2009年03月26日

トルコ政府、イスタンブール世界水フォーラム開催で、水の民営化を促進


オリビエ・フーデマン、オルサン・セナルプ
2008年5月23日

2009年3月に世界水フォーラムを主催するトルコ政府は、おそらく今までのフォーラム開催国の中で一番、水の私営化推進政策を掲げている政府ではないだろうか。同国政府の計画では、水道サービスの私営化だけでなく、河川や湖の民営化も対象に上っている。先月イスタンブールで開催された会議で、トルコの社会運動団体の数々が、トルコ政府が世界水フォーラムを利用して大きく物議を醸し出す計画を推し進めようとしているのではないか、という懸念を表明した。

3年ごとに開催されてきた世界水フォーラムだが、これまでのフォーラムは市民社会から大きな反発を受けてきた。世界の水問題の解決方法を議論する場として不適切であり、合法的な資格を持たないことがその理由だ 。フォーラムは、民間シンクタンクであり世界銀行やグローバル水企業との密接なつながりが指摘されている、世界水会議によって仕切られている。こういった批判の声は、2009年3月に開催される次回フォーラムが近づくにつれ、さらに強くなってきている。主催国政府の私営化志向があまりにも強烈だからだ。

2日間に渡った会議、「水:資本主義の支配下に」は、水政策ネットワーク(Supolitik Iletisim Agi)、トルコの労働組合、市民団体 などの共催で開催され、350人以上が出席した。開会セッションでは、自治体労働者組合(DISK)のセルハット・サリホグル氏は、2009年世界水フォーラム背後にある政治的状況について説明した。開発公正党(AKP)率いる現在の保守政権は、公共サービスすべてを私営化したいと考えている。今月初めに、政府は公共サービスの規制緩和案を提出した 。新法案のもとでは、同国の水道事業体の業務委託を民間企業が担うことができるようになる。

こういった私営化推進姿勢は、いままでの新自由主義改革の延長線上にある。これによって、地方自治体は予算不足に陥り、水道事業の責任ある管理がままならなくなってきた。自前の浄水場を持つ自治体は8%にしかすぎず、25%の産業廃水は未処理のままである。政府は、州銀行や国営水道事業機構といった公共機関の権限を弱めることも念頭においており、公共都市計画や投資における能力を弱め、自治体が私営化推進路線を推進する国際金融機関の意のままになることを意味する。

地質学技術者組合(TMMOB)イスタンブール事務所のタヒール・オングール氏によると、政府は上水道事業の私営化だけでなく、水資源の私営化も計画しているという。エネルギー・天然資源省のヒルミ・ギュレル氏は、49年を限度として河川や湖も民間企業への販売対象となる、と発表している 。民間企業がダムを建設する期間は、建設地の河川や湖をその企業が所有することこそが、水不足を乗り越え、飲料水や地方の潅漑水確保のために最善の策である、と政府は信じて疑わない。前例にないほど急進的な私営化姿勢はまだ続く。政府は2009年3月の世界水フォーラムの前に、憲法改定を済ましてしまいたい構えだ。主に対象となるのは、憲法第43条の、沿岸地域、河川、湖などを民間企業の手に委ねることを制限し、国益を優先させると謳う項目である。

ハサンケイフを救う会のディレン・オズカン氏は、破壊的な大規模ダムプロジェクトがトルコで急増していると批判した。特に衝撃的な一例が、チグリス川上流のリス(Ilisu)ダムで、ハサンケイフという古都や近隣の数多くの村々が水の下に沈んでしまうことになる。追い出される7万8千人の人々は、主にクルド人である。ダムのもたらす環境破壊は劇的に大きく、何百モノ遺跡を水の下に沈めるのだ。

農民連合代表のアブドラ・アイス氏は、農業用潅漑施設の私営化を薦めようとする政府の政策を強く批判した。現在は地域の協同組合によって管理運営されている灌漑が、コンセッション契約の制度のもと民間企業への移譲が予定されている。これによって農民や地域コミュニティは地域の水資源に対する権利を失うことになり、彼らの生活に破壊的な結果をもたらすであろう、と彼は述べた。農村地域の地下水も、無節操な取水のために枯渇しかけているのが現実であるが、それでも水の商業化が解決策ではない。こういった問題に対する本当の解決策は、自然と共生する農業であるとアイス氏は述べ、「エコロジカルな民主主義」との表現で締めくくった。

水の私営化はトルコにとって新しい現象ではない。個人的な給水契約が、アルパカイとコルルといった都市では上水道事業は民間委託されており、上水道事業のアウトソーシングや下請契約は国中に広がっている。アンタルヤ市では、さらなる値上げ要求に自治体が拒否するや、フランス資本のグローバル水企業のスエズは10年契約のところ6年で撤退した。水道料金はすでに130%値上げされていたにもかかわらず、同社は約束された投資を行うことができなかったのだ。

トルコ政府はさらに広範囲の私営化が次々と実施してきたが、すでに問題が明らかになっている例がいくつもある。イスタンブールの会議で、「エディルネの水はいのち・プラットフォーム」のエルトゥグルル・タンリクル博士は、エディルメ市で導入が予定されていた私営化計画における深刻な汚職の事例について話しした。その月初めに、入札に関わった、ハマディ・セデフシ市長や企業の代表者たちを含む19人が逮捕された。3つのトルコ企業で構成されるコンソーシアムが、市が運営する上水道事業の30年契約を落札した。その事業には、プリペイドシステムの水道メーター設置事業も含まれる。コンソーシアムは市の関連部署に従業員を一人派遣し、これによって入札が自分たちに優位に進むよう策略した。コンソーシアムは国内の他の9都市においても、水道私営化導入のために汚職を使って影響を及ぼそうとしたことも、警察の捜査で明らかになった 。

イズミール、アンカラ、イスタンブールのような大都市では、水へのアクセス権を求めた、強い草の根の運動が存在する。水を軽視する政治的風潮と商業化政策の結果、自治体が運営する水道サービスは悪化する一方で、断水も頻繁に行われる始末だ。会議では、民衆へのシェルター協会のイクヌール・ビロル氏は、貧しいコミュニティで展開されている地域の水闘争について報告した。闘争のほとんどは女性たちが主導を握っている。13日も断水された世帯の女性がデモを組織した結果、3000人が参加した例もある。ビロル氏は、2009年3月に向けての準備作業を共同で行い、トルコの水運動を強くしよう、と社会運動団体に呼びかけた。

この呼びかけに、他のスピーカーの多くが賛同した。自治体労働者組合(DISK)のサリホグル氏は、世界水フォーラムへの対抗勢力で、トルコの水危機の解決へ向けた新しく今までとは異なったアプローチの始まりとしよう、と呼びかけた。TMMOBのタヒール・オングール氏は、世界水フォーラムを機会に、トルコ政府が国際的金融機関と建築企業に「トルコの水をお皿に盛って差し出」そうとしている、と警告した。2009年3月には金融機関や大企業がイスタンブールに集う、しかし、世界の水運動も集うのだ、とオングール氏は付け加えた。

トルコ政府は、世界水フォーラムを私営化計画に追い風を与える絶好の機会としてとらえている。会議のスピーカーが、「市場ファシズム」と表現していたが、この背景を考えると、世界水フォーラムを取り仕切っている民間シンクタンクである世界水会議が、どういう理由で2009年3月のフォーラムの主催役にトルコ政府を選んだのか、大きな疑問が生じてくる。ウェブサイトでは、イスタンブール水フォーラムの主催者は「よりよい水資源管理へ向けて具体的な提案を行い、ひいてはミレニアム開発目標の全ての項目を達成できるよう、世界の関係者に呼びかけたい」と謳っている 。ホスト国であるトルコ政府の水政策は無責任であり、世界水会議が唱えるレトリックがいかに空虚であるかを明らかにする。

原文:”Turkey's government plans sweeping water privatisation in run-up to World Water Forum in Istanbul” by Olivier Hoedeman and Örsan Senalp, http://www.tni.org/detail_page.phtml?&act_id=18319&menu=05k#1b
posted by AMnet at 00:00| 世界水フォーラム2009/2012 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする