2020年06月17日

【国際署名に団体賛同しました】政府のコロナ対応によるISDS訴訟の制限を!危機対応に集中するため、進行中のISDSを一時停止を!

団体賛同しました。
数日前のメールには76カ国からの賛同があったとのことです。
ぜひ大きな流れにしていきたいです。

ISDS制度から莫大な利益を得ている弁護士たちは、COVID-19危機に対応した行動をめぐって政府から多額の金を引き出すために、ISDS法廷を利用したいと考えている企業クライアントをすでに探している、とのこと。

ISDS訴訟への対応は、莫大な資金がかかります。

請求に対抗するための ISDS 裁定や弁護士費用の支払いに流用するより、コロナ対応に資金も人も集中すべきです。


政府のコロナ対応によるISDS訴訟の制限を!
危機対応に集中するため、進行中のISDSを一時停止を!

ISDSとCOVID-19に関する政府への公開書簡はこちらからご覧ください(英文)
http://s2bnetwork.org/sign-the-pen-letter-to-governments-on-isds-and-covid-19/#sign


<以下、Deepl翻訳です>

政府に

私たちは、COVID-19のパンデミックとそれに伴う経済危機に対処するために取られた行動から生じる投資家国家間紛争解決(ISDS)訴訟の波に世界中の国々が直面しないようにするために、あなたに率先して行動するよう強く要請するために、本日あなたに手紙を送ります。

世界的に見ても、一部の政府は、人命を救い、パンデミックを食い止め、雇用を守り、経済災害に対抗し、人々の基本的なニーズを確実に満たすための行動をとっています。そのレベルの高さは現代では前代未聞であり、その必要性は明らかになっている。

しかし、ISDS制度の範囲が広がれば、このような重要な政府の行動が、外国人投資家からの数百万ドルの賠償請求に開放される可能性があります。また、このような主張の数は前例のないものであり、壊滅的な健康と経済危機の負担の下で苦闘している政府に巨額の財政負担を課す可能性があります。


様々な形態のISDSは、多くの貿易・投資協定に書かれています。
これにより、外国人投資家は、外国人投資家だけでなく、国内法制度の外にある秘密の法廷で政府を訴え、国内法廷で得られる可能性のある金額よりもはるかに高い金額で政府を訴えることができるようになります。

ISDS制度から莫大な利益を得ている弁護士たちは、COVID-19危機に対応した行動をめぐって政府から多額の金を引き出すために、ISDS法廷を利用したいと考えている企業クライアントをすでに探している。

法律事務所、[1]貿易の専門家[2]国連機関[3]および人権の専門家[4]は、すでにISDS訴訟の波が差し迫っていると予測している。
専門の法律専門誌はこう推測している。"アルゼンチンの金融危機や「アラブの春」のような過去の危機的状況が多くの事例につながっている。

を目的としたものなど、多くの政府が行ってきた行動からケースが発生する可能性があります。
ウイルスの拡散防止と労働者の保護のための営業活動の制限と閉鎖
私立病院施設徴用、私立医療機関の公営化、メーカーへの人工呼吸器の製造要求などによる医療制度の財源確保
家賃免除
危機に陥った戦略的企業の外国人による買収を阻止する
光熱費の凍結と切断を停止することで、手洗いと衛生のためのきれいな水へのアクセスを確保します。

医薬品、検査、ワクチンを手頃な価格で入手できるようにする
債務整理

COVID関連のISDS事件の波による被害は計り知れない。

1,023件の公知のISDS案件のうち、13件が将来の逸失利益を含めて10億米ドル以上の判決または和解に至っている[6] 2018年末までに、世界各国の州が公知のISDS案件の投資家に880億米ドルの支払いを命じたり、合意したりしていた[7] 発展途上国の中には、係争中のISDS請求の未払い金が数十億ドルに上る国もある。

危機への対応に政府のリソースが限界に達している今、公的資金を、人命、仕事、生活を救うことから、請求に対抗するための ISDS 裁定や弁護士費用の支払いに流用すべきではない。

