2019年01月09日

G20に市民が関わる意義とは?豪華ゲストによる、G20大阪市民サミット・キックオフイベント「市民がつなぐ、大阪から世界へ」開催報告

AMネット会報LIM89号より


【11/17大阪開催】G20大阪市民サミット・キックオフイベント

「市民がつなぐ、大阪から世界へ」開催報告

2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同事務局 AMネット理事 堀内葵


日本で初めて開催されるG20サミットの舞台として大阪が選ばれてから約9ヶ月、関西のNGO有志メンバーが集まり「G20大阪市民サミット実行委員会」が結成されました。10月の設立総会に続き、11月に大阪・PLP会館で開催されたキックオフイベントの様子をご紹介します。


開会挨拶として、同実行委員会の共同代表である三輪敦子さん(AMネット理事、アジア・太平洋人権情報センター所長)より、今年6月にカナダで開催されたG7サミットでのジェンダー主流化の状況を紹介しつつ、大阪G20サミットに向けて、

1)フェミニストで行こう、

2)アカウンタブルであろう(ここに来られない人の声も届け、説明責任を果たそう)、

3)公正で豊かな社会に向けて大阪から発信しよう、

という3つのメッセージが出されました。


つづいて、同実行委員会の加藤良太さん(関西NGO協議会理事)から

201962829日(金・土)で行われるG20大阪サミットに合わせて、62526日(火・水)に「G20大阪市民サミット」を開催する予定であること、

それに先立つ4月には世界中の市民社会からG20に提言するための「C20サミット(Civil 20 Summit)」が東京で開催されること、

また、それらの狙いや道のりについて説明があり、サミット開催地の市民社会として世界に向けて発信し世界から学んでいく、そして、地域社会にとっての政策的レガシーを市民の手で得ていく、と結ばれました。


国際協力NGOセンター(JANIC)の職員として、C20サミット開催に取り組む「2019  G20サミット市民社会プラットフォーム」の共同事務局を務める堀内からは、

サミットの議論を実りあるものにするために、首脳に提言を行う公式の場として「エンゲージメント・グループ」が設置されていること、

企業(B20)・労組(L20)・女性(W20)・若者(Y20)など合計7つあるエンゲージメント・グループのうちC20を市民社会が担うこと、

今年のアルゼンチンG20サミットに向けて市民社会が作成した政策提言書を引き継ぎつつ、日本と世界の市民社会の声を集める工程など、世界の市民社会との連携状況

および、2019421日(日)〜23日(火)に東京で開催する「C20サミット」について紹介を行いました。


▼2019年C20サミットのワーキング・グループ一覧

1.反腐敗

6.インフラ

2.教育

7.国際財政の構造

3.環境・気候・エネルギー

8.労働・ビジネスと人権

4.ジェンダー

9.地域から世界へ

5.国際保健

10.貿易・投資


その後、同実行委員会の永井美佳さん(大阪ボランティア協会事務局長)をモデレーターとして、加藤さん・堀内・癘{育生さん(環境市民代表理事)、早瀬昇さん(大阪ボランティア協会常務理事)4名によるミニシンポジウム形式のリレートークがあり、G20サミットという場に市民がどのように関わっていけるかを話し合いました。


癘{さんは「市民が政府に対し、正式に声を上げるメカニズムが少ない。私たちはこの社会の主人公として参画する権利がある」、

早瀬さんはG20サミットに向けて市民が取り組む意義を5つに分けてお話しされました。

すなわち、1)いつもより目立てる、2)普段では届けられない声を出しやすい、3)いつもなら付き合いのない人とも一緒にできる、4)SDGsを実現するステップになる、5)国際的なネットワークを作れる、です。


