2021年12月16日

2025万博の一体なにが問題なのか〜大阪・関西万博をSDGs万博にするために〜公聴会で発言しました

「SDGs達成」をいうだけでは、SDGsは達成できません。
「未来社会の実験場である大阪・関西万博は、いかにSDGs達成にチャレンジしたのか」
それを環境面から図るのが「環境アセスメント」です。

ですがEUでは「環境」だけでなく、「社会」「経済」も含めた「持続可能性アセスメント」へ移行しています。
つまり、環境アセスだけでは時代遅れになってしまっているのです。

しかし、現在の博覧会協会の出してきた環境アセス準備書は、
環境アセスとしても、あまりにもお粗末…としか言えない状態です。

一体、何がどう問題なのか。
@SDGs万博にふさわしい環境アセスメントを
Aなぜ夢洲を会場としたのか
B最低でも「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」「大阪市環境基本計画」と整合性をとるべき
の3つの視点から述べました。


2021年12月11日、大阪市の公聴会に参加し、公述した内容に若干修正したものを掲載します。


<以下公述内容>

大阪・関西万博は跡地利用がカジノであることから「カジノ万博」っていうふうに一部でも言われたりもしています。
しかしもともとSDGs達成を目標として、それが評価されて誘致に成功した経緯もあり、国際的な約束でもありますので、SDGs万博にふさわしいアセスメントを実施してほしいです。

 安倍元首相も参加した首脳級の閣僚会合、2020年のSDGsサミットで「行動の10年」っていうのが始まっています。
要するにSDGsを達成するためにより具体的な行動をそれぞれのセクターがしないといけないという意図で、「行動の10年」が始まっている。

それ以降の計画にもかかわらず、「参加者が取り組む」ばかりで、博覧会協会が、万博が主体となってどういうふうに達成するのかという事業もないし、指標もない。

どれぐらい達成したかを測る環境アセスメントにすらそのあたりの指標がない。

参加者が発表したり、議論したり、そういう「場の提供」だけが博覧会協会の仕事ではなくて、これだけ巨費の公金を投入する大きな事業ですから、「会期の前の計画段階から会期中、会期後にわたって、どのような具体的な計画・削減目標を持ってSDGsの達成に貢献したのか」というのを示すべきです。

逆に私たちからすると、その環境アセスメントで謳われたことは、具体的にどういう状態になれば、博覧会協会はSDGs達成をこの万博でできたという判断をするのか、私たちが理解することにもつながります。

 大阪・関西万博が「負の遺産」とならないように、どのように貢献したのか、博覧会協会がどう考えているのかというのを明確に示すべきですし、そのための目標の明示、指標、そういったものは必須です。

 次に、「持続可能性アセスメント」の実施についてです。
SDGsは環境だけではなく、社会、経済、その三側面というのが必須です。
ですので、環境だけでなく、社会、経済が勘案された「持続可能性アセスメント」を実施してくださいというのを博覧会協会に私たちは何回も協議でお伝えしてるんですけれども、計画段階はもう終わっているということでそれは難しいというのみです。

 「ISO20121への適合を視野に入れて、ESMSの導入を検討する」っていうふうに2020年12月、博覧会の基本計画で記載がされましたが、その1年後、11月のアセスメントの説明会においてもなお「構築・導入に向けてその具体化に向けて検討する」といった、結局「検討」の状態から1年以上経っても、1年ぐらい経っても変わってない、ずっと検討してるだけでです。

協議の場でも博覧会協会に「その検討は進んでいるのか」と聞いても、「まだ検討しています、全然進んでいない」といった回答であり、本当にやる気があるのかなと私たちも疑います。

まだ4割しかパビリオンが決まってないっていう報道もありました。
会場計画が決まっていない中で準備書が決まっています。
これから会場計画どんどん変わっていくっていうことが大前提であるならば、変わった段階でどういうふうに追加調査をしていくのか。変わることが決まっているのですから、それを踏まえた追加調査の計画っていうのも明らかにすべきです。


20年前の愛知万博よりも10年前のミラノ万博よりも、レベルの低い、昔の環境アセスメントしか実施しないというのは、SDGsを目的として開催する大阪万博として本当にそれでいいのか。

SDGsの精神をどのように引き継いで発展させて、未来につなげていくのか。
そのための大事な手法の一つが環境アセスメントであると思います。

何十年も前に大阪市が制定した条例のとおりのアセスメントではなくて、やっぱりそれに加えてどういうふうに未来型で変えていくのかっていうのを示してほしいなと思っています。


 二つ目です。
なぜ夢洲を会場に選定したのかというのを、最低でも環境面から合理的に説明すべきだと思います。

 準備書の第1章の説明も「会議で決まったから」みたいな話で、説明会のときに私は、もう1回質問をしたのですけれども、そのときは「閣議決定されたから」といった回答でした。だから「決まったから仕方がない」というだけの話になっています。

 大阪市との協議では、もともと「夢洲1区は家庭ごみなどの焼却灰で埋め立てたので、緑地やメガソーラーなど制限付きの利用で、万博には利用しない」と説明を受けていました。

使用すると決まった後は「1区の土壌汚染に警鐘を鳴らし、博覧会協会も危険性を認識しているはずです」というふうに私たちは説明を受けました。

なんですけれども、使わないと言っていたはずの1区に「グリーンワールド」と名称が付けられて、交通ターミナルやエントランス広場、要するに車で来られる方ってみんなそこを通るわけです。

で、屋外のイベント広場に使われる。ベストプラクティスの発表する場としてされている会場もここになっているということで、使われないはずだった夢洲1区を使うにもかかわらず、どういうふうにして運用し、評価するのかといった指摘も全然ない。もともと使えないとしていた土地なのにもかかわらず。

 これまでの協議では、大阪港湾局が「危険だと協会には伝えてます」という。
で、大阪都市計画局は「港湾局が大丈夫だと言っている」。
博覧会協会は「大阪市が大丈夫と言っている」みたいなかたちで、東京オリンピックのときと同じように、誰が責任取るのかっていうのがわからない。

結局、「うちは誰かが大丈夫って言ってたから大丈夫」「私は大丈夫じゃないって伝えてる」みたいな話で誰も責任取らないようなかたちになっていて、多分、このままいくと本当に何かあったときに、責任の押し付け合いになるんじゃないかって懸念しています。


 アクセス不足も指摘されているところですけれども、此花大橋、夢舞大橋の拡張工事が始まります。

此花大橋を利用して夢洲に入る通行量というのは17,149台ということで、大渋滞になったら窒素酸化物が倍化、三倍化する。
すでに物流だけでかなり渋滞しているのにもかかわらず、そういった複合汚染を考慮した評価をまったくされてない。

準備書を見ると、「大阪市が表示した場所等の複合汚染を考えている」と書いていたけれども、結局IRは事業者が未定だからということで、複合汚染をまったく考慮されていないままの準備書になっているということが信じられません。

IR事業者がまだ決まってなくても、港湾施設はありますし、地下鉄の延伸工事も決まっている。

夢洲だけでこれだけあるにもかかわらず、本当だったら、大阪・関西万博なんだから大阪・関西の全体の影響を測るべきにもかかわらず、夢洲の中のことすら、会場内しか考えていない。

複合汚染をまったく考慮されていない、その評価がないっていうことにちょっと本当にびっくりしています。


 しかもその夢洲のコンテナっていうのは2025年までに40パーセント増やすっていうのが大阪市の港湾計画ということで、さらに渋滞が進む。

しかも工事中ということでさらに大渋滞が起こるんじゃないか。
そもそも夢洲に物流拠点と集客施設の併存っていうのがそもそも可能なのか、環境への影響はどうなるのかっていう評価もされていません。


当初の予定も崩れてIRのホテルもなく、日帰りの客しかいない。

そういった中で、先日博覧会協会に「こんな集客計画のままでいいんですか、USJの1日当たり4倍の集客なんか本当に大丈夫なんですか」と聞いたら、「ドバイの万博はそのままの計画でいってるから、うちもいく」といった回答でした。