そして、COVID-19に対する戦いが続くことを考えると、今のケースの噴出は、政府が水を減らす、延期するか、または致命的な可能性がありますそのような支払いの恐怖からパンデミックに取り組むために行動を撤回する「規制の冷え」効果につながる可能性があります。
このような事態を防ぐために、私たちは、政府に対し、最初の事件が発生する前に、直ちに、緊急に以下の措置をとることを強く求めます。
COVID-19に関連する措置に関連すると国が考える請求に関して、あらゆる形態のISDSの使用を恒久的に制限する。
COVID-19 危機と戦っている間は、パンデミック対応に能力を集中させる必要があるときに、政府に対するあらゆる問題に関するすべての ISDS 事件を一時停止すること。
パンデミックの間、企業にISDSの賞を支払うために公金が使われないようにする。
ISDSを含む新たな協定の交渉、署名、批准を中止してください。
ISDSとの既存の協定を終了させ、「生存条項」が後から訴訟を起こすことを許さないようにする。
パンデミックによって露呈した脅威に鑑み、ISDSを含む既存の契約を包括的に見直し、それらが目的に適っているかどうかを確認する。
これらのアクションを実施する方法についての詳細は、この手紙の付属文書に記載されています。
公共の利益のために規制する政府の義務が安全であることを確保するために、早急に行動を起こすことを強く求めます。
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。


posted by AMnet at 18:20| 署名・賛同文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月08日

新型コロナ対策に、吉村知事の“リーダシップ”はどう発揮されたのか▼プレスリリースすらないのに、テレビで発表。役所も学校も現場大混乱〜

AMネット会報LIM95号より、会報発送前ではありますが、原稿を公開します。

新型コロナ対策に、吉村知事の“リーダシップ”はどう発揮されたのか

AMネット事務局

吉村洋文 大阪府知事の新型コロナウィルス対策が評価され、人気が上がっています。

しかし吉村知事・松井市長が掲げた重要施策の多くが、プレスリリースすらありません。

つまり「行政として何の準備もないまま、メディアで発表している」ということです。


▼吉村知事の評価をあげた「大阪方式」とは?

最初のきっかけは313日、指定医療機関に入院〜民間のホテルでの宿泊療養等、症状によって患者を分ける「大阪方式」を出したことです。

しかしその後、専門病院をどのように検討したのか。

大阪府HP(対策ページや専門家会議等資料)には、病院のリストもなく、検討した形跡すら見えません。


▼市長の独断?!コロナ専門病院

4月14日、大阪市立十三市民病院(以降、十三市民病院)をコロナ専門病院にすると、松井市長が発表しました。

大阪方式発表1か月後ようやく1つ目の専門病院であるにもかかわらず、大阪府・市HPには、報道発表資料すら見つかりません。

経緯は「市立病院機構理事長に依頼したところ可能との意見だったので、その場で方針決定した」という松井市長のTwitterで知れるのみです。

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(大阪市HPより4/14報道資料。その前後にも記載なし。役所の準備がないまま、発表したことが分かります)

▽職員や患者にとって、「寝耳に水」の発表

十三市民病院をコロナ専門病院にする―。市民病院機構の理事長に確認したと松井市長は言うものの、当該機構の部長レベルも、当該機構を統括する「大阪市健康局」も、「十三市民病院」の院長も知らされず、報道資料もありません。

結果、病院への問い合わせが殺到し、現場が対応に追われることとなりました。


十三市民病院は、地域医療の中核病院です。出産間近の妊婦含め分娩の予約ほとんどが、急遽ほかの病院に割り振られました。

地域医療の中核にもかかわらず、救急・外来が休止となり、入院患者も転院・退院となりました。

2つ目のコロナ専門病院(民間病院)6月中旬の運用予定と、いずれも今回のピークには全く間に合いません。


実は、大阪市には20183月末に閉院した住吉市民病院が残っていました。

しかし、十三市民病院をコロナ専門病院にすると発表があった数日後、解体工事が始まったのです。

このタイミングでの解体は適切なのか、本当に全く活用できないのか、検討はきちんとされたのか。

十三市民病院が適切だったのか、さらに疑問が残ります。


▼知事の独断?! 大阪府の休業要請支援金

4月10日NHK『かんさい熱視線』にTV出演した吉村知事は、「府単独での休業補償は、現状は出来ない」「広く補償する東京都のような財源がない」といった発言を、繰り返していました。