堀内からは大阪・関西ならではの課題を発信する機会であり、C20サミットに向けてはインターネットを通じた意見の投稿が可能であること、

2019 G20サミット市民社会プラットフォームや大阪市民サミット実行委員会を媒介にしてぜひ発信していただきたいこと、

C20サミットの提言書作成の基本言語は英語ではあるが、プラットフォームが手助けをすることで幅広い意見を出せること、

などをご紹介しました。


休憩をはさんで、2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同事務局の稲場雅紀さん(SDGs市民社会ネットワーク業務執行理事)から、G20の基本的な説明がありました。


もともとは財務大臣会合として始まったが、2008年のリーマンショックによって首脳級会合に格上げされたこと、

資本主義の危機を先進国だけではなく新興国の力も借りて解決しようとする「支配階級」の会議であること、

それゆえに市民社会を含むあらゆるアクターがあるべき社会について提言をしていく必要があること、

C20サミットで主に議論される8つの課題は一見遠いように見えるが、すべて経済に関わっており、私たちの生活そのもの。

市民社会の視点として「経済正義(Economic Justice)」という考え方を取り入れる必要があること、

など示唆に富む講演でした。


その後、今年のアルゼンチンC20サミットで結成された8つのワーキング・グループの政策提言書を読み込み、大阪の市民社会から発信できることを考えるワークショップを行いました。C20のワーキンググループはアルゼンチンから引き継いだ8つに加え、日本から「貿易・投資」が新たに設けられる予定です。


全体発表を受けたコメントが実行委員会および発表者からなされ、

三輪さんは「SDGsに加えてG20も多くの人をつなぐ機会になっている。経済正義を、という点はまさにその通り。企業もSDGsに関心を持っているが、企業で働く人も会社を離れると一人の市民なので、ぜひそうした視点からも参加してほしい。IMFのラガルド専務理事は『多様性は議論を強くし、組織のリスク回避に役立つ』と話している。この場もまさに多様な人が集まっている」

と指摘されました。


稲場さんは

これからは、単にNGO/NPOのネットワークだ、と言っているだけでは神通力がなくなっていく。本当に強いのは具体的な課題を持つ当事者や、しっかりと証拠をもって当事者の代弁ができる人。『私自身の抱える問題』について話す人は声を聴かれやすい。今日はそうした声がたくさん上がり本当に良かった」

コメント。


同実行委員会の共同代表である新川達郎さん(同志社大学教授)は

G20各国政府に何をさせるのか、公共の利益を追求させることは市民の役割。平和・安全・秩序を守るのが一国の政府の第一の役割。効果的な抵抗の仕方を考えること(例えば、市場の規制)は市民社会の役割。私たち自身はいくつもの役割を持って生きている。公正・正義・平等を共通の価値として打ち立てていくべき」

とお話しされました。



アルゼンチンでのG20サミットが121日に閉幕し、仕事の未来、開発のためのインフラ、持続可能な食料文化という3つの主要議題に加え、2030アジェンダ(SDGs)への取り組みやジェンダーによる賃金格差を縮小するコミットメントなどを盛り込んだ首脳宣言が発表されました。


同時に、日本政府による記者会見が行われ、大阪G20サミットでは

経済成長と格差への対処の同時達成、

SDGsを中心とした開発・地球規模課題への貢献、

AIやロボットなどの「革新的技術」を活用した経済成長と社会的課題の同時解決、

質の高いインフラ、

国際保健、

気候変動問題、

海洋プラスチックごみ問題

などが議論されることが明らかになりました。


4月のC20サミットに向けて世界の市民社会と協力しつつ、6月の大阪市民サミットまでの半年あまり、日本全国の市民社会とも連携した活動を展開していきます。■



【参考】

2019 G20サミット市民社会プラットフォーム

http://www.civil-20.jp

C20サミット公式サイト(英語)

https://civil-20.org


posted by AMnet at 20:57| G20 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月02日

北海道通信「下町ロケットから考える〜最新技術とコミュニティ編〜この先の『食と農と環境』の取り組みへ」vol.14

AMネット会報LIM89号より

北海道通信「下町ロケットから考える〜最新技術とコミュニティ編
〜この先の『食と農と環境』の取り組みへ」vol.14


北海道の白川 博です。今号でも【北海道で農業をやること】のテーマに特化し、具体的な事例も交えお伝えできればと思います。まず、農村地域のコミュニティについて報告していきたいと思います。


