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世界中で進む水道私営化 〜生活の基本、公で管理を〜
堀内 葵(NPO法人AMネット事務局長)
3月16日から22日にかけてトルコ・イスタンブールで開催された第5回世界水フォーラムと並行して、約70カ国から集まった水問題に関心を寄せる市民、NGO、労働組合、研究者たちが「もう一つの水フォーラム」を開催した。企業主導の世界水フォーラムとは異なり、人々による「オルタナティブ・フォーラム」である。2003年の第3回(京都など)、2006年の第4回(メキシコ)を経て、今回の「オルタナティブ・フォーラム」のために各国から集結したNGOに共通していたのは、不採算を理由に水道事業を私営化するのではなく、既存の公営水道を改善・強化することで「公共の水管理」を実現するべき、という主張である。財政面・技術面・人材面で公営水道の管理運営が立ち行かなくなった地域にヨーロッパに本拠を持つ巨大水企業の参入が相次ぐ中、当初の約束とは裏腹に料金の値上げを続けたり、杜撰な管理によってコレラなどの病気を蔓延させたり、入札に関わる不正が繰り返されたりと、この15年ほどの水道私営化プロジェクトは失敗に終わっている。水道事業以外にも、ダム建設やボトルウォーター産業など企業が水管理を独占しようとする動きは世界中で広がっている。
こうした動きに対し、NGOたちは、(1)水は人権である。清潔で十分な水へのアクセスと衛生設備の確保はすべての人々に保障されるべき(2)世界の水問題を議論するために国連中心の開かれたフォーラムを新たに作るべき、という主張を繰り広げた。現在の世界水フォーラムは私企業によって牛耳られており、高額の参加費を支払わなければ議論に加わることも出来ない。日々の生活用水を欠く人々の声は無視されたままである。「オルタナティブ・フォーラム」ではこうした貧しい人々の声を聞き、公共水道の重要性やそれをいかにして立て直すかが議論された。その答えの一つが、地域コミュニティー内での水道管理である。巨大な施設は効率良く水を供給できるかもしれないが、ひとたび採算が合わなくなると給水停止や最悪の場合撤退という事態も懸念される。しかし、地域内での資材や技術を用いてコミュニティーの人々が水源管理や水供給に参加できるようになれば、全体の管理運営のどこに問題があるのか、どう改善すべきなのかを民主的な議論を経て決定することができ、人々の間にも「自分たちの水道」という意識や責任感が生まれる。食料や医療と並び人間生活の基本的要素である水は、それを使う人々によって管理され、意思決定されなければならない。
特に注目すべきなのが、「水は人権である」という条項を憲法に加えたウルグアイやエクアドルをはじめとするラテン・アメリカ諸国の動きである。NGOや労働組合と共に、政府組織も「水への権利」を保障すべく運動に関わっており、まさに水を守る運動の最先端を突き進んでいる。私たちもこうした動きに学びつつ、「オルタナティブ・フォーラム」をきっかけにアジアでのネットワーク作りを進めてきた。「水を公共の手に!」が合言葉だ。
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