2015年12月27日

12月発行AMネット会報LIM77号より「TPP大筋合意?成立まではまだ遠い!」原稿紹介

TPP大筋合意?成立まではまだ遠い!


TPP大筋合意の報道を受けて、11月13日に神戸市立こうべまちづくり会館で、『TPP大筋合意?成立まではまだ遠い!』が「市民と政府のTPP意見交換会・神戸実行委員会」主催で行われました。当日、AMネット事務局長の武田かおりと理事の神田浩史が講演を行った内容から再構成しました。


1.TPP入門/武田かおり
TPPは、投資・サービス・政府調達なども含め、幅広い分野で自由化を推し進める国際協定である。こうした包括的な協定を可能にするキーワードとして「自由貿易」、「規制緩和」の2つが挙げられる。自由貿易は、関税や非関税障壁の撤廃を目指すもので、これに対応して国内ルールが変更され、規制緩和が進んでいる。
規制とは、許認可・介入・手続き・禁止などのルールを決める法律等で、その中には無駄なものもあるが、私たちを守るものも数多くある。しかし、最近の規制緩和は、医療や雇用など、私たちを守る規制がターゲットとなっている。

こうした規制緩和は、特にアメリカからの要求によるものが多い。その1つである「外国貿易障壁報告書」2015年版では、「透明性」として全ての利害関係者に対し政府「諮問機関への参加」、かんぽ生命の新たな保険認可をしないよう事業を制限する内容、食の安全にかかわる「衛生植物検疫(SPS)協定」では狂牛病関連で制限がかかっている牛の月齢緩和・牛由来のコラーゲン等の再市場開放、東京オリンピック等の大規模公共工事の開放など様々なものが対象となっている。

今回公開されたTPP概要でも、医療や車の規制など多数の「透明性」が求められている。
政府審議会などで企業側が直接口を出すことができる制度になるのではと、非常に危険だと感じている。


自由貿易や規制緩和を望むのは、世界中でビジネスの拡大を図るためであり、圧倒的に多国籍企業が有利となる。国内の規制緩和を日本の経済界も求めており、TPPや自由貿易の問題は、アメリカ対日本というよりも、企業対市民という構図だ。


2.TPPの今〜「大筋合意」を受けて〜
/神田浩史

TPPがその効力を発揮するには、まだ何段階ものステップがあり、先行きは不透明である。にもかかわらず日本国内では、すでにTPPを先取りしたかたちで制度変更が進められている。そもそも、現在言われている「大筋合意」とは「偽装合意」ではないのか?合意を演出することで、国内の規制緩和を推し進めようとしているように思える。

これから何が起こるのか

現時点では、ニュージーランド政府が合意後に発表したテキスト6,000ページも暫定版。TPP発効には本来、12カ国全ての批准が必要となるが、これも2年以内に批准できない場合は、域内のGDP85%を占める6カ国以上の批准があれば発効できることになっており、日米が批准しないと成立しない。しかし米国議会や大統領候補者から、反対や交渉見直しの声が相次いでおり情勢は非常に不透明だ。

またTPPが恐いのは、「生きている協定」であり、発効後3年以内に協定の修正を検討するということがすでに盛り込まれている。その他報道等によると、公共事業などの「政府調達」は適用範囲の拡大を3年以内に再交渉、日本郵政も対象とされる「国有企業」は5年以内に追加交渉、日本と数か国は7年後に関税等を再協議することになる。今後、合意文書が確定してもそれで終わりではなく、更に改定・修正が加えられる。つまり、現時点で大きな影響はないと政府が説明していても、今後は分からない。
TPPを使って、かねてからのアメリカの対日要求を、全面的に飲まされたに過ぎない。

TPPへの疑問〜グローバルな協定と言いながら〜
TPPに賛成する人も反対する人も国益になるか否かを中心に議論することが多いが、果たしてそれで良いのか、そういう観点ばかり語られることに大いに違和感を覚える。TPPによってますます南北格差が広がると懸念される。

そして、TPPでの関税撤廃などにより、日本の食料輸入が増えることが予想されているが、それは単に日本の食料自給率が下がる、国内の農業が大変になるということだけでなく、国際的な食料需給のバランスが崩れ、世界の飢餓人口をさらに増大させることにつながりかねない。また、遠くの地域から運ばれてくるモノをこれ以上消費し続けることになれば、ますます地球環境問題を深刻化させることにもなる。TPPは経済のグローバル化を進めるというが、実際は経済のブロック化を進め、そのことが安全保障にも影響を及ぼしかねない。

TPPへの疑問〜私たちの暮らしへの影響〜
例えば食品添加物などの問題や国民皆保険制度もTPPでは守られると言っているが、直接的にではなくとも周辺から切り崩される可能性もあり、この先どうなるかは分からない。
金融面でも郵貯、かんぽが取り沙汰されているが、私は「共済」を特に心配している。

さらに雇用や政府調達への影響、そして地域主権や住民主権が脅かされるということも考えておかなければいけない。しかもこういったことはTPPだけでなく、TPPを先取りするように国内ですでに進んでいる国家戦略特区や規制改革、さらにTPP以外でも「TiSA」(新サービス協定)などでも進んでいる。TPPやTiSAに含まれている「ラチェット条項」は、いったん自由化したものを後戻りさせないというもので、このような協定が結ばれてしまうと、国内でやっている水道などの公共サービスも一度民営化してしまうと元に戻せなくなってしまう。

私たちに大きな影響を及ぼす恐れがあるにもかかわらず、TPPやTiSAなどは秘密交渉で進められており、市民の権利や民主主義そのものを侵害している。そうしたものに対して、公聴会やパブリックコメントの実施をはじめ、情報公開をしっかり求めていくこと、さらに違憲訴訟や地方議会にも請願や陳情などを行っていくことなどの対抗策が必要だ。


TPPやTPP的な発想からの脱却 
〜穏豊〈おんぽう〉社会の実現〜

現在の日常生活は、様々なかたちで海外からの収奪によって成り立っていると言っても過言ではない。その一方で、国内の農林水産業などは海外からの安い産品の流入もあり、衰退してきている。かつては、河川の流域においてエネルギーや食料などの循環がしっかりと根付き、地域の豊かさを形成していた。もう一度そういったものを見直し、それを現代に活かしていければ、TPPなんて怖くない、と言えるような社会(穏豊〈おんぽう〉社会)がつくれるのではないかと考えている。■

文責:AMネット事務局
posted by AMnet at 15:08 | TrackBack(0) | TPP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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