しかしわずか5日後、大阪府も休業要請支援金(中小企業100万円、個人事業主50万円支給)を受け付けると吉村知事は発表。

報道発表資料もなく、府庁も大阪市役所も、現場はマスコミ報道で初めて知ったと聞きます。

支援金は歓迎すべきものの、府議会の日程もなく、財政難の大阪府で、意思決定はどうなされたのでしょうか。

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(大阪府HP報道発表資料より抜粋。
4/22に、「休業要請支援金相談センターの設置」のプレスリリースはある↑のに、
吉村知事が発表した4/15後も、「休業要請支援金を始める」内容の報道資料がない↓ことが分かります。)

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同時に「大阪府と市町村で1/2ずつ負担」と発表しましたが、報道によると大阪市(=松井市長?)以外は知らされていなかったようです。

最終的に、422日大阪府市・町村長会が、協力の申入れをすることで事業は進みましたが、正式な知事からの協力要請は423日。

市・町村長会が協力を受け入れた翌日です。

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(吉村知事の公務日程より抜粋。4/23に知事が正式に要請したことが分かります。)


府内市町村は財源のばらつきがあります。

府内市町村の首長も、行政・議会の関与もなく、意向すら聞かず、他自治体の大きな財源を使う政策を、勝手に吉村知事が決めてもいいのでしょうか。

支給が遅れているという報道も出始めています。

この支給遅れも、知事の”リーダーシップ”による現場大混乱が一番の原因ではないのでしょうか。

【参考記事6/9まいどなニュース】
「届かぬ大阪府の休業要請支援金…支給決定まだ2割「1カ月以上状況分からず」「支払い間に合わない」と悲鳴」



▼「大阪モデル」緑信号になるよう、基準を変更

5月5日、吉村知事は緊急事態宣言での休業要請などの解除の判断とする大阪独自の指標「大阪モデル」を発表しました。

「見える化」すると、太陽の塔などをライトアップまでした大阪モデル。

しかし524日、緑信号の基準を維持できないと明らかになった前日の23日、吉村知事は緑信号が続くよう、基準を変更したのです。

この基準変更の意思決定はどうなっていたのか。開示請求の結果、「吉村知事のトップダウン」だと分かりました。

https://note.com/kaijiwada/n/na64e33c988dd

京都大iPS細胞研究所 山中伸弥所長が「結果を見てから基準を決める。大阪府の対策が、科学から政治に移ったことを意味します」と懸念した通りです。


▼他都道府県との調整・連携は?

吉村知事は就任以降、「関西広域連合委員会」に出席したことがありませんでした。『関西圏域における新型コロナウイルス感染症への対応』を議題とした3月に2度開催された委員会も、両日とも「公務なし」にもかかわらず、欠席。4月にようやく、初めて出席しました。

「全国知事会」の出席も、万博決議の一度のみ。9月入学の前向き発言で小池知事とニュースを賑わせた時が、2回目の出席です。

知事会等に参加せず、事前調整もないまま「大阪は経済の中心だから」とマスコミで発表する…。他都道府県との連携は大丈夫なのか心配です。


▼プレスリリースすらないのに、テレビで発表

知事のメディア露出は非常に多く、4月28回、5月は30回を超え、Twitterでの発信にも熱心です。

しかし、大阪府HPには「新型コロナウィルス感染症対策サイト」はあるものの、対策サイトのはずが、府の対策が一見してわかるページはありません。

「大阪府新型コロナウイルス対策本部会議」の配布資料や議事次第はありますが、何が決まり、進捗はどうなのか。議事録もなく、何をやっているかすらわかりません。


前述の重要施策が、大阪府・市HPに報道発表すらないということは、開示請求からも、行政が何も準備もないまま、知事・市長の一存で発言していることは明らかです。周辺自治体との調整もなく、行政も知らぬまま、知事・市長が勝手にテレビで伝えていいのでしょうか。