○ 最新鋭の【農業技術】が抱えている課題

 政府や農水省では兼ねてより、『超省力型農業』の一環として、ICT及びGPSなどの高性能機器をトラクターや作業機に搭載し、作業効率化を図る「スマート農業」を進めています。しかし、その歯止めがかからない農業人口の減少を加速化させる、皮肉な状況を生んでいます。


決して、最新鋭の技術革新そのものを否定はしません。一方で、高額な農作業機器であるGPS機能に対応できる高性能トラクターや作業機の購入は、国の助成があっても農家には結果的に大きな負担となります。また、晴天の日だけを選ぶことができない生産現場では、どうしても過酷な条件で農作業機械を使う場面もあり、実際の機械の更新期間は早まることも、農家負担を助長しています。


 地震により、北海道全域がブラックアウトし、最新設備を導入している酪農家が搾乳できないなど多大な被害が出ました。最新設備を入れれば入れるほど、災害時に弱く、復旧も困難であることも念頭に置くべきです。


○ 下町ロケット「無人トラクター」で課題解決?

 最近では、TBS系ドラマ「下町ロケット」でも話題となっている「無人トラクター」ですが、北海道で購入する場合の最大のネックは前述の購入費に加え、通信衛星から『受信途絶』する可能性が上げられます。


 北海道の様に広大な農地では、人工衛星や電話網などの「通信受信エリア」がカバーされていない農地が散見されます。また、地図上でカバーされていても、実際の農地の真ん中で、『受信途絶』がおきるケースもあります。


 政府や農水省が推奨する「スマート農業」の中心軸は、人工衛星「みちびき」からの受信する『誤差2〜3cm』とも言われる極めて精度の高いGPS測量にあります。
 北海道でもGPSを搭載したトラクターや作業機を導入する動きがあることから、今後は各自治体の山間部などに「地上基地局」を設置し、人工衛星からの受信カバー率を上げる動きも出てきています。これも、設置費用が個人農家で賄える金額ではないため、JAや基礎自治体が連携して除雪車などにもGPS機能を搭載し、冬場の主要幹線道路の除雪作業に対する効率化も複合的に検討しています。


農業で食べられないから、人がいなくなる。人口減少に対応するために無人トラクターで作物は作る。が、人手は不要なので、地域に人がいなくなる。その無人トラクターにも、多額の税金投入が必要であり、補助金漬けと将来揶揄されるのでは?「農業政策」はあっても「農村政策」は無い一例です。


○ 【農村地域の「コミュニティ」】対策について

 北海道は、政令指定都市・札幌に人口集中が進む一方で、「地域の良さ」を再認識する動きも、札幌市で取り組んでいます。甚大な被害をもたらした北海道胆振東部地震の影響により開催が危ぶまれた『さっぽろオータムフェスト』は、札幌 大通公園で開催される国内最大級の食の祭典です。記念すべき10回目は会期を順延しながら、延べ約200万人の来場者に対し震源地の厚真・安平・むかわ3町を応援するブースを設置し、秋の味覚を楽しんでもらうフードイベントとなりました。


また、私の故郷・清里町では農村地域の「コミュニティ」の大切さを体感するため、毎年9月の繁忙期に収穫感謝祭を開催するとともに、栃木県佐野市との提携で旬のナシを格安販売するなど、農村地域ならではの「手作りの良さ」を町民全体で共有する取り組みを継続展開しています。


北海道から【農業をやること】の意義は、近年多発する自然災害に翻弄されながらも、農村地域の「コミュニティ」の元気を毎年、全国発信することで都府県でともに頑張っている農業生産者や消費者ともつながり合う「絆」であると感じています。そのために、食と農と環境を大切にしていくことを皆さんと何度も共感できればと思います。■

posted by AMnet at 22:17| 北海道通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする