2018年07月01日

水道を民営化すれば、災害対策は遅れる。世界中の水道がなぜ「再公営化」しているのか?

▼水道の老朽管率がなぜこんな高いんだ!
民営化して水道経営を考えねば!

…みたいになってますが。

水道民営化すればコストは余計に上がる。

イギリス会計監査院の報告からも、世界中の事例からも明らか。

つまり、結論から言えば、
「民営化してコストカットし、そこから耐震化のコストをねん出する」

という、前提条件がそもそも壊れています。


→大阪北部地震:老朽水道管で被害相次ぐ 府で40年超3割
https://mainichi.jp/articles/20180630/k00/00m/040/144000c



▼再公営化が世界の潮流。

「民営化でコストが上がった」
「水道料金が上がった」
「職員削減しすぎてサービス悪化した」
「経営の透明性が悪化した」
等々…

水道を始め、世界中の公共サービスが「民営化が失敗」だったと、
「再公営化」している中、なぜ今さら日本が民営化せねばならないのか。

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▼水道民営化が成功と言われた、パリ市とイギリスその後。

パリ市は再公営化し、大幅なコストダウンと技術革新、水資源確保などに取り組み成功。

イギリスは世論調査で7割越える人が再公営化を要求。
会計検査院からも、PFIは高コストで透明性悪化で、課題解決まで使うなと言われたばかり。


民間企業は、どうしても短期的利益を求められるため、長期的視点をもてる公営が有利となる。

しかも、公営だと、株主配当も役員報酬もない。

水道で得た利益を、全て、水道に充てることができる。利益が流出しない。
結果、災害対策も進めやすいのです。



▼水道民営化・企業団・広域化が、今の「公営」に負ける、そのワケは?

▽民営化:料金高騰など、世界中で失敗が続く「時代遅れ」のやり方。
▽企業団統合:範囲が広すぎ、調整が大変。
▽広域化:そもそも大阪市には広域化のメリットがない(地域によっては広域化すべきだが)

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▼そもそも水道の耐震化が進んでないのは

適切な水道料金設定をせず、地味でコストのかかる耐震化を後回しにしてきたから。
イギリス会計検査院は「PFI(民営化の手法)の入札価格は40%割高でコスト削減効果もない」と報告。

大阪市だと、月200円水道料金上げるだけでOK。(一般家庭の場合)

優良自治体が、民営化を狙われる。


▼民間委託は効率化?

水道民営化だけでなく、民間委託が進みすぎているのも課題。

民間委託は「行政が現場を失う」こと。

今も、災害時は「早くて安い」から、職員が対応している。
でも現場を知らない職員だらけだと、いざという時、どう対応するの?

減災を言うなら、まずは直営を増やし、行政が現場を持つべきだ。

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▼浜松市の民営化は?

浜松市は市内処理60%を占める下水を、水メジャーのヴェオリア、日本のオリックス等出資の合弁会社で民営化すみ。
上水道も、民営化(同じく公設民営)を目指し中。

民間企業は経営悪化すれば撤退するが、
浜松市長は
「民間が破綻するより、このままでは自治体が破綻するリスクの方が大きくなる」と。


自治体が破綻するほどのリスクが本当にあるなら、民間企業が受けるのか?

民間破綻すれば、行政が責任を果たせるわけもない。

水がなければ地域崩壊。なんと無責任な。


→(平成経済)第4部・老いる国、縮む社会:5 身の丈にあうインフラとは 設備老朽化、人口減で収益悪化
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13565131.html


▼30年後の水道料金は1.6倍?

ついでに、朝日記事にもあるこの試算。

「日本政策投資銀行によると…30年後に今の料金を平均1・6倍に値上げする必要がある」は、
今のまま水道設備を維持すれば、が前提。

ダウンサイジングしなければ、いくらでもコストがかかるに決まっている。
広域化だけが処方箋じゃない。地域ごとに選択すべき。


※ツィッター投稿をまとめたため、文章が少しみづらいですが、ご了承ください。
https://twitter.com/amnetosaka/status/1013079753807413249
posted by AMnet at 16:00| 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月31日

パリ市の水道再公営化時の水道局長アン・ストラ氏報告など「みらいの水と公共サービス」開催報告

AMネット会報LIM87号より転載

シンポジウム「みらいの水と公共サービス」報告


報告:堀内 葵(AMネット)