2018年大阪北部地震時、大阪市長だった吉村氏は、「大阪市内の幼・保育所、小・中・高校は、安全確保のため、全て休校にする指示を出した」と、Twitterで発信しました

しかし、吉村市長が教育委員会に休校措置を指示したのであれば、それを受けて教育委員会が休校を各校に伝え、対応できるようになって、かつ大阪市HPサイト等で公式発表してから、吉村市長のアカウントで発表すべきです。

登校中の時刻に起こった地震。児童の安全確認に追われる学校では、公式発表もないままに、吉村氏のTwitterをみた保護者からの問合わせが入り、教育委員会に確認しても分からず、児童のお迎え、昼食をどうするかなど、教育現場も保護者も振り回される結果となりました。


松井市長が防護服の代わりに集めた雨がっぱも、開示請求の結果、松井市長の思い付きであったことが判明しています。
https://note.com/kaijiwada/n/n7a70dc8efff3

(実際、30万着集まった雨合羽は、1か月以上たった今も約19万着、行先がないまま残っています。(市議会答弁より)

※その後、医療現場で使いきれない雨がっぱを、教育現場に取りに来いと教育委員会が通達をだしています。
https://twitter.com/jxyezp9fou8aycr/status/1268926039180193792

※大阪市HP「新型コロナウイルス感染症にかかる寄附物品について」2020/6/8更新分より抜粋

https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000501/501001/bougokifu.pdf

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私たちの目に見えづらい行政の中で、このような事態が、日々起こっていると容易に想像できます。

検討すらされていない、思い付きの市民受けしそうなことを発信するのがリーダーシップなのでしょうか。

知事の思い付きの帳尻合わせに忙殺され、行政のポテンシャルを発揮しそこねていないでしょうか。


そもそも市民病院を減らしたのも、保健所の人員削減を進めたのも、「二重行政の無駄」として、公衆衛生(府)・環境科学(市)と、機能が違う大阪府・市の地方衛生研究所を統合し、独立行政法人化し、これらを成果として宣伝してきたのも、橋下氏以降の維新の党です。


今回のコロナ禍で、国だけでなく自治体の役割が再評価されていますが、「大阪市を廃止」する、2度目の大阪都構想の住民投票を今年111日に予定通り行うと、今も知事・市長は強調しています。


歴史学者 住友陽文氏が先日Twitter

「大阪維新が苦手なのは、ずばり行政そのものなのではないか。住民がいて、生活をし、(略)病気になれば安心して医療を受けられ、年を取れば福祉がある。そういう住民という実体のあるものを相手にした日常的な行政のことだ。」

と指摘しました。

カジノ・リニアといった“打上花火”は得意でも、行政が苦手な知事が、行政の現場を右往左往させている状況で、市民の生活はよくなるでしょうか。何を言ったのかではなく、「何をやっているか」を見るべきです。■


posted by AMnet at 21:21| 大阪問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月06日

パンデミック時代に考える食と農〜食の国際貿易とグローバル生産体制を押し進めてきた歴史と、付加価値を追求してきた「不要不急」の食〜

AMネット会報LIM95号より、コロナ後の世界を考える重要な視点です。
会報発送前ではありますが、原稿を公開します。


パンデミック時代に考える食と農

平賀緑(AMネット理事。立命館大学専門研究員、京都橘大学非常勤講師)


COVID19パンデミックによる食と農への影響について、メディアでも取り上げられ、国内外でさまざまな論者が論じ、研究者もこのトピックに飛びついている感がある。

重要課題ではあるものの、あまりの「流行」に天邪鬼な私はやや引き気味でいたが、学生たちに講演する機会もあったため、思うところをまとめてみた。あくまで20205月現在に国内外の議論を聞いて考えたエッセイであって、自ら調査研究を手がけた内容ではないことをご了承いただきたい(元となった講演は文末参照)。


パンデミックにより「自粛」要請された外食産業が影響受けていること、キャンセルされた宴会用やオリンピック需要を見込んだ食材、そして給食のための食材が無駄となってしまったこと、そのため政府が「お肉券」など導入しようとして頓挫したこと(まだ諦めてないようだが)。

また農業生産現場では、安い労働力として依存を強めていた外国人「研修生」が来日できず農作業や出荷作業が滞っていること、外食産業で多いバイトが消えて学生たちも困窮していることなどなど。

そして「食料」輸出国が輸出制限したことから「『世界同時多発食料危機』が自給率4割の日本を襲う」と警告が発せられた。
世界に目を向けると、確かに4月頭には国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が世界的な食料不足の恐れを警告している。

海外でも移民労働者が動けなくなったため農業生産・出荷作業も滞っている。もとから劣悪な労働条件だった食肉処理工場では、米国で2万人、ブラジルで数千人が集団感染するなど、食料サプライチェーンの行き詰まりが懸念されている。

しかし食料の不足より、それ以上に、パンデミックによる貧困化・経済的影響による飢餓が懸念されている。


現在パンデミックにより影響を受けている食のグローバル・サプライチェーンを簡単に書き出してみると次のようになるだろう。


世界的に大手数社が寡占状態の農業資材(種子、化学肥料、農薬など)への依存

・・これが物流の寸断で滞り

 ↓

安価な外国人労働者や季節労働者(日本では「海外研修生」)を多用しての大規模農業生産

・・人の移動禁止で滞り

 ↓

大手数社が寡占する大規模な食肉処理場・食品加工場

・・もとから劣悪な労働条件に加えて政府・企業が稼働を強行して人権侵害的な感染が広がっている

 ↓

WTO自由貿易体制に組み込まれ拡大した農産物・食品の国際貿易や長距離輸送

・・移動禁止や輸出規制による「食料危機」が叫ばれる

 ↓

大手小売店の発展(スーパーやコンビニが主な食料入手先に)

・・買い占めにより食料不足。この現場では学生バイトも仕事が忙しくなったとのこと

外食・中食など「食の外部化」の発展

・・補償なき休業要請により経営危機や失業。パートやバイトの学生たちも収入減。

・・ステイホームでの食生活はインスタント、レトルト、スイーツが増えて、逆に不健康になったとの声も


これが「アフターコロナ」に人とモノの流れが復元されて、元の食料システムを復活できればすべてOKだろうか?

そもそも、なぜ、ここまで寸断されるほど食のサプライチェーンが世界中に引き延ばされ、「不要不急」を控えたら無駄になる食材がこれほど増やされていたのか。


■食の国際貿易とグローバル生産体制を押し進めてきた歴史

これほど危機に弱い食料供給体制は、比較優位理論で生産を特化し、その国際貿易を押し進め、労働力には季節労働者や外国人労働者を使ってコスト削減するなど、過去半世紀にわたり「効率性」を求めてきた結果だという(J. Clapp)。

1980年代から途上国に対しては構造調整計画(SAP)を押しつけ、人々の口に入る食べものより輸出して外貨を稼ぐ商品作物の生産を押し進めたこと。

GATTウルグアイラウンドからWTO成立につながる農業分野の交渉の結果、「農業に関する協定」によって農業と食料が自由貿易体制にがっちり組み込まれたこと。

加えて、租税回避や経済の金融化が、タックスヘイブンを組み込んだ国際貿易や企業の多国籍化、さらに農地や食料の金融商品化を押し進めてきた。

今日世界では、生産された食料の約4分の一が国境を越えて貿易されるという。


日本に関しては1985年のプラザ合意とそれに続く「前川レポート」によって「開発輸入」や食品企業の海外進出が、食のグローバル化を一段と拡張した。

加えて、近年のTPPや日米、日EUなど自由貿易協定の数々によるさらなるグローバル化を推し進めていた最中だった。


結果、生産から消費まで長く伸びきった食料サプライチェーンが発展していた。
「効率性」を高めるため特化した生産や加工現場は生産量や生産物を変更しづらく、寡占が進んだチェーンの一部が寸断されるとチェーン全体が行き詰まる、危機にもろい食料システムとなってしまった。


