@「水道法改正での制度」と「現行プラン」と、どう違うのか?
http://am-net.seesaa.net/article/447934673.html
A「これまでの水道統合協議は、どのような経過で進んできたのか?維新へのブーメラン」
http://am-net.seesaa.net/article/448019152.html
B「水道事業の経営形態見直しについて〜水道民営化を推進する唯一の会派、維新の質疑から」
http://am-net.seesaa.net/article/448069081.html
C「水道事業の経営形態見直しについて〜収支シミュレーションは信頼できるのか?いびつな案になっていないか〜
http://am-net.seesaa.net/article/448297791.html
今回は、公明党の西徳人委員(港区:会派代表者)質疑より、
水道法改正で進められる広域化における大阪府の役割、大阪市の水を大阪府域内に供給できるか、広域化と府域一水道の関係
についてです。
<以下、市会での議論の概要>
D「水道事業の広域連携について
〜水道法改正も絡んで、広域化を大阪市はどう考えるのか〜
※大阪府部分は青字
西委員:水道法改正の主なポイントは
・広域連携の推進
・適切な施設管理の推進
・官民連携の推進
・指定給水装置工事事業者制度の改善
など。
広域連携についての法改正で、都道府県に広域連携の推進役としての責務が追加される。
これまでも広域連携について、大阪府域で取り組んできたが、大阪府の広域連携の考え方は?
局:平成24年3月策定の「大阪府水道整備基本構想」で示されており、平成42年度を目標にしている。
大阪市以外は、大阪広域水道企業団から用水供給を受けており、広域的な水道整備を一体となり進める必要がある。
一方、大阪市は水源・取水・利用者への末端給水まで実施。
将来への広域化へのプロセスも異なるため、「大阪市」と「大阪市を除く府内市町村」の2つの区域に設定している。
大阪府の基本構想では、
・大阪広域水道企業団を核とした府域水道のさらなる広域化の推進
・将来的には、大阪市を含む府域一水道を目指す
としている。
西:大阪府の考え方は基本構想にある通り、水道法改正以前から、大阪府が大阪府域での広域化の推進役を果たす立場。
大阪市の安い水を使いたいと考えている近隣都市はあるのでは?
手続きのハードルが高いと記憶するが、どのような手続きが必要か?
局:
@大阪市からの受水を求める市町村が、大阪府に計画策定を要請
A大阪府は府内42市町村と協議し、かつ大阪府議会に諮り同意を得る
B厚労省の通達に基づく府の指導により、すべての市町村議会の同意を得る
C大阪府は「大阪府広域的水道整備計画」を改訂
D大阪市が用水供給事業認可を申請し、取得
ただし、大阪市が用水供給をすると、企業団の経営に影響する。
(注:つまり、いくら「大阪市の安い水を買いたい自治体」があったとしても、「大阪市の水を他都市に売る」ことは、企業団の経営に影響する。大阪府のモチベーションも低く、42市町村の賛同を得ることは実質的に不可能)
西:やはりハードルが高いと感じるが、大阪市を含む府域一水道は将来必要だと感じる。
大阪市はどのように実現するつもりか?
局;府内一水道の実現は、府内市町村全て・大阪市の将来目標だ。
組織統合による広域化は、資産の譲渡などが課題となりハードルが高い。
実施プラン(※廃案済)では、市が設立した運営会社が、子会社等と連携して、各市町村のニーズある業務を順次受注し、将来的に府内水道事業の運営を一元的に担う、としている。
西:「運営」の一元化でのメリットは?
「組織統合」の一元化なら、施設の統廃合や人員削減などメリットが分かりやすいが。
局:末端給水を担う水道事業者の多くは、技術や事業運営のノウハウ継承が大きな問題。
大阪市のトータルシステムの事業運営ノウハウを柔軟に活用できることと、「運営」の一元化は、市町村が資産を保有したまま、水道料金も決定できるため実現性の高さが、運営の一元化でのメリット。
西:本来、「府域一水道」は、府内同一料金や同一のサービスを目指す趣旨のはずだが、運営の一元化は遠のくのでは?市長の見解は?
吉村市長:府内市町村は、技術者、担い手不足後継が深刻。水道管の整備、水道を自分で持つのがしんどい市町村がある中、府内全体で水道事業を見ることは重要。
大阪市の水道局の技術はレベルが高いと思っており、その技術を大阪府域で活用することを考えねばならない。府域ワン水道は、市民・府民にとってベストで、最終目指すべき姿。
アプローチの仕方として、組織統合は分かりやすいが、現実的には難しい状況。
運営権制度を利用した上で運営の一元化を目指す形がベストだ。料金統合含めた組織統合に近づく。最終の姿は同じだが、アプローチの仕方の問題。
近隣都市への技術支援は、大阪市の力を他市町村にも困っているところにも、大阪市にもメリットがある上に、今も実績もあり、これからも進めていく。
西:運営の一元化は府域一水道に向けたプロセスの一つとして、積み重ねによりサービス水準の平準化をはかるのは理解できる。
大阪市は大規模事業体の役割として、府内各市町村のメリットも考えながら、アプローチする、吉村市長は旗振り役として(府域一水道を)進めてほしい。
【コメント】
広域化は、どのレベルが一番効率が良いのか、じゅうぶん分析されているわけでもありません。
都道府県レベルが前提とされていますが、大阪府も、地形・水源・施設・財政状況…
全く環境が違う中、本当に都道府県単位での広域化は、果たして適切なのか?
自己水源をもつ自治体から、吉村市長が言われる通り「自分たちで水道を維持することが困難」な自治体まで、大阪府内でもさまざまです。
そもそも
「なぜ、多くの自治体が水道を維持することが困難になったのか?」
「民間委託、職員減らしを進めすぎたからではないのか?」
原因をきちんと考える必要があります。
大阪市の水道は、そもそも民営化の必要があるのか?
「民営化がベスト」と言い切るあまり「別の課題解決策はないのか?」という議論が、あまりにもされていません。
議論の大前提として
・「大阪市水道局の技術」を市長はじめ他議員、水道局、誰もが高く評価している
・それは「水源から蛇口まで」のトータルシステムの事業運営ができる点
・府域内の水道事業者の多くが、技術喪失の危機状態
・大阪市が技術支援していく役割を担うべきだ
と、ここまでは私たちと同じ認識です。
3000人いた職員も今は約1500人まで半減。
民間委託で効率化するという名目のもと、このままいけば、1000人規模となります。
今も職員採用がほとんどない状態が続いています。
どこも現場は人減らしで手いっぱい。
そんな中でも大阪市水道局が、他都市を支援できる余裕は本当にあるのか?
今はできても、将来も続く人減らしの中、本当に継続できるのか?
職員数を減らし、民間委託を進めようとすればするほど、大阪市の技術力が危うくなるのではないのか?
そもそも、民間委託は効率が良いのか?
企業団(元大阪府)は、水源〜用水供給まで。
そこから蛇口までは、市町村単位で運営しており、企業団はノウハウを持っていません。
そして、大阪府域の市町村の多くは、吉村市長も局も認める通り、「技術や事業運営のノウハウ継承」を大きな問題として抱えています。
どれほどの最新設備を持っても、それを管理運営できる職員がいなければ、技術力を持つことは不可能だからです。
他都市への技術協力を、大阪市に求められていることは間違いありません。
しかし、これまでのやり方・市長の提案する方向性で
「今後も大阪市水道局に、その技術力を残せるのか?」
冷静に考える時がきています。
<この質疑の動画はこちらから>※14分〜
http://www.gikai-web.jp/moviefile/w_h29/20170310kousu3.html