<ひな形は以下リンク先からダウンロード>
http://goo.gl/Ka52e0
◆パブリック・コメントとは
公共政策立案において、幅広く意見を聴取するための一つの手段です。出された意見に対して、意見聴取者(ODA大綱の場合は外務省)は採択の諾否について判断し、採択されなかった場合についてはその理由を付けて公開します。公共政策を真に公共(パブリック)なものとするためにも重要な手続きです。
◆パブリック・コメントの出し方
今回のODA大綱見直しに関するパブリック・コメントの出し方には3通りあります。
(1)電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームを利用する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=350000107&Mode=0
上記サイトの「意見提出フォームへ」をクリックしてコメントを記入します。2000字を上限としていますので、2000字を超える場合は分割して何回かに分けて提出できます。
(2)外務省に直接電子メールを送る。
件名を「開発協力大綱パブリックコメント」と明記の上、oda.charter@mofa.go.jpまで送ります。
(3)外務省にファクスを送る。
Fax番号:03−5157−1861、外務省国際協力局政策課開発協力大綱担当宛にファクスを送ります。
◆パブリック・コメントの書き方
*何に対してコメントするかを明記するようにしましょう。特に開発協力大綱案のどの部分へのコメントかを明記することをお勧めします。
*全く同じ内容を送ることを避け、自分自身の言葉で記しましょう。
*非難するような表現は避け、提案基調で記しましょう。
*短い意見でも文にして送るようにしましょう。
<参 考>
外務省「政府開発援助(ODA)大綱の見直しについて」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/kaikaku/taikou_minaoshi/
外務省「開発援助大綱案についての意見募集」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/kaikaku/taikou_minaoshi/taikouan_iken.html
※大綱案は上記リンク先からご覧いただけます。
◆パブリック・コメントの例
*ODA大綱改定についての手続きについて@
今回の改定に当たり改定案が示される前に各地で意見交換会などが開催されてきたことは歓迎します。その後、すぐに改定案が示され、公聴会やパブリック・コメント手続きに移っていますが、ここでもう一段階、改定案策定のための意見聴取の場が設けられてから公聴会やパブリック・コメントへと進んで行った方が望ましかったと考えます。今次改定に当たり、日本国内でのODA理解を促進する、といった目的があるなら、拙速に閣議決定を目指すのではなく、今一度、改定スケジュールを見直すことを提案します。
*ODA大綱改定についての手続きについてA
今回のパブリック・コメントについては日本語での参加に限られています。ODAの原資は日本社会から出ているので、日本語のコメントを重視されることは理解できますが、一方で、ODAにより影響を受ける受取国からの意見聴取も重要であると考えます。したがって、受取国からの意見表明が可能となる手段(主要受取国での公聴会開催、多言語での意見受付など)を講じられるよう提案します。
*ODA大綱改定に当たり重要な視点について
1992年に制定されたODA大綱にも、2003年に制定されたODA大綱にも、今次の開発協力大綱案にも、「誰のためのODA?」という視点が欠落しています。ODAはあくまでも受取国の住民のために供与されるものであり、受取国住民にとって効果が最大となるべく、受取国における情報公開と住民参加が担保されることを明記することを提案します。
*日本の「国益」を強調されることへの懸念@
開発協力大綱案では開発協力を巡る環境についての現状認識を認めた前文が掲げられています。そこには世界が直面する諸課題が列挙されているのと並んで、日本の「持続的な繁栄」や「国益の確保」が当然のように記されています。開発協力実施により、受取国住民や受取国の地域社会に裨益した結果、日本社会の利益につながることはあり得ますが、日本社会への利益還流を前提とした開発協力を強調することについては懸念するとともに、前文の「さらに、我が国自身の経済社会状況を踏まえれば、・・・(中略)・・・我が国の国益の確保にとって不可欠となっている。」を除去することを提案します。
*日本の「国益」を強調されることへの懸念A
「T 理念、(1)開発協力の目的」において、日本社会への利益を強調した「こうした協力を通じて,我が国の平和と安全の維持,更なる繁栄の実現,安定性及び透明性が高く見通しがつきやすい国際環境の実現,普遍的価値に基づく国際秩序の維持・擁護といった国益の確保に貢献する。」を除去することを提案します。
*日本の経験、知見に対する賛美への懸念@
日本の経験、知見に対する賛美表現が数多く散見されます。高度経済成長期の経験にも功罪あったわけで、一方的に賛美する表現で占められることには違和感を覚えます。また、近年の急激な少子高齢化に対しては、日本社会においても明確に将来像を描けているわけではなく、手探り状態にあることを謙虚に認める必要があります。こういった観点から、「T 理念、(1)開発協力の目的」にある「我が国は高度経済成長期の成功体験だけでなく,人口減少や高齢化への対応,震災復興等,現在直面する課題からも,数多くの教訓を得ている。こうした歩みの中で我が国が得た独自の経験と知見は,世界が現在直面する開発課題の解決に役立つものであり,その活用に対する国際社会の期待も高い。」は除去することを提案します。
*日本の経験、知見に対する賛美への懸念A
「U 理念、(2)基本方針、ウ 自助努力支援と日本の経験と知見を踏まえた対話・協働による自立的発展に向けた協力」はタイトルにもあるように、自助努力支援や対話・協働による自立的発展に向けた協力といった姿勢を基本方針化されようとことについては歓迎します。その意味合いをさらに強めるためにも、「日本の経験と知見を踏まえた」を除去することを提案します。同じく、本文中にも記述されている同表現の除去も提案します。
*日本の経験、知見に対する賛美への懸念B
「V 実施、(1)実施上の原則、ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則、(イ)日本の持つ強みを活かした協力」で「日本の経験と知見をより積極的に活用していく。」と記された部分を、「日本の経験と知見による功罪を踏まえながら活用していく。」と修文することを提案します。
*成長重視への懸念@
「U 重点政策、(1)重点課題、ア 『質の高い成長』とそれを通じた貧困撲滅」の記述にあるように、単なる経済成長を貧困撲滅の手段とは捉えずに「質の高い成長」という表現で、経済成長について一定の留保を見ていることは歓迎します。それでもそういった文章中に、例えば「そしてこれらによる民間部門の成長等を通じた経済成長の実現が不可欠である。」と表現されているなど、まだまだ経済成長を最重視する傾向が強い。ここでは、「そしてこれらによる民間部門の成長等を通じた経済成長の実現が」を除去することを提案します。
*成長重視への懸念A
「U 重点政策、(1)重点課題、イ 普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現」において、「一人ひとりの権利が保障され」ることを重視されていることを歓迎します。そのことをより一層明確にするために、「『質の高い成長』による安定的発展を実現するためには,一人ひとりの権利が保障され,人々が安心して経済社会活動に従事し,社会が公正かつ安定的に運営されることが不可欠である。」から「『質の高い成長』による」を除去されることを提案します。
*外交の手段としてのODAへの懸念
「V 実施、(1)実施上の原則、ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則、(ア)戦略性の強化」には「開発協力が刻々と変化する国際情勢を踏まえた戦略的かつ機動的対応が要求される外交政策の最も重要な手段の一つであることを十分認識する必要がある。この観点から,開発途上国を始めとする国際社会の状況及び支援対象となる国や課題の我が国にとっての戦略的重要性を十分踏まえ,必要な重点化を図りつつ,我が国の外交政策に基づいた戦略的かつ効果的な開発協力方針の策定・目標設定を行う。」と、「外交政策の最も重要な手段」であるとうたわれています。ODAをはじめとする開発協力には多様な側面がある中で、外交政策の側面だけが突出することについては、日本のODAの歴史の中では慎まれてきました。国際協調の側面、人道的側面、地球規模の課題への先取的な側面など、ODAや開発協力の重要な側面を後景へと押しやることについては、むしろ「戦略的」に後退してしまうことにつながりかねないと懸念します。
*人間の安全保障の重視@
「T 理念、(2)基本方針、イ 人間の安全保障の推進」において、開発協力における人間の安全保障重視をうたわれたことを歓迎します。その上で、より国際社会における到達水準に近づけるために「子ども,女性,障害者,高齢者,難民・国内避難民,少数民族等に焦点を当て,その保護と能力強化を通じて」を「子ども,女性,障害者,高齢者,セクシャル・マイノリティ、難民・国内避難民,少数民族、先住民族等に焦点を当て,その権利確立を通じて」とする修文を提案します。
*人間の安全保障の重視A
「V 実施、(1)実施上の原則、イ 開発協力の適正性確保のための原則、(オ)公正性の確保・社会的弱者への配慮」においても、「T 理念、(2)基本方針、イ 人間の安全保障の推進」でうたわれたのと同水準での表現を提案します。そのために「格差是正,子ども,障害者,高齢者,少数民族等の社会的弱者及び女性への配慮等の観点から」を「格差是正,子ども,障害者,高齢者,セクシャル・マイノリティ、難民・国内避難民、少数民族、先住民族等の社会的弱者及び女性への配慮等の観点から」との修文を提案します。
*軍事転用への懸念@
「U 重点政策、(1)重点課題、イ 普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現」において「海洋・宇宙空間・サイバー空間といった国際公共財に関わる開発途上国の能力強化等,必要な支援を行う。」と表記されていることについて、「海洋・宇宙空間」における「能力強化」と軍事との抜きがたい関係性を考えると、「海洋・宇宙空間」は除去することを提案します。
*軍事転用への懸念A
「V 実施、(1)実施上の原則、イ 開発協力の適正性確保のための原則、(イ)軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避」における「民生目的,災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する。」は、「実質的意義に着目し」ようと、一度、軍に供与された資金や物資については、その後の使用状況などについての追跡が不可能となる可能性が高く、軍事転用が大いに懸念されるために、この部分を除去することを提案します。
*軍事転用への懸念B
「V 実施、(2)実施体制、イ 連携の強化、(イ)緊急人道支援,国際平和協力における連携」の「災害救援等の緊急人道支援の効果的実施のため,国際機関やNGOを含め,この分野の知見を有する様々な主体との連携を強化する。」でNGOとの連携強化がうたわれていることは歓迎します。その上で、この部分をさらに明確にするために「災害救援等の緊急人道支援の効果的実施のため、国際機関やNGOなどとの連携を強化する。」との修文を提案します。
*軍事転用への懸念C
「V 実施、(2)実施体制、イ 連携の強化、(イ)緊急人道支援,国際平和協力における連携」の「また,国際平和協力においてもその効果を最大化するため,国際連合平和維持活動(PKO)等の国際平和協力活動との連携推進に引き続き取り組む。」について、開発協力の性格をより明確にするために、「また,国際平和協力においてもその効果を最大化するため,国際連合平和維持活動(PKO)等の国際平和協力活動との非軍事面での連携推進に引き続き取り組む。」と修文することを提案します。
*問題案件との関係性の整理
「V 実施、(2)実施体制、イ 連携の強化、(エ)他ドナー・新興国等との連携」において、「新興国を始めとする諸国と連携した三角協力は,これらを有効に活用した協力として,国際社会からも高い評価を得ているところ,引き続きこの取組を継続していく。」とあるが、三角協力については必ずしも高い評価を得ていないものも存在することに鑑み、全文を除去することを提案します。
*NGOとの協働
「V 実施、(2)実施体制、イ 連携の強化、(オ)市民社会との連携」においてNGO/CSOとの連携強化がうたわれたことを歓迎します。そのことをより明確に、効果的に表現するために「開発協力における参加・協働の強化を含め,NGO/CSOとの連携を戦略的に強化する。そのためにも,外務省・JICAにおいて,社会開発分野の人材育成,体制整備に取り組む。」を「実施、政策立案了局面での開発協力における参加・協働の強化を含め、NGO/CSOとの連携を強化する。そのためにも、外務省・JICAとNGO/CSOが協働して、社会開発分野の人材育成、体制整備に取り組む。」との修文を提案します。
*量に関する記述への懸念
「V 実施、(2)実施体制、ウ 実施基盤の強化」に「対国民総所得(GNI)比でODAの量を0.7%とする国際的目標を念頭に置く」との文言が入っていることは、ODAの量を増やそうという積極的側面を歓迎します。一方で、現行水準との大きなかい離により、改定された大綱の下での実現が見透せないことへの懸念もあり、具体的な数値については検討する必要があるのではと思います。