■付加価値を追求してきた「不要不急」の食

学生たちにネット越しで様子をうかがったところ、居酒屋系のバイトは消滅して困っているが、逆にピザやファストフード、スーパーのバイトは忙しくなったとのこと。ここから「不要不急」の食と、「必要」な食とが対比されて興味深かった。


そこで思い出したのが、デヴィッド・ハーヴェイが現在の消費について語っていた話だった。

必要以上を消費させることが勝負の現在経済において、ハーヴェイがツーリズムの発展について述べていたのは、ツーリズムで文化的な経験を販売することだった。
旅先で、「ご当地」を体験し、「ご当地」の食を楽しむ。旅先では財布のヒモも緩み、より多く消費してくれる。

こうした「経験の消費」は、輸送や在庫管理することなく生産した「経験」が消費された瞬間に換金され価値が実現される。
かつ、いくらでも多く消費してもらえる。

これをハーヴェイは「consumption of spectacular(華やかさの消費)」と説明していた。基本的物資の生産と保有が一巡してしまった現在の世界に、ツーリズムがこれほど推進されたのがよく分かる説明だ。


 「経済学とは、社会がその希少な資源をいかに管理するのかを研究する学問」と教科書は定義づけ、生産についてが注目されやすい。

しかし、生産した商品の価値は、販売しなければ実現できない。
現在でもGDPの最大部分を占めているのは消費であり、消費の増加が経済成長を支える。

ところが、これだけ物が溢れて必要な物はほとんど揃っている現在、必需品だけを生産していては利潤を見込めない。
そのため企業は、消費者も気づいていなかったようなニーズを開拓し、新商品を絶え間なく打ち出し続ける。

食の世界でも、必要なカロリー以上を消費させるため、目先を変えた新商品が次々発売され、企業は塩と砂糖と油を使って必要以上に食べさせるためのノウハウを研究している(詳しくは『フードトラップ』に)。


そして利潤を得るために、基礎的な食べものより、「高付加価値」な食品への転換が促される。
牛肉1kgを生産するためには穀物9kgが必要だから環境コストが高いとしばしば非難されるが、これは裏を返せば、穀物9kgを出荷するより牛肉1kgに変えて出荷する方が「付加価値」がつくからという、利潤追求と経済成長の戦略でもある。

草や畑の残さや庭の虫を食べていた牛や豚や鶏(庭鳥)を閉じ込めると、外部から穀物など飼料をインプットする必要に迫られる。
裏を返せば、補助金漬けで過剰生産した大豆やトウモロコシの価格を維持し市場を拡大するため、加工型畜産を組み合わせると都合良いとも考えられる。


日本の農業生産現場におけるコロナ禍を特集したTV番組でも、今まで「強い農業」のために政府が押し進めてきた、より高付加価値化にとりくみ、より輸出向けに力をいれていた生産者さんが、今一番コロナ禍の影響を受けていると報道していた。

だから日本の牛肉生産者を支えるために「お肉券」との発想に至るわけだ。


覚えておきたいのは、このような「不要不急の食」は、消費側にとっては不要不急で自粛可能かもしれないが、その生産者にとっては生活のため必須だということだ。

その意味では、販路が絶たれた牛肉生産者や、居酒屋でのバイトを失って困窮している学生たちのたちまちの生活を支援することは必要だろう。現場のある農林水産業、物流、小売、外食産業などリモートワークできない食料システムの各段階で「必要な食」を支えてくれている、普段から安く使い倒されてきた多数の労働者についても、スタッフへの感染の危機と併せて労働条件の見直しが求められる。


ただ同時に覚えておきたいのは、パンデミックの前から、肉や油や加工食品を多用する現在の食料システムは、地球の環境も人の健康も破壊していたことだ。

大豆やパーム油の増産が原因と目されているアマゾンやインドネシアでの森林火災や、気候変動サミットに行って嬉しそうにステーキを食べて世界の冷笑を買った環境大臣など、まだ1年内の話である。

環境と健康と地域社会を破壊していた農業食料システムをアフターコロナに取り戻しても、ウィルスではなく農業食料によって、地球と人の寿命は短命に終わるかもしれない。


■モノカルチャーによる生命の大量生産

かなり早い段階から霊長類学者グドール氏はウィルスの世界的大流行は
「人類が自然を無視し、動物を軽視したことに原因がある」
と指摘していた。

「これは何年も前から予想されてきたことだ」とも。

他の論者からも、野生動物の生態圏が破壊されたから人間の生活圏にウィルスを持ち込むことになったとの指摘もある。
野生動物がビジネスになったからこそ、武漢の市場に集められていたのだとも考えられる。


加えて、家畜を閉じ込めて大量生産する「工業的畜産」「加工型畜産」「集約型畜産施設(CAFO)」と呼ばれる畜産形態にもウィルス発生の疑いが向けられている。

ウィルスの発生と人への感染の実態はまだ分からないが、工業的畜産がウィルスの培養槽となったことは充分考えられる。

COVID19の前から、抗生物質を多用しすぎて耐性菌が脅威となり、鳥インフルエンザ、狂牛病、豚インフルエンザ、豚コレラと家畜の病気が次々発生するなど、畜産現場は病んでいた。


豚の方が内臓が人間に似てるから感染しやすい、と聞いたのは、私が丹波で鶏や鴨を放し飼いしていたころだった。
同じ町内に数年前、鳥インフルエンザを発生させた浅田農産があり、私たちがいたころにも小規模な鳥インフルエンザが問題となったため、「感染源」と目されていた野鳥との接触を避けるために鳥たちを密閉しろと指導が入った。

閉じ込める方がストレスが溜まって不健康になると抵抗した私たちに、保健所のスタッフも、走り回る鳥たちを見ながら、ここの鳥たちは元気なのはわかりますけどね、と言われた。

現在また、豚コレラを防止する感染症予防対策として農林水産省は家畜放牧を禁止しようとしている。


私は理系研究者ではないので断定できないが、たとえ野鳥がウィルスを保有していたとしても、それを「高病原性」鳥インフルエンザ(HPAI)に強化したのは、遺伝的に同じ鶏を密集させて大量生産していた工業的畜産の鶏舎が培養槽として機能した結果と考えている。

基本的に、植物も動物も、単一種を同じ所で大量生産すると病弱になる、同じ種が密集すると病原菌の培養槽となる、と考えている。

連作したり、モノカルチャーで単一作物を大量栽培すると、農薬や消毒が欠かせなくなる。

逆に、いろんな植物を共に育てる方が強くなるとして、コンパニオンプランツという手法も知られている。


自然界は植物も動物も、一つの種を一所に集めない。

必ず植物も動物も微生物もウィルスも混ざった多様性のなかで生きている。

多様性があれば、弱い個体は食べられたとしても、同じ種の強い個体、免疫性や対応性を得た個体が生き延びて、種は生き延びる。

しかし、「商品」として輸出したり出荷したりする作物を「効率的」に栽培するため、産業としての農業では生物多様性が削られてきた。

かつてアンデスの民が多種類育てていたジャガイモは、現在では45種が世界的に生産されている。

同時に、工業的農業に基づく私たちの食生活も単調化されてきた。
これだけ多種多様な食品が溢れているのに!と思われるかもしれないが、ではなぜ、数種類の穀物・油糧種子の輸出が止められただけで騒ぐのだろう。

日本において、日清製粉と日本製粉の小麦粉、日清オイリオとJ-オイルミルズの食用油、三井製糖と日新製糖の砂糖を口にしないことがどれだけ難しいか、試してもらいたい。

いずれも、150年前には常食していなかった食品であるにもかかわらず。

世界的には、「ABCD」と称されるアグリビジネスが「この世界には、自由市場で取引されている穀物など、一粒たりとも存在しない」と豪語している。

つまり、これら大企業が扱う数種類の食材に、私たちの食生活が依存している。


■人と環境と地域社会の健康を第一にする「エコロジカル・パブリック・ヘルス」を

「アフターコロナ」の食と農についても、すでに多くの人が、より地域に根ざした、より持続可能な食と農を、この危機をきっかけに見直すべきと述べているため、ここでは繰り返さない(岡田先生の記事も参照)。

ただ、「ショックドクトリン」のナオミ・クレインが「コロナショック」を警告しているように、下手をすれば、このショックでより破壊的な社会が作られる危険性も充分ある。


そもそも、食料自給率や農業の存続を懸念する声は聞こえても、見かけは食品がありふれている日本において、現在の食料システムが生活習慣病の要因として不健康を広めていたり、気候変動の一大要因として地球を破壊していたりとの認識は薄い。

肥満という目に見える不健康が社会現象として問題化された欧米においては、私たちの食生活を形成する政治経済社会的な要因についての研究が進んでいる。

その中でも著名な論者であるTim Langは、食を健康と環境と社会正義の要と捉え、人と環境と地域の健康改善を第一目的とする「エコロジカル・パブリック・ヘルス」を提唱した。

public health とは、日本語では公衆衛生と訳されるが、正しくは「health of public (大衆の/人々の健康)」を意味すると考える。


見かけの経済成長を無理やり押し進めてきた資本主義的経済社会の世界において、パンデミックは自然現象ではなく人間が作り出した経済社会の結果だったとの声も聞く。

そのため、今後パンデミックは継続的な状態となるかもしれない。

資本主義的経済の発展の中で、人間は、医学などの知識と技術で弱い個体を救う術も手に入れたが、格差社会の中で健康的・環境的・経済的コストを弱者に押しつける社会システムも作ってきた。

しかし、経済とは、もともとは「経世済民」として、世の中を治め、人民の苦しみを救うことを目的としていたはずだ。

パンデミックを乗り越えるために「命か経済か」ではなく、「命のための経済」を取り戻すことが重要だろう。

弱者へのしわ寄せを防ぎつつ、本来の、自然の恵みである農と生命の糧である食と、それを支える地域経済社会とを取り戻すきっかけになればと願っている。



2020514日「パンデミック時代に考える 食と資本主義の歴史」講演(約90分)はこちらのyoutube再生リストから視聴できます。

https://www.youtube.com/watch?v=j0q7HSqxiEs&list=PLXN-sA-t7F-WPcaXWQ8oJoeDow4s3KNjs

(短縮URL https://bit.ly/3gQsvN8

 
<平賀 緑プロフィール>

広島県出身。1994年に国際基督教大学卒業後、香港中文大学へ留学。香港と日本において新聞社、金融機関、有機農業関連企業などに勤めながら、1997年からは手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」共同代表として、食料・環境・開発問題に取り組む市民活動を企画運営した。2011年に大学院へ移り、ロンドン市立大学修士(食料栄養政策)、京都大学博士(経済学)を取得。植物油を中心に食料システムを政治経済学的アプローチから研究している。

主な参考文献/サイト:

David Harvey's Anti-Capitalist Chronicles (podcast)
https://anticapitalistchronicles.libsyn.com


Eric Holt-Giménez (2017) "A Foodie’s Guide to Capitalism: Understanding the Political Economy of What We Eat" Monthly Review Press
https://foodfirst.org/a-foodies-guide-to-capitalism-understanding-the-political-economy-of-what-we-eat/


Jennifer Clapp "Spoiled Milk, Rotten Vegetables and a Very Broken Food System"
The New York Times (Opinion) 202058
https://www.nytimes.com/2020/05/08/opinion/coronavirus-global-food-supply.html

マイケル・モス()、本間徳子()『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』日経BP2014

霊長類学者グドール氏 コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」
AFP 2020412
https://www.afpbb.com/articles/-/3278221


岡田知弘「コロナと闘う5 地域ごとに課題潜在 問われる自律体制」
日本農業新聞 20200509
https://www.agrinews.co.jp/p50745.html

https://www.change.org/p/江藤-拓農林水産大臣-放牧制限しないで

posted by AMnet at 17:08| 食と農 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする