2015年12月10日

AMネット会報より「北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.1-北海道JAの役割-

AMネット会報LIM第76号(2015年6月発行)より、北海道農民連盟職員、清水さんから北海道の現状をお伝えいただきました。
TPPが与える北海道への影響、JAの役割、北海道農業と他地域との違いなど、現場からの報告vol.1です!


北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.1
        清水 敬弘(北見地区農民連盟 事務局長)

 私は現在、北海道・オホーツク地域で農業団体の職員、前職は知床に近い清里町で農家でした。

私が考えるこの先の『食と農と環境』への取り組みは、生産者と消費者双方の相互理解を求めていく粘り強い意識啓発の取り組みに尽きると考えています。

北海道農業で当たり前に感じていたことは、都会の方々からすると極めて『想像しにくい』ことであると、大阪出身の妻と結婚したことで、経験則として感じています。妻と知り合った頃、ドライブでコンビニエンスストアを中心にトイレ休憩を取ることを妻はとても不思議がりました。

実際、妻の実家がある大阪ではコンビニの駐車場は狭く、大手量販店などが立ち並んでいます。北海道の様に、地方都市に行くまでに【何もない】状態とは全く違います。


それらは、「地方と都市」あるいは「農村地域と大都会」を繋いでいる実情でもあります。
地方の生活コミュニティを維持するために、必要不可欠な『インフラ整備』は、生産現場のプロ農家と、それらの受け皿となる地域農協(JA)が各業界と連携構築し、支えてきました。

その様な状況において、60年振りに見直された国の『改正農協法』。
私どもはこれに反論する主張を続けています。【既得権益団体】と揶揄されても、守り抜かなくてはならない「農村景観」や「食料生産」の尊さを、皆さんにお伝えできればと思います。


かつて、小泉政権時代に【聖域なき構造改革】を御旗に郵便局が民営化されましたが、地方まで恩恵は届きませんでした。今も、全国津々浦々に銀行を構えているのは、郵便局とJAバンクのみです。

人口密度の違いを大阪と比較したいのではありません。地方で生活するために不可欠な『ライフライン(Aコープ・スタンド・金融の地域振興・雇用創出)』を歴年にわたり、私ども農業団体も地方自治体とともに、地域形成してきた経過をお伝えできればと思うのです。


また、北海道JAには都府県JAと比較して大きく違う要素があります。
北海道は、食料自給率200%、日本の『食料生産基地』と呼ばれるゆえんが、個別農家より信頼をもらい進めている農畜産物の『販売事業』です。
都府県のJA連合会では、野菜や果樹生産が大半を占め、作物特性上、鮮度やタイミングが求められJAではなく「市場や民間業者」への出荷が多くあります。

一方、『政府管掌作物(国が内外価格差を是正するため、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物)』と呼称される北海道の寒冷地作物は、「二次加工品」とも呼ばれ、米や野菜・果樹の様に市場や小売店に、直接販売することが難しい作物ばかりです。

反面、農水省が示す「大規模集約農業」には機械投資や乾燥・調整施設のハード面も含め、北海道JAがそれらを担ってきた背景があります。ここに、前述のJAバンクの「金融」、JA共済の「生保」が相まり、北海道JAは『総合農協』としての位置付けを明確にしてきました。


北海道の生産農家は自慢の畑が痩せないよう、春の「種まき(定植)」から晩秋の「穫り入れ(収穫)」まで、『輪作体系』を確立しています。小麦・てん菜・馬鈴しょ・豆類などをローテーションで植え、地元JAに出荷することで、肥沃な北海道の大地を守り抜いてきました。

その間、地元JAは『協同の精神』に基づき、大きなロットで預った農畜産物を北海道の経済連である「ホクレン」に一元集約し、全国のバイヤー・商社等と取引を行い、北海道ブランドとして皆さんの食卓に安心・安全と『安定供給』をお届けしてきました。

最後になりますが、【食料自給は海外依存で】と考える一部の消費者の方々や、【(何も知らない消費者は)食べるモノが無くなってから気がつけばいい】と達観する生産者双方の「相互理解の懸け橋」となることを求めて、この先も『食と農と環境』に対する意識啓発と理解醸成の取り組みを粘り強く進めてまいります。■

<これまでの北海道通信はこちらから>

北海道通信vol.1 北海道JAの役割
http://am-net.seesaa.net/article/430972793.html

北海道通信vol.2北海道農業とTPP聖域5品目の関係
http://am-net.seesaa.net/article/438060983.html

北海道通信vol.3北海道農業事情
http://am-net.seesaa.net/article/439134227.html

北海道通信vol.4 生乳の仕組み、指定団体制度の役割
http://am-net.seesaa.net/article/442570265.html

北海道通信vol.5 バター不足の真実
http://am-net.seesaa.net/article/442570586.html

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posted by AMnet at 12:53 | TrackBack(0) | 北海道通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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