2018年2月18日(日)、東京・都市センターホテルにて、シンポジウム「みらいの水と公共サービス」が開催された(主催:全水道会館水情報センター、後援・協力:アクアスフィア、水政策研究所、全水道、アジア太平洋資料センター(PARC)、国際協力NGO センター(JANIC)、AMネット)。

少子・高齢化の進展の中、水道・下水道事業など日本の公共インフラの維持・管理、持続性を確保し、未来へと継承していくことが大きな課題となっており、公共サービスの産業化が叫ばれる中、水道法改正に伴うコンセッション方式導入等の動きが注目される水道事業をテーマに、約200名の参加者が集まった。



基調講演として、東京大学総長特別参与・国連大学上級副学長の沖大幹氏より、
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)のうち、水に関わるゴールとターゲットの説明があった。また、水循環の重要性や水の公共性が謳われ「水が国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いもの」と明記された水循環基本法の解説がなされた。

沖氏は、SDGsの特徴として「民間の本業を通じた社会貢献」を挙げ、グローバル企業がSDGs達成に向けて、CSRやCSVだけに留まらず、開発援助や環境への貢献を進めていることが紹介された。


続いて、二人目の基調講演として、元パリ水道局長および元パリ副市長のアン・ル・ストラ氏から、パリで実現した水道の公営化についての紹介があった。


パリ市長の選挙公約として、それまで民営だった水道サービスが2010年に公営に戻された結果、組織が簡素化され、情報が公開され、工事の発注もグループ子会社から一般公開に変え、収益も競争力も上がった。

バラバラだったシステムを統合・再構築するなど、技術革新も進んでいる。

パリ市民が水道サービスのガバナンスに参加するなど運営の質も上がり、国連から賞を受けた。

水道にすべて再投資できることで、インフラ投資も増え、料金も下がり、相談センターを新たに作るなどサービスも向上し、雇用も増えた。

100%株式を得て循環サイクルをコントロールでき、予算面からも対応できるので、積極的かつ長期的な視点に立った行動ができる。
環境保全や生物多様性に配慮した水資源確保や、防災予防策など、これらは再公営化されてからの取り組み
とのことである。


後半は、トランスナショナル研究所の岸本聡子氏をモデレーターに迎え、沖氏、ストラ氏と森山浩行・衆議院議員(立憲民主党)が登壇するトークセッションが行われた。


森山浩行・衆議院議員(立憲民主党)は、
PFI法・水道法改正により、適切なダウンサイジングができなくなるのではないかと指摘。
古い管を入れ替えるタイミングだからコンセッションが出てきたのであり、水道料金として市民が負担し続けることになる。民主的に住民の声を入れて意思決定をしていく必要性を強調し、水道法改正の結果としてコンセッション(公共施設の運営権を民間事業者に委託する制度)が検討されていることへの警鐘を鳴らした。


沖氏から、
日本の事業体の問題として、必要なコストを価格に転嫁できていないこと、つまり適切な価格が設定されないことが問題、民か公ではなくどのような制度が良いのかを議論すべき、という提案があった。

ストラ氏からは、
民間企業が公的サービスに参入する理由は利益を得ることであり、公的サービスの市場が企業に利益をもたらさないなら魅力はないこと、しかし、パリの水道再公営化を皮切りに、他の中規模の町でも再公営化の流れや民間企業との契約見直しが起こっていることが紹介された。


最後に岸本氏から、民営化の問題点について世界中のNGOや住民組織の報告を参照してほしいこと、民営化の先進国と言えるフランスやイギリスで今何が起こっているかをしっかりと知ってほしい、という呼びかけがあり、4時間に渡るシンポジウムは終了した。


posted by AMnet at 22:40| 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月22日

【拡散希望】イギリス・ヨーロッパの会計監査院がともに「PFIは割高で透明性悪化。使うべきでない」とレポートする中、今国会でPFI法を改正していいのか?

