉の書簡から。

「TPP断固反対」と選挙を戦った安倍政権が数ヶ月後に、TPP参加したことは周知の事実。
直後2013年4月に日米で交わした書簡にて以下記述がある。

両国政府は,TPP交渉と並行して,保険,透明性/貿易円滑化,投資,知的財産権,規格・基準,政府調達,競争政策,急送便及び衛生植物検疫措置の分野における複数の鍵となる非関税措置に取り組むことを決定」
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/4/130412_syokan.pdf


それに基づき、これまでの交渉結果をまとめられたものが2016年2月にまとめられた書簡(サイドレター)は全33ページ。
うち、日本側は31ページ。
米国側は、2ページのみ。
そして双方2ページは定型的なもので、
日本側のみ29ページにわたって、米国政府に約束させられた内容が書かれ、米国側からの約束は一つもない。

■保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/side_letter_yaku/side_letter_yaku21.pdf


「両国政府」が取り組んだはずの非関税措置への取り組み。
日本側のみこれほど約束させられた事実はどうみるのか。
米国に約束させることができたものはなにか?

政府側は何度も「法的拘束力はない」というが、
「こんなことまで要求するなんて、相手国に失礼でしょう。では、日本政府は他国政府に対して同様の約束を要求したのか」
という岸本議員の質問に対しても
「こういった交渉がされているのは日米のみ。これまでの経緯が違う」と岸田大臣。

これほど細かく、日本側だけ約束させられていることに政府として、問題意識はないようです。


このサイドレターでは、保険,透明性/貿易円滑化,投資,知的財産権,規格・基準,政府調達,競争政策,急送便及び衛生植物検疫措置について、非常に細かなことまで書かれていますが、これまで米国貿易障壁報告書で要求されてきた内容と非常に似ています。
(2016年から、外務省訳がなぜか概要のみなところも気になります)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/usakeizai.html

岸本議員の質疑やサイドレターで明らかになったものから少し列挙します(多すぎる)。

■衛生植物検疫措置では
・日本では禁止されている収穫後の防かび剤が、現在、米国からレモン・オレンジ等、輸入できなくなるため、(農薬なのに)食品添加物として認められている。
食品添加物のため、表示の必要があるが、これをなくせと米国から要求されているが、表示できなくなるのか?
→塩崎厚労大臣「表示をやめるわけではない」

・薬事・食品衛生審議会の審議を、厚労省の審議会である「農薬・動物用医薬品部会及び添加物部会が合同で審議を行う」と、日本政府がどこで審議するのかを決められている。

・ゼラチンコラーゲン
牛由来のゼラチンコラーゲンの食用の使用について、厚労省提案の管理措置を条件に、人の健康に対する危険性は無視できると結論。輸入規制を緩和した。

■投資(規制改革)
2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増。
外国からの直接投資を促進、日本の規制の枠組みの実効性・透明性を高めるために、外国投資家他、利害関係者から意見・提言を求める。
定期的に規制改革会議に付託し、日本政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる。


■「保険」では
・民間の保険サービス提供者に対して、「日本郵政への販売網アクセス」を与えること
・郵政民営化法で、かんぽ生命保険との契約維持を要求しない
・総務省から金融監督庁に出向した場合、金融庁のみ報告する(つまり、総務省に報告し、かんぽに有利な扱いしないためだが、当然のこと)
・日本郵政鰍ェ連結損益計算書を年1回公表する(当然やっている)

■その他にも、「日本政府が当然やっていることを、いちいちピンポイントで約束させられていることの意味はなにか。
日本政府がどれほど信用されていないか。」

安倍総理は
「すでにやっていることだから、書いても問題はない」
と答弁。
しかし、「政府の立場として、これまでの文脈を考えても、日本は米国の奴隷なのかと思わせられる。」
といった岸本議員の指摘も追加します。

■岸本修平議員の動画は「TPPって何?」FBページの投稿からご覧いただけます。
https://www.facebook.com/groups/whatisTPP/permalink/1860467120840974/
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2016年10月09日

【団体賛同しました】3カ国市民社会によるプロサバンナ事業に関する共同抗議声明・公開質問〜政府文書の公開を受けて〜

JICAのすすめるODA事業、モザンビーグのプロサバンナ事業。

多くの問題を指摘されているブラジル・セラード開発を成功事例として、モザンビーク、ブラジルおよび日本の3か国政府による三角協力に基づいて実施されていますが、人権侵害、現地の農業活動や環境に深刻な問題を引き起こしています。

【署名募集】3カ国市民社会によるプロサバンナ事業に関する共同抗議声明・公開質問〜政府文書の公開を受けて〜
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-206.html

経緯詳細
https://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/2016/08/20160829-prosavana-ticadvi.html

【背景】
私たち3カ国市民社会は(プロサバンナ事業に対して)、(1)人権尊重、(2)透明性・アカウンタビリティ
の改善、 (3)FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)に基づく「意味ある対話」の実
現を繰り返し要求してきました

2015 年 10 月には、「UNAC等の 公聴会への 批判の声に応える ため」と称して、「市民社会関与プロ ジ
ェクト」が ジェクト」がJICAにより開始により開始 されました。しかし、 同プロジェクト は3カ国市民
社会に伏せたま進められ、 結果として現地社会に様々な負の影響をもたすに至り、本年 2月には、UNACな
ど 現地 9市民 社会 組織から非難声明「対話プロセスの不正を糾弾する」が発表され ていますています

【目的】
このたび、本年5月にプロサバンナ事業のとりわけ「市民社会関与プロジェクト」に関する一連の公文
書46件のリークがありました。これらに加え、日本の情報公開法に基づき入手した100件を超える公文
書に基づき、3カ国政府に対し、緊急の抗議と要請・公開質問を行います。

【声明・公開質問の内容】
以上を踏まえ、私たち3カ国の市民は、以下の緊急要請を行います。
1. プロサバンナ事業とその関係プロジェクトの中止
2. プロサバンナに関する残りの政府文書の即時全面公開

そして、次の質問に対する3カ国政府の回答を要求します。
(1) 上記「戦略」に関する文書分析に関する以上の結論妥当性に関する見解
(2) 「市民社会関与プロジェクト」にする以上の結論妥当性に関する見解

【要請・公開質問の対象】
外務省及びJICA
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