「自分たちの商売はとても大変になってきた。売っても売っても利益が出ない。それはダイエーが“価格破壊”を言い出したころからどんどん酷くなってきた」
昨年のアメリカ発の金融危機以降、日本国内でも景気の悪化が深刻化しています。こうした中、大手スーパーのイトーヨーカ堂やイオン、西友をはじめ、多くの小売業が“生活応援”をうたい文句に、商品の値下げを打ち出しています。
イトーヨーカ堂は、食料品や衣料品、日用品など2600品目を3月18日から一斉値下げすると発表。同時期にイオンも自社ブランドの「トップバリュー」の価格引下げを2200品目に拡大し、さらに一般メーカー品についても食品を中心に3400品目の価格引き下げを打ち出しました。一方、ウォルマートの完全子会社となった西友も昨年12月、“お客様へのマニフェスト”として「地域でいちばん安いお店をめざします」を宣言するなど、多くの小売業が値下げ合戦の様相を強めています。
一見、消費者にとっては嬉しい値下げかも知れませんが、半面、そのしわ寄せが、取引先である卸売業者や製造業者、あるいは農産物などの生産者に及んでいるケースも少なくないようです。全ての値下げが悪いとは思いませんが、一方で行き過ぎた“買い叩き”もあるのは事実です。
一般消費者にとっては価格の背景はなかなか見えないのが現実ですが、「安いほうが良い、安いところで買う」という消費行動は、個人のフトコロにとっては合理的な選択かも知れませんが、雇用や産業の安定化などを考えれば社会全体としては必ずしもベストであるとは言い切れないし、個人にとっても実は不幸な勘違いがそこにあるかも知れません。
様々なつながりによって成り立っているのが社会だと思いますが、今日、そのつながりはどんどん見失われているように思います。つくる人、売る人、買う人、それぞれのつながりもまた同様です。(W)