英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)が続けて、発表したレポートで

「PFIでの入札価格は40%割高であり、コスト削減効果もなく、透明性も悪化」
「問題点が改善するまで、PPPを広い分野で集中的に使うべきではない」

と勧告する中、今国会において、「水道民営化」を加速させる「PFI法改正」が通ろうとしています。


英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)のレポートについて、岸本聡子さんより、超特急での報告をいただきました。
以下、ぜひご覧いただき、拡散いただけますようお願いいたします。


<以下、岸本聡子さん(トランスナショナル研究所(オランダ)によるレポート>

英国の官民パートナーシップ(PPP)請負企業カリリオンが2018年1月に倒産した直後、国家機関で財政の監査役である英国会計検査院(NAO)がPPPの仕組みを克明に報告するレポート「PFI and PF2」を発表した。

「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法である。英国ではPFIが用語として一般的に使われている。

PPPはより広義で、PFIは、PPPの代表的な手法の一つである。

折しも日本ではこの5月に、コンセッション方式の導入を推進するPFI法改正案が衆議院本会議で賛成多数により可決され参議院に送付された。


英国会計検査院はPFIの対費用効果と正当性を調査し、コスト削減の効果があるか検証した。

英ガーディアン紙は「納税者は先25年、£200 billion(約29兆円)をPFI契約に支払うことに」とする記事(1月18日)で英国会計検査院のレポートの主要な内容を掲載した。

レポートはPFIが公的な財政にプラスであるという証拠が乏しいと結論した。

さらに多くのPFIプロジェクトは通常の公共入札のプロジェクトより40%割高であると報告。

NAO(英国会計検査院)は、英国が25年もPFIを経験しているにもかかわらず「PFIが公的財政に恩恵をもたらすというデータが不足」と報告した。


現在英国では716のPFIプロジェクトが進行中で資本価値は£60 billion(約8兆7878億円)、年間の支払い額は2016-17で £10.3 billion(約1兆5084億円)。
新しいPFIプロジェクトが全くなかったとしても、2040年までの支払い金額は £199 billion(約29兆14520億円)に達する。

折しも英政府は、カリリオン(英国PPP請負企業)の£2.6mポンド(約3.8億円)の株を所有して主要なPFIプロジェクトに参画している。
カリリオンが倒産したことで、この公的な資金は危機にさらされている。

英国下院、公的会計委員会議長ののメグ・ヒラ―氏は
民間の負債を相殺するだけの恩恵がないことを25年間のPFIの経験は示した。今多くの自治体は変更に膨大な費用のかかる柔軟性のないPFI契約で鎖でつながれた状態である」
とPFIスキームを痛烈に批判した。

「財務省は指摘された問題に対処しないままPF2という新しいブランド名でPFI を続行しようとしている。学校や病院にもっと投資が必要であるのに、間違った契約で結局は納税者が過剰な支払いをすることになる。」


PF2はPFIの批判を受けて、前ディビット・キャメロン首相のときに導入された。

支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性を高めるというのが主な趣旨であるが、PF2の6つのプロジェクトを精査した結果も懐疑的である。

レポートによると総体的に公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつき、学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高である。

主要なPFIプロジェクトを公的な所有に戻す場合、未払いの債務に加えて追加で£2 billion(約2929億円)が必要であり、これは未払い債務の23%に相当する。

労働党と労働組合は、この非常にリスクの高いPPP・PFI の停止を訴える。
「PPP・PFI企業は追い出されるべき。私たちに必要なのは公的な倫理と確かな管理のもので公務員によって提供される公共サービスである」
と党首のジェレミー・コービン氏は言う。

GMB(全国都市一般労組)の書記長レアナ・アザム氏は
「会計院のレポートはPFIが納税者のお金の破壊的な無駄づかいだであることを証明した。カリリオンは公共サービスを利益の最大追求の企業に任せたときにどうなるかを示す最新の例の一つでしかない。」
と批判した。

これに対し
「道路や学校や病院といった重要なインフラはPFI や PF2で支払われているし、これは経済を活性化させ雇用を創出している。私たちはPF2を通じてPFI 契約の透明性を高めvalue for moneyを改善している。納税者のお金は、建設と長期維持管理のリスクが民間セクターに移譲するPFI や PF2を通じて守られている」
と保守党のスポースクマンは語った。


これに続き、ヨーロッパ会計監査院(ECA)もNAOに準じるレポートを発表

ECAは欧州連合が共同出資する12のPPPプロジェクトを分析。
短所と限られた費用効果が広く観察され、€1.5 billion(約1924億円)が無駄で非効率的に使われた。
支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性は広く悪化した。不明確な政策と戦略、不十分な分析、PPPの債務が公的なバランスシートに現われないこと(オフバランスシート)、政府と民間企業のリスク分担が不公平であることが特に問題である」と結論。

ECAはEU委員会とEU加盟国は指摘された問題点が改善するまでPPPを広い分野で集中的に使うべきではないと勧告

2010−2014年の間、EUは €5.6 billion(約7189億円) を84の PPPプロジェクトに提供した。
プロジェクトの全体の資本価値は, €29.2 billion(約3兆7480億円)である。監査は.フランス、ギリシャ、スペインの道路、交通、情報テクノロジー分野の12のプロジェクトを調査。プロジェクトの総額は€9.6 billion(約1兆2318億)で、うち EU が €2.2 billion(約2822億)を提供。

PPPs は公的機関に大規模なインフラを一つの手続きでまとめての発注を可能にするが、これによって競争効果はなくなる。受注者同士の競争がないうえに、ひとつにまとめることで発注者への依存度が高まり、発注者の公的機関は交渉において弱い立場になる。

「さらに調査対象のPPPプロジェクトの大半(9のうち7)が建設期間中、相当な非効率と、無駄が見られ、プロジェクトの遅れ(最長で52か月)による損失総額は€7.8 billion(約1兆7億円)に上った。」

「スペインとギリシャで高速道路を完成させるために約 €1.5 billion(約1924億円) の追加の公的資金は必要になった。その 30 % (€422 million−約541億円) はEUから拠出された。 」

レポートを担当したヨーロッパ会計監査院 のオスカー・へリックス氏は
「潜在的な経済的利益を得る手段として非効率」
と結論した。


posted by AMnet at 20:54| 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北海道通信〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11 (食の「安全・安心」編)

AMネット会報LIMより転載

北海道通信 〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11
食の「安全・安心」編

白川 博

○ 【遺伝子組み換え「てん菜」(GMてん菜)】について


 平成29年3月に、日本農学アカデミーは、「遺伝子組み換え作物(GM作物)の実証栽培に関する提言」を公表しました。

その内容は、日本で頻発する自然災害などの様々な農業環境の変化に対応するため、海外の遺伝子組み換え作物の利点を生かした「実証栽培」を全国各地で行うことなどを提言するものでした。

 その中で、北海道を中心に栽培される寒冷地作物「てん菜」についても除草剤耐性のある『遺伝子組み換えてん菜(GMてん菜)』の栽培試験を行うよう、国と道庁に求める提言が含まれており、内外関係者に大きな波紋を及ぼしました。


 これまでも、遺伝子組み換え作物(GM作物)の安全性や一般作物との交雑問題は、全国的な問題として取り上げられてきました。

しかし、対象となっていた作物は、「稲・麦・大豆」などで、砂糖や甘味原料の加工用途が中心の「てん菜」には遺伝子組み換えの商業メリットがないとされてきました。そのため、上記の提言により生産者はもとより、糖業者(北海道には、系統・商系含め8工場が点在)にもGMてん菜原料の受け入れ拒否などの動きが生まれました。



○ 【農薬・グリホサート剤】の残留基準問題について

 北海道が主産地形成を担う「てん菜」は、栽培特性上、春先の種まきから晩秋の取り入れまでの生育期間が長く、草取りなどの過重労働が兼ねてより課題となっています。

 ここに、前述の遺伝子組み換え「てん菜」ならば、「ラウンドアップ」に代表されるグリホサート剤への耐性があるとの提言内容が出たことの意味を考える必要があります。

農薬・グリホサート剤とは、商品名「ラウンドアップ」・「タッチダウン」などに代表される除草剤で、欧米ではすでに環境保全や発がん性の影響などから使用禁止されている農薬です。

平成29年3月下旬に、厚労省の「薬事・食品衛生審議会」において、農薬・グリホサート剤などの残留基準値が大幅改正されました。これは、食品安全委員会が査定する「食品健康影響評価」の結果を踏まえ、国際基準(コーデックス規格)に合わせたものとされます。

同剤の残留基準値が緩和された原料作物は、小麦などの穀類、小豆などの豆類、そして、問題となる「てん菜」でした。

 一方、同提言に対しては、農業団体はもとより、糖業者など関係団体も強く反発しています。食の「安全・安心」が担保できないことも大きな要因ですが、てん菜の過重労働は、草取りなどの「管理作業」だけが課題なのではなく、生育ステージ総体の問題であるからです。


○ 当面する対策運動と消費者理解の醸成などについて

 このような課題に対し、北海道庁では平成17年3月に、通称『北海道GM基本条例』を公布しました。同条例により、北海道では遺伝子組み換え作物を栽培する場合には知事の「認可」が必要となっています。

 この法的根拠に基づき、JAグループ北海道は、今年3月に、改めて『食の安全・安心宣言』を行い、農畜産物の安定供給を目的に、遺伝子組み換え作物の「栽培・集荷・販売」を行わないことを徹底し、交雑汚染のリスクに対しても、万全の対応を行う予定ということです。

 他方、消費者庁の有識者会議も1月31日に会合を開き、食品表示における「GM混入率5%以下」より、混入率がほぼ「ゼロ」となる検出限界値まで引き下げる方針を発表しました。

これまでも、5%までは遺伝子組み換えが事実上、容認されていたことから、消費者が誤解を招くことなどを求めていたことに応えたもので、今年度中に新表示基準を盛り込んだ「報告書案」が政府に提出される見通しです。

『北海道発信』においても、遺伝子組み換え「てん菜」栽培を北海道の一部の生産者が望んでいる実態を地域住民に話題提供しながら、遺伝子組み換え作物がもたらす、様々な脅威やリスクなどを共有し、食の「安全・安心」をしっかりとお伝えしていきたいと思います。■


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2018年05月20日

北海道通信〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11 (食の「安全・安心」編)

AMネット会報LIMより転載

北海道通信 〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11
食の「安全・安心」編

白川 博

○ 【遺伝子組み換え「てん菜」(GMてん菜)】について


 平成29年3月に、日本農学アカデミーは、「遺伝子組み換え作物(GM作物)の実証栽培に関する提言」を公表しました。

その内容は、日本で頻発する自然災害などの様々な農業環境の変化に対応するため、海外の遺伝子組み換え作物の利点を生かした「実証栽培」を全国各地で行うことなどを提言するものでした。

 その中で、北海道を中心に栽培される寒冷地作物「てん菜」についても除草剤耐性のある『遺伝子組み換えてん菜(GMてん菜)』の栽培試験を行うよう、国と道庁に求める提言が含まれており、内外関係者に大きな波紋を及ぼしました。


 これまでも、遺伝子組み換え作物(GM作物)の安全性や一般作物との交雑問題は、全国的な問題として取り上げられてきました。

しかし、対象となっていた作物は、「稲・麦・大豆」などで、砂糖や甘味原料の加工用途が中心の「てん菜」には遺伝子組み換えの商業メリットがないとされてきました。そのため、上記の提言により生産者はもとより、糖業者(北海道には、系統・商系含め8工場が点在)にもGMてん菜原料の受け入れ拒否などの動きが生まれました。



○ 【農薬・グリホサート剤】の残留基準問題について

 北海道が主産地形成を担う「てん菜」は、栽培特性上、春先の種まきから晩秋の取り入れまでの生育期間が長く、草取りなどの過重労働が兼ねてより課題となっています。

 ここに、前述の遺伝子組み換え「てん菜」ならば、「ラウンドアップ」に代表されるグリホサート剤への耐性があるとの提言内容が出たことの意味を考える必要があります。

農薬・グリホサート剤とは、商品名「ラウンドアップ」・「タッチダウン」などに代表される除草剤で、欧米ではすでに環境保全や発がん性の影響などから使用禁止されている農薬です。

平成29年3月下旬に、厚労省の「薬事・食品衛生審議会」において、農薬・グリホサート剤などの残留基準値が大幅改正されました。これは、食品安全委員会が査定する「食品健康影響評価」の結果を踏まえ、国際基準(コーデックス規格)に合わせたものとされます。

同剤の残留基準値が緩和された原料作物は、小麦などの穀類、小豆などの豆類、そして、問題となる「てん菜」でした。

 一方、同提言に対しては、農業団体はもとより、糖業者など関係団体も強く反発しています。食の「安全・安心」が担保できないことも大きな要因ですが、てん菜の過重労働は、草取りなどの「管理作業」だけが課題なのではなく、生育ステージ総体の問題であるからです。


○ 当面する対策運動と消費者理解の醸成などについて

 このような課題に対し、北海道庁では平成17年3月に、通称『北海道GM基本条例』を公布しました。同条例により、北海道では遺伝子組み換え作物を栽培する場合には知事の「認可」が必要となっています。

 この法的根拠に基づき、JAグループ北海道は、今年3月に、改めて『食の安全・安心宣言』を行い、農畜産物の安定供給を目的に、遺伝子組み換え作物の「栽培・集荷・販売」を行わないことを徹底し、交雑汚染のリスクに対しても、万全の対応を行う予定ということです。

 他方、消費者庁の有識者会議も1月31日に会合を開き、食品表示における「GM混入率5%以下」より、混入率がほぼ「ゼロ」となる検出限界値まで引き下げる方針を発表しました。

これまでも、5%までは遺伝子組み換えが事実上、容認されていたことから、消費者が誤解を招くことなどを求めていたことに応えたもので、今年度中に新表示基準を盛り込んだ「報告書案」が政府に提出される見通しです。

『北海道発信』においても、遺伝子組み換え「てん菜」栽培を北海道の一部の生産者が望んでいる実態を地域住民に話題提供しながら、遺伝子組み換え作物がもたらす、様々な脅威やリスクなどを共有し、食の「安全・安心」をしっかりとお伝えしていきたいと思います。■


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2018年03月21日

いま大阪で起きていること〜維新の会による新自由主義政策で顕在化してきた矛盾

AMネット会報LIM86号より転載(2018年2月発行)

いま大阪で起きていること

2008年、橋下徹氏が大阪府知事になりおおさか維新の会(以下維新の会)が大阪の政治の中枢を握り10年が過ぎました。現在の維新の会の大阪府・市議会の議席は過半数以下ですが、公明党と協力し多くの“改革”を実現しており、新自由主義的な政策による矛盾が、大阪府下で少しずつ顕在化しています。
本稿では、その矛盾例をいくつか紹介します。


<保育園・幼稚園を民営化−公立保育所を休廃止し補助金を出すという手法>

大阪市は、平成16〜26年度の11年間で、17か所の公立保育所を休廃止し、民間委託を48か所で行い、保育士600人等の削減「効果」があったと発表しています。

その一方、手狭な区役所や市役所庁舎内に、工事費の3/4(1650万)を上限に補助金を拠出し、小規模保育事業所等を設置し公設置民営を増やす、というちぐはぐな政策を展開しています(1カ所当たりの定員はわずか15~20人程度)。


<「統廃合した数年後に教室不足で増改築」の無駄>

「学校配置の適正化の推進」という名目で、小学校の統廃合が進んでいます。規制緩和でタワーマンション等の建設が増えており、市内中心部への人口流入も進んでいます。

「統廃合した数年後に教室不足で増改築」「児童数が減ったと統合し、売却した小学校跡地にタワーマンションが建ち、児童急増。教室が不足する」といった計画性のなさが指摘されています。「児童急増による増改築工事のため6年のうち2年間、運動場を使えない児童がでる見込み」や「休憩時間の運動場利用が3交代制」といった事例もあり、児童への影響が懸念されます。


<公立高校の再編、廃校を促進させる授業料無償化制度>

「私⽴⾼等学校等の授業料無償化制度」を行っているため、私学の人気が上がっています。
一方、公立高校に対しては「3年連続で定員割れし、改善の見込みがなければ再編対象」と統合を進め、現在大阪府・市の公立高校のうち、すでに8校減ることが決まっています。高校入試制度も頻繁に変わり、受験現場は混乱を極めています。


<地域経済支援策の削減>
大阪府と大阪市にある信用保証協会・工業研究所など、中小企業の現場支援をしてきた組織が二重行政でムダと、統合・縮小されました。
府レベルの商業関連予算は、この10年間で1/3に減少したと指摘される中で、大阪府・大阪市の大部分を占める中小零細企業は、全国や他自治体と比較しても著しく衰退しています。


こうした様々な問題が明らかになっているにもかかわらず、維新の会は2016年参議院選挙では、定員4人の大阪選挙区で2人を当選させました。風頼みの選挙戦ではなく、組織力を駆使して戦う政党に成長しているという指摘もあります。また大阪府内の市長・補選でも、多くの維新候補が当選しました。


<「大阪都構想」は、住民サービスを削って行う大規模開発>

2017年4月大阪府と大阪市の共同設置で「副首都推進局」が発足。維新の会、公明党の賛成により都構想を議論する「法定協議会」の設置も同年6月に決定し、同年9月に大阪都構想の素案が出されました。このままいけば、2018年秋に再び住民投票が実施される見込みです。以下、議会での議論や素案から見えてきた概要・懸念をまとめます。

松井知事・吉村市長は「バージョンアップした案」というものの、大阪市をなくすというだけで本質的に同じです。「今ある24区を、なぜ合区するのか」というそもそもの問いに対する理由も説明されていません。

また「なぜ大都市制度改革が必要なのか」という質問には、「現状のままでは限界がある」だけ。「副首都大阪を作るうえでそれにふさわしい大都市制度の改革が必要で、それが大阪都構想の特別区」というものの、定義もない「副首都」が何を指すのかさえ分からない状態です。


・大阪都構想とは何か?

「大阪都」を作るかどうかを問うのではなく「政令指定都市の大阪市をなくし、特別区という弱小基礎自治体に4分割する」というだけのプランです。しかも、住民投票は「特別区」「8つに合区し総合区」の2択で、世論調査で一番多い「24の行政区の今のまま」の選択肢がありません。

大阪府が広域的な施策、産業施策・大型開発を担い、大阪市は特別区となって福祉や教育、子育てといった基礎自治体としての住民サービスを担うことで二重行政がなくなり、大阪は副首都として発展する、といった論旨です。

財源も権限もある政令指定都市から、中核市や市町村より格下の特別区になって、どのような発展を検討しているのか。また、大阪府が担う広域的な産業施策・大規模開発は、IRカジノ及び、IRカジノ予定地へのアクセス確保の線路延伸など、3000億円を超える大規模開発が主流です。
住民サービスを削った財源をカジノに使うことが、都構想の真の狙いと言われる所以です。


・赤字確定の大阪都構想

3年前の住民投票では32億円のコストがかかりました。
大阪市がなくなれば復活させる法律はありませんが、住民投票は制限されず、何度でも実施可能です。

もし特別区になった場合、新たな庁舎の準備やシステム開発といった、イニシャルコストだけで311〜561億円、ランニングコストは41〜48億円、「いまの24区のまま」より行政コストが増える試算が出ています。

大阪の24区は、ビジネス街がならぶ地域がある一方、生活保護世帯が多い地域など、区によって大きな格差があります。大阪市を特別区に分割すると特別区間でどうしても貧富の格差がでるため、大阪市域の税収がいったん大阪府に入り、大阪府から特別区に財政調整交付金として配分することになっています。

しかし、大阪府が確保した税収を、大阪市域にどのぐらい配分するのかは制度設計のブラックボックスになっています。初めのうちは特別区が困らない程度の金額を配分したとしても、減額していくことも可能です。ましてや大阪府は「起債許可団体」。総務省の許可がなければ起債すらできない財政状況であり、なるべく特別区への配分は少なくしようとすることが容易に予想されます。

特別区の収支は試算ですら8年後にようやく財政収支が黒字。つまり試算通りとしても、それまで毎年赤字が確定している状況です。

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(大阪市自民党市議団 北野妙子市議の質疑資料より)

このようにあちこちの身近なところに矛盾が出てきていますが、市民がどこまで、維新の政策だと理解しているかは疑問です。

行政は「大阪市の方針」と説明し、それを聞いた市民は「大阪市が悪い」「公務員が悪い」と単純な理解しているように感じています。実際「維新や吉村市長の政策でこうなっている」と説明すると驚かれた経験もあります。しかし希望的な統計結果も存在します。昨年の世論調査では、都構想に反対が47%、賛成は37%と現在進行する大阪の政治への反対意見が増えている状況もあります。

実施に1回当たり30億円かかる住民投票を、勝つまで何度でもやるのか。いかに分かりやすく政治を変える必要を伝えるかが課題となっています。

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2018年03月19日

ジケイジ・カフェ「医療ってこれからどうなるの!?編

ジケイジ・カフェ 『知ろう話そう 生活を変える一歩シリーズ』〜開催報告

身近なテーマを題材とした連続勉強会を、とAMネットが事務所を置かせていただいている自敬寺さんで「ジケイジ・カフェ」シリーズを企画。2017年11月12日(日)、2018年1月13日(土)の学習内容を、報告します。


医療ってこれからどうなるの!?編

 3回目は、兵庫保険医協会事務局の平田雄大さんに伺ったお話から要点をまとめました。

生活になくてはならない医療。
しかし、国会のたびに社会保障制度が改悪されています。年々上がる社会保障給付費は今や100兆円を超える一方、社会保険料収入は20年前から55兆円前後の横ばい状態が続いており、その差額は主に国や自治体の税負担で賄われています。

そんな状況の中、利害関係者が持つ様々な思惑を背景として、医療政策に影響が及んでいます。
その思惑をいくつか紹介すると、財務省は医療費を下げたい。
財界・経産省は、医療分野の規制緩和でビジネスチャンスを作りたい。
製薬会社は薬価を上げたい。
米国は、アメリカ企業を儲けさせたい。そのために「混合診療を解禁し、営利事業として参入したい」「日本の医薬審議会に米国の製薬会社を入れ、償還価格政策(薬の価格をいくらにするか)に物言いたい」。

さらに医療関連分野には、医療保険など民間企業のビジネスチャンスが多くあります。医療制度はこういった各界のさまざまな思惑の渦中にいるといえます。

 思うように改革できない政府は、結局国民に負担を課すことしかできないのかもしれません。今議論されている医療制度「改革」は、次のようなものになっています。

@75歳以上の窓口負担を現状の1割から2割負担へ。さらに現役並みの所得の人は3割負担に。

A現状の3割負担から、さらに定額負担上乗せする(500円予定)。

B現在、紹介状なし500床以上の大学病院等の窓口負担は、初診5000円以上、再診2500円以上。これを500床以下の病院に拡大させる。つまり「中級の規模の病院もちょっとやそっとのことで行かないで」という方向性。

C市販で買える薬を保険適用外に。病院で診療し薬を処方してもらえば、保険が利く上に病状に合った薬をもらえます。今後は処方される薬を値上げすることで、医者に診てもらわずにドラッグストアで購入させる方針。薬によっては28倍になるものも!

Dジェネリック薬品にしか保険が利かなくなり、先発医薬品を希望すると、差額は自己負担。

E入院時の食費と居住費の引き上げ。食費1380円、居住費370円/日になり、マイナンバーで、資産のある人はさらに引き上げ?

F国民健康保険の都道府県化。現在は市町村単位で運営され、税金投入し住民サービスの拡充を図る自治体が多い。都道府県化することで財政の格差が平準化される一方、市町村ごとの税金投入(法定外一般会計繰り入れ)がなくなれば、1人当たり年間3万円以上負担増になる都道府県もでてくる。

G全国で20万床ベッドを減らす。

H医師の数を増やさない。(今も医師不足は深刻で、過労死・自殺が絶えないのに!)


信じがたいことですが、ようするに「医療の自己負担を増やし、受診を抑制させる」「空きベッドを無くし、入院を減らす」「医者を減らし、手術もすぐできない」ようにして、医療費の抑制を狙っているといわれても仕方がない「改革」プランです。
病状が軽いうちに直しておけば安くすむものを、受診抑制の結果、病状も悪化しさらにお金がかかるのではないでしょうか。

国にお金はないから仕方がないのでしょうか?OECD諸国で見ても、高齢化率に比べて日本の社会支出は低く、社会保障費はもっと多くていいと考えます。井手英策慶応教授によれば「社会保障費と借金は、統計的に無関係」であり、「借金は歳入減が原因」です。

「社会保障の充実」「正規雇用の拡大」によって、「将来不安の解消」「国民の収入を増加・安定」させれば、「消費が活性化」→「国内市場の拡大・経済成長」し、「企業収益の安定的な増加」…その結果、「税収、保険料も増加」するという、『社会保障の充実で好循環』を図れるのではないでしょうか。
 
以上は私がまとめた平田さんお話の要点です。
私も病院で医療費が改正されました、といったポスターを見かけることがありましたが、このようにいろいろ改正されていることがよくわかり、今後も注視が必要だと改めて思いました。難しい内容を分かりやすく教えてくださいました平田さん、ご参加くださった皆さん、場所をいつも快く提供いただける自敬寺さん、ありがとうございました!

(報告者:日野るり子 AMネット)
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