ドバイ万博の集客目標2,500万人のうち、今、このままいくと1,400万人ぐらいしか来ないっていうような進捗になっている中で、本当にこのまま日帰り客しか想定できない大阪・関西万博、1日USJの4倍のまま、この無理筋な集客計画のままにインフラ整備を大阪市民の税金を使って本当に進めるべきなのか。

メガソーラーまで加えて夢洲を会場にするよりも、もう現実に即して夢洲以外にするか、IRカジノの予定地とかで埋め立てがもう終了している場所を使うとか、規模縮小していく、そういった配慮が必要なのではないかと。


大屋根もそうです。
もともとパビリオンとかは半年で全て原則撤去になりますから、莫大な廃棄物が出る。

特に大屋根が象徴的ですけれども、半年で壊すものにこれだけのお金を使う、環境もそうですし、社会にも経済にも、これSDGsからも問題ないと言えるのか。

 ごみの最終処分地がなくなるのもそうです。
海には限りがある。大阪湾どこでも埋められるわけじゃない。
将来世代の、ごみの最終処分地がなくなっているということを十分に考えねばなりません。


「夢洲を会場にどうしてもする」のであれば、夢洲の優位性っていうのを環境影響およびSDGsの観点から合理的な説明をすべきだと思います。


 三つ目です。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」「大阪市環境基本計画」と整合性がとれていません。

 大阪市は「SDGs未来都市」として、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」がG20のサミットのときに首脳宣言として出されて採択され、共通のグローバルビジョンとして、G20のみならず他国や、国際機関に呼びかけていく、そういった大阪を冠にしたプラごみゼロのビジョンを出しているわけです。

 加えて、「大阪市環境基本計画」のほうにも万博を機会と捉えてSDGsを進めていくとか、素晴らしいことがいっぱい書いてあるわけです。

「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」とか「大阪市環境基本計画」というのがせっかくある。
「大阪」が冠ついた、世界中にうたったプラごみゼロのビジョンが出ているにもかかわらず、今の計画は2019年のG20から数年しか経っていないのに、もはやその最低限の整合性すら取れていない内容の環境アセスメントで、大阪市として許していいのかっていうふうに思います。


 要するに、せっかく万博なんだから未来社会の実験場として、もう会期前から、調達からですね、脱プラ、脱炭素もそうですし、そういった、チャレンジがないとだめだと思います。

このままいくと「SDGs達成の手法」っていうのが、「Society 5.0」とか「ICT」だけになってしまう。

「万博のレガシー」が「カジノ」と「ビッグデータ・ICT」だけになってしまう。

それで本当にいいんですかという話です。


 あとは全体的にアセスの対象期間というのが、会期中だけとかあまりに限定的過ぎます。
期間も場所もあまりにも対象範囲が狭すぎる。

 東京オリンピックでも、木材調達が熱帯林乱伐されているっていうことで、今、アメリカの環境団体から通報されていますけれども、世界的に注目をされるっていうことをちゃんと考えて、工期中から、最初から最後までちゃんとやってほしいということです。


 せっかく大阪市の専門家委員になっていただいている先生にとっても、はっきり言ってアカデミックのこれからのスタンスとして恥ずかしいレベルの環境アセスメントになってしまってると私は思いますし、これでSDGsって言われたら、SDGsウォッシュとしか正直思われないようなものに、やっぱり先生方を巻き込んでいいのかっていう点からも、大阪市としてきっちり対応すべきだと思いますし、先生のほうからもやっぱり博覧会協会に対して言うべきことは言ってほしいです。

自分の専門分野だけではなくて、総合的に自分たちの関わるSDGsを達成するための環境アセスメントとして、これからの日本のアセスメントとして、SDGs万博としてどういうふうにすべきなのかっていう評価軸っていうのを、しっかりと大阪市としても求めていただきたいと思っています。

<ここまで>


■以下参考リンク先

▼2025年日本国際博覧会環境影響評価準備書に関する公聴会の開催及び公述申出書の受付について

▼大阪市環境影響評価専門委員会

▼博覧会協会

▼大阪・関西万博 基本計画書

▼準備書
・準備書の要約書

・準備書本体

posted by AMnet at 21:08| 大阪問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする