2012年03月16日

【世界水フォーラム@フランス】マルセイユ現地報告vol.2(2012.3.15)

2012年3月15日(木)

マルセイユは地中海に面した港湾都市で、常に多くの観光客で溢れています。
日本と比べると気候も穏やかで、日中の最高気温は19度に達します。


そんな陽気なマルセイユで開催されている世界水フォーラムは、世界各国の政府関係者・閣僚や国際機関、水関連企業から2万人以上が集まり、水問題について話し合われる「世界最大の場」と言われています。

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しかし、その主催者は、世界銀行や巨大な多国籍水企業が出資する「世界水評議会(World Water
Council)」であり、国連が主催しているわけではありません。つまり、地球全体の生態系や天然資源、そして私たちの生活に大きな影響を及ぼす水について話し合われる場であるにも関わらず、民間企業の思惑が大きく働いているのです。象徴的なのは高い参加費。OECD諸国出身者は6日間で700ユーロ(約5万8000円)、その他の国からの参加者は350ユーロ(約3万8000円)を支払わなければ会議に参加できず、そのために多くの発展途上国の人々が意思表明をする場を奪われています。


企業主導の水問題解決策は多くのNGOから疑問視されています。例えば、ヨルダンなど水が希少な地域では海水淡水化が有効、と提案されています。
http://www.worldwaterforum6.org/en/news/single/newspage/1/article/desalinisation-is-the-solution
企業が自社の製品を宣伝するエキスポ(見本市)ではこうした最新技術の売り込みが行なわれています。しかし、淡水化プラントには多くのエネルギーや電気を必要とし、その建設費用や維持費用は発展途上国が容易に払えるものではありません。
世界水フォーラムがNGOメンバーから「Commercial Forum(商業主義的なフォーラム)」と称されるのはこうした背景があるからです。

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現在、世界では1年間に800万もの人が水に由来する病気で亡くなり、10億人以上が飲み水へのアクセスを欠いています。そして、24億人もの人々が衛生設備へのアクセスがありません。こうした状況の中で、昨日お伝えした世界水フォーラム閣僚宣言は、すでに多くのNGOから「具体策がなく、国連が承認した水への人権に十分に配慮していない」と批判されています。


「閣僚宣言は問題を指摘するだけで、水の希少な地域に住む人々が最も基本的な人権である水をアクセスする権利を得るためのロードマップや手法を提供していない。単に、水への権利を促進・強化する、と呼びかけているだけだ」と、Green
Cross InternationalのAlexander Likhotal氏と述べています。
http://climate-connections.org/2012/03/14/africa-world-water-forum-ministerial-declaration-fails-to-respond-to-water-sanitation-crises/


今日は午前中から午後にかけて世界水フォーラムのセッションに、夕方からはオルタナティヴ水フォーラム(FAME)に参加しました。マルセイユの公共交通機関は地下鉄(メトロ)、路面電車(トラム)、バスが整備されており、どちらのフォーラムも市内中心部から簡単に移動できます。


世界水フォーラムでは各国の議員が集まる会合に参加しました。2日間かけて、議員宣言(Parliamentarians Statement)を準備する場です。

内容は、国連による水と衛生設備への人権決議(原文PDF)を受けて、各国政府に安全な水をすべての人に保障するための行動を促すというものでした。英語とフランス語で書かれた原案をもとに、段落ごとに意見を受けつけ、その場でパソコンとプロジェクターを使って修正するという進め方でした。

興味深かったのは、ベネズエラの議員が「経済発展が水や天然資源の搾取を招いている」と発言したり、ブータンの議員が「水質だけでなく水量も考えなければならない。また、世界的に進んでいる民営化についても懸念を持っているので、『安価で入手可能な』水を提供する、というように修正してほしい」という発言です。
各国それぞれの事情があるなかで、一言一句に至るまで丁寧に議論している様子が伺えました。ただし、これも閣僚宣言と同じく、法的拘束力がなく、あくまでも各国議員による各国政府への提案に留まります。

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夕方からFAME会場へ移動し、「水への人権を実現させるには」と題されたセッションに参加しました。冒頭、カナダ人評議会議長のモード・バーロウ氏が国連による水と衛生設備への人権決議に関してスピーチを行ないました。

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(1)先ごろ発表された「国連ミレニアム開発目標を前倒して達成した」という国連の宣言には注意する必要がある。

「2015年までに安全な飲料水にアクセスできない人の数を半減させる」という目標に対して、国連が行なったのは敷設された水道管の数であり、実際には何人に水が行き届いているかを調べたわけではない。また、そうした水道管から出てくる水が清潔かどうかもわからない。また、水道水の料金負担にも触れておらず、供給主体が民間なのか、公営なのかもわからない。
一方で国連は水が不足していていると主張している。2030年には水需要が増大すると言っている。


(2)国連の決議は「ガバナンス(統治)」に関するものである。
しかし、ガバナンスを取り戻するための方法が「市場に委ねる」というものであれば問題だ。
料金全額回収(フル・コスト・プライシング)や民営化という手段は、お金を支払える人にのみ水が行き渡ることになる。私たちはこうしたことに反対しなければならない。そして、政府が行動計画を作成する責任があることも主張して行かなければならない。
水への人権に関して、政府には3つの義務がある。尊重する義務、保護する義務、遂行する義務の3つだ(注:詳細は『私たちが持つ水への権利:国連による水と衛生設備への権利の採択に関する人々へのガイド』に書かれている)。


(3)国連の決議という絶好の機会を私たちは有効に活用しなければならない。

国連という長い間西洋に支配されてきた場で、人権とは何なのかを考える政治的な機会である。国連は先住民の権利を承認しているので、集団的な権利に関する議論が重要である。


モード・バーロウ氏の後にも、アジアでの水の人権実現に取り組む動きや、EU危機のなかで国が「植民地」と化してしまったギリシャの事例など(ギリシャ第2の都市テッサロニキの水道事業が民間資本に売却されようとしており、全世帯が平等に負担することで民営化を阻止しようと活動している人々)の動きが紹介されました。


明日16日は全日FAMEに参加する予定です。

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(堀内)
posted by AMnet at 10:33 | TrackBack(0) | 世界水フォーラム2009/2012 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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