2016年11月26日

奈須りえ氏×岸本聡子氏×神田浩史氏パネルディスカッション「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

東京都大田区議の奈須りえさんとオランダのNGO「トランスナショナル研究所(TNI)」の岸本聡子さん、さらにAMネット理事の神田浩史をコーディネーターに加えたパネルディスカッションの様子をお伝えします。

文責 AMネット 事務局

■講演1.「民営化でどうなる?公共の可能性は?」≪奈須りえさん≫ 
http://am-net.seesaa.net/article/444348256.html

■講演2.「より良い公営へ〜最新海外レポート」≪岸本聡子さん≫
http://am-net.seesaa.net/article/444348316.html


■パネルディスカッション(以下敬称略)

神田−−後半のパネルディスカッションは、会場からの質問を元に進めて行きたいと思います。

水道事業の民営化については、現政権下で成長戦略にも盛り込まれており、推進していこうという動きがあります。それと、現在進んでいるTPPやTiSA(新サービス貿易協定)の流れをつなげてみたときに、どのようなリスクが考えられるでしょうか。

奈須−−国内で行われている規制緩和と違い、TPPやTiSAが実施されると、ラチェット条項によって、いったん規制緩和されてしまった民営化はあと戻りできない、再公営化できないという状況が生まれてしまいます。さらにISDS条項によって、企業が見込んでいた収益を得ることができなかった場合も、企業が国家を相手に訴えることや損害賠償を請求することもできるようになってしまいます。

いくら大阪市が、水道事業を行う企業に様々な縛りを設けても、TPPが実施されれば、その縛り自体が機能しなくなる°ーれがあるのです。

岸本−−アルゼンチンで18の水道民営化事業が行われ、そのうち9つの事業が再国有化されました。そのうち6つが国際調停に持ち込まれて、全てアルゼンチン側が負けています。

さらに最近は、「国際紛争調停ビジネス」が広がっています。企業が海外投資を行い、うまくいかなかった場合に、弁護士事務所が企業と組んで訴訟に持ち込み、莫大な損害賠償を勝ち取ろうということを行っています。

そうしたことを背景に、ISDSにからむ国際紛争調停の数が、飛躍的に伸びています。日本がこうした訴訟の対象になるということも考えなければなりません。


神田−−大阪市がこのような時期に、簡単に民営化を進めようとしているのは、とても危険だと言えます。
一方で、国や自治体が自ら民営化を進めるのではなく、市民も知らないうちにIMFなどによって民営化が進められてしまうケースもあります。

岸本−−IMFの介入による民営化政策は、1つのパッケージとなっています。しかも、そういったことは昔の話だけではなく、現在も続いています。

例えばギリシャやスペイン、イタリアなどヨーロッパの債務国がヨーロッパ中央銀行、IMF、債権国などによって、半ば強制的に公的資産の売却を進められてしまうといった状況が生じています。

神田−−財政難に陥った政府が、財政支援の見返りに公的資産の売却、民営化を迫られるというケースは至るところで見受けられます。
もう1つ、現在の状況で考えておかないといけない論点に「人口減少」があります。人口減少を前提とした水道事業の見直しでも、民営化やあるいは広域化といったことがあり、大阪では都構想や府市の水道事業統合などの話も出ました。

奈須−−民営化によるコスト削減が達成できたとしてもその中身は、実際には非正規雇用などで人件費を削減しただけで、質の向上も望めないといったものかもしれません。

広域化についても、いったい適正規模がどれくらいなのかという基準も定かではありません。ニースの場合のように、給水人口が60万人程度であれば適正かもしれませんが、270万人の大阪市が、これ以上広域化して、本当に効率的になるのか、あるいは意思決定の問題はどうなのか、そういったことが、まだまだ不明確であり、多くの問題を抱えています。

これまで広域化で提示されてきた仕組みは、広域連合や一部事務組合など、私たちが直接選挙で選んだ人ではない人たちが、意思決定する仕組みです。民営化の問題で問われているのは、民主主義そのものなのです。

神田−−日本で民主的統治を考える上で、どのような仕組みが求められるのか、あるいはそれに適した事例はあるのだろうかと考えたときに、興味深い事例があります。それは岩手県の矢巾町での取り組みです。ここでは、水道事業の見直しのために、徹底した情報公開と住民主体、住民参加のワークショップを積み重ねています。
また、全国的に見れば、流域の中での水道事業の連携をどう高めていくのか、といったことも興味深い取り組みだと言えます。

大阪のような大きな都市で、水道の質を高めるためにはどうすれば良いのか。「公営」か「民営」かといった二者択一ではなく、現行の公営がベストで民営化はダメということでもなく、もっと幅広い議論が必要です。最後にお二人に意見をお聞きして締めくくりたいと思います。

奈須−−例えば「広域で効率的な経営」と「住民関与がきちんと担保されるガバナンスのある統治機構」、あるいは、少しぐらい非効率的でも住民の監視の目がちゃんと届くのが良いのか、少しくらい監視の目が行き届かなくても経済性を求めるのか、本来そういったところまできちんと考えることが、水道民営化を考える上で必要だと思います。

公務員の給料が高いとか、非効率だとかいう一面的な情報ばかりが表面化していますが、私たちはもっと大切な問題が隠されていることに気づかなければなりません。いかに必要な情報を市民に伝えていくかが重要です。今日の集会もその貴重な一歩だと思います。

岸本−−民主的な統治というものを考えたときに、選挙に行かない人が半分近くもいるのが現実で、果たして水道事業にどれだけの人が関与したいと思うのか、必要な情報が公開されたとしても、どれだけの人がそれを欲するのかという問題があります。こうしたことを考えたときに、水道の問題としてとらえるだけでは、なかなか解決策を見出すのは難しく限界があると思います。

こうした現実を踏まえた上で、民主的統治をどうやって実現していけばよいのか、今そういったことを考える上で、面白いことがスペインで起こっています。

街角や広場で集まった人たちの声が政治に反映されるようなことが実際に起きているのです。そうなったのは、若者の失業率が40%とか50%とか、そういう極端な状況が起きて、大規模なデモが続き、それでも自分たちの声を本当に反映してくれる政治が行われない失望の中で、自分たち自身の政党を、と実際につくられたのが「ポデモス」です。この党は、わずか数年で国政において第3党にまで躍進しています。

水道民営化の問題は、民主主義の根幹にかかわる問題でもあります。私たちは地道な活動を続けるだけでなく、気運をしっかりとつかみ取ることが大事です。ポデモスの広がりは、そういったことも表していると思います。

神田−−「民主化」、「民主的な統治」の重要性が、今日のお二人の話の中で、何度も出てきました。そして、それは皆さんと一緒に築いていくものだということ、また、そのためのヒントも数多く出して頂きました。是非、このことを活かして一緒に実現していきましょう。■

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2016年11月25日

「より良い公営へ〜最新海外レポート」≪岸本聡子さん≫「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

文責 AMネット 事務局

■講演2.「より良い公営へ〜最新海外レポート」
≪岸本聡子さん≫ 

本日は、国際的な視点も含めて議論の素材を提供できればと思っています。「民営化」「再公営化」さらに「公営」について考えるきっかけになればと思います。

国際機関でも民営化を疑問視
世界銀行は、公共事業の民営化という新自由主義に基づく政策を展開し続けてきました。しかし、その一方で、最近は民営化がうまくいっていないのではないか≠ニいう調査報告も行っています。

世界銀行は、2014年に442件の官民パートナーシップ(PPP:民間委託、指定管理者制度、PFI、民営化など)の検証を行い、そのうち「貧困対策に効果あり」としたのは9件しかなかったとしています。

また、国連経済社会局でも官民パートナーシップという枠組みが2030年の持続可能な開発目標に合致しているか≠ニいう検証を行い、「水」「道路」「エネルギー」「交通」など、効率的なサービスを供給するために導入されたにも関わらず、それに失敗している≠ニの結論を出しています。

国連機関や世界銀行は、もともと民営化推進の立場であるにもかかわらず、このようなレポートを発表していることは、大きな変化の現れであり、世界中で官民パートナーシップの失敗が無視できなくなってきていることを表しています。


再公営化は世界的趨勢
再公営化の動きは、2000年の時点では、たった2例しかなかったのですが、15年経ってその数は235にも膨らんでいます。しかも実際の再公営化は、この数字よりもさらに多いとことは確実です。

一方、再公営化したらそれで良い成果が出るのか、民主的な統治が行われるのか、と言えば必ずしもそうとばかりは言えません。実際のところ、理想的な住民参加や透明性確保がなされていると言えるのは、むしろ少数であり、運営や所有だけが移行したというケースも少なくありません。

しかし、こうした活動によって議会や市民参加が促進され、活発な議論を通して民主的運営が行われるきっかけになったことは、大いに注目すべきことだと思います。 


公公ネットワーク
フランスやスペインでは、公営企業がネットワーク作りを始めています。民営化の波を食い止めるためには、公営企業間の知恵や資源を結集して対抗していかなければならないからです。

例えばニースというフランス第5の都市で水道事業が最近再公営化され、先に再公営化したパリやグルノーブルが支援したという実例もあります。

ニースは、地理的に80%が山間地です。ニースに流れるバール川流域の49の市町村に適正にサービスを提供し続けるには、各自治体が民間企業と個別に契約している状態では、十分に対応しきれないというのが最大の理由となり、流域間の公的な連帯を作るために再公営が行われました。これは自治体間の公公パートナーシップが再公営化を支援できるということを示すものです。


「民営化」ではなく「民主化」を!
再公営化を考える上で、民主的な統治はとても重要です。公営でも民間でも透明性や効率性を高め、最低限の金額でより高いサービスを提供するための手段として、市民と自治体がいっしょに会社を作ろうという動きが進んでいます。

市民と自治体でつくったロンドンのエネルギー供給会社では、水道や電気料金を払えない貧困層の人々のために、貧困層でも支払い可能で、しかも自然エネルギーによる電力を供給するという提案が行われています。

これは市議会側からの発案ですが、市民側からも民主主義を公営企業のなかで、どう確立するのかという視点での提案も行われています。このロンドンの例は、新しいビジョン、そして本当の意味での公共を考えさせてくれるものです。

「民営化ではなく、民主化を」といった議論が大切です。これからも、そういった議論を皆さんと重ねていきたいと思います。

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2016年11月24日

「民営化でどうなる?公共の可能性は?」≪奈須りえさん≫ 「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」開催報告

文責 AMネット 事務局

現在、大阪市では水道民営化案が議会に提出され、民営化に向けた動きが進んでいます。こうした中、7月16日に大阪市の「ヴィアーレ大阪」で、シンポジウム「ちょっと待って!その『水道』の民営化〜大阪の水のこれから 公共の可能性〜」をAMネットなど市民団体の主催により開催しました。
シンポジウムでは、東京都大田区議の奈須りえさんとオランダのNGO「トランスナショナル研究所」の岸本聡子さんによる講演、さらにAMネット理事の神田浩史をコーディネーターに加えたパネルディスカッションが行われ、参加者も250人を超え、このテーマに対する注目の高さを示しました。【以下シンポジウムの概要】


■講演1.「民営化でどうなる?公共の可能性は?」
≪奈須りえさん≫ 

公共サービスで重要なことは
一般的に民営化のメリットとしては、「価格の低下」や「サービスの向上」が言われています。しかし、民営化とは「非営利の公共サービスを、営利の経済活動に置き換える」ことです。現在、大阪市が提案している民営化では、たとえ経営の効率化によりコスト削減ができたとしても、それは価格ではなく、株主配当や内部留保などに回される懸念があります。さらに利益を縮小させるようなサービス向上など望めないし、最低限の質の確保にとどまる可能性も高いと思います。

水道に限ったことではなく、公共サービスについては、「質の確保」「適切な価格」「公平・平等・適正な提供」が重要です。

事業の継続性に関しても、経営破たんや大規模災害の時にはどうするかなど、様々な問題があります。さらに、私が気になっているのは、民営化した場合に「地域独占性の弊害」をどう排除していくかということです。水道料金に対する適正かつ有効なチェックをどう働かせることができるのか。現在は、それを議会が担ったり、公務員法による様々な制約の下で行われていますが、民営化すれば、それをどのように担保していくのか…。

大阪市自体も、水道民営化に関していくつかの課題を指摘し「持続性の確保や公共性の担保を維持するためには、市や市会によるガバナンスを確保することが重要」としています。しかしそのためにどうするのか、相当の工夫が必要ですが、その工夫が見られません。


 利益は企業に、リスクは市民に?
もう1つ、民営化に関してあまり表面化していませんが「事業に伴うリスクを、誰がどのように負担するのか」という問題があります。水道事業には「急激な物価上昇」や「金利変動」、「法制度リスク」、「不可抗力による遅延」など様々なリスクを伴います。大田区でも「PFI」など、民間の活力を利用した取り組みを行っていますが、現実には事業運営に伴うリスクは、いつも自治体の側が負い、民間事業者はリスクを負わないようになっている≠ニいうのが実情です。

また、公共事業が民営化されても、それを請け負う民間事業者は、公共助成が受けられたり、税制面での優遇措置があったりすることも考えられ、かなり優遇された中で事業を行うことが予想されます。
今回、大阪市が出している提案でもリスクの多くは自治体の側が負う内容になっています。つまり、民間事業者はリスク負担は少なく、何かあった場合には「市」がそして「市民」が税金などのかたちで負担しなければならない仕組みとなっているのです。

こうした状況下で、毎日使い続ける水を経済活動に組み入れることは、企業にとっては必ずもうかる美味しい仕組みがつくられる半面、リスクは最終的に市民が負うことになってしまいます。質の向上や料金の値下げなどは、長い目で見ればどこまで実現できるのか。将来的に、議会のチェックも働かなくなる中で、どうやって「質の確保」「適切な価格」「公平・平等・適正な提供」を担保していくのか、様々な懸念が払拭されない中で、大阪市の水道民営化が進められようとしています。

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