2016年10月03日

北海道酪農・畜産に及ぼす影響‐生乳の仕組み、指定団体制度の役割‐AMネット会報より「北海道通信vol.4」


AMネット会報LIM79号(2016年5月発行)より
北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.4
清水 敬弘さん

北海道・オホーツク地域の農業団体職員、清水敬弘です。今回は『酪農王国』北海道酪農・畜産に及ぼす影響をお伝えします。

日本政府は3月、「TPP承認案」及び「関係法(11本)」を閣議決定、国会に提出しました。
その渦中で酪農関連は、3月末政府の諮問機関「規制改革会議(農業WG)」が、現行の『指定団体制度』 を廃止する提言案を発表、秋までに結論を得ると明記したため、現在も酪農内外関係者の間で批判が相次いでいます。

「指定団体制度」の役割
生乳は品質管理が極めて重要です。全国各地で個々の酪農家が小さな「単位」で販売すると非効率で安定供給に至らないことから、まとまった生乳流通を政策的に後押しする体系が全世界で取られています(『1元集荷・多元販売』)。
そして日本では、集・送乳及び販売の交渉権を『指定団体』が行使すると決められています。

今日まで国の指定団体制度のもとで行ってきた生乳の『1元集荷・多元販売』のルールは、牛乳・乳製品の安定供給、北海道酪農・乳業の総体的な発展を支えてきました。さらに、腐敗しやすい生乳の需給変動に対応する『調整機能』を北海道で担ってきたのは、指定団体「ホクレン農業協同組合連合会」でありました。

広大な北海道で、北海道各地で酪農経営を継続できた理由の一つに、生乳の『統一乳価(プール乳価)』があります。チーズやバターの用途別乳価の価格維持、畜産の個体販売など、複合的に酪農経営を成り立たせてきました。

これまで生乳は『統一乳価(プール乳価)』を遵守することで、都府県の「飲用乳」に対し、北海道の生乳は需給変動の『調整弁(加工原料乳)』として、全国の酪農家同士、役割分担してきました。
飲用乳よりも価格の安い『加工原料乳(チーズ・バター向け)』に仕向けられていることを北海道の「プロ酪農家」の大半の方々は理解しています。


しかし今、NZの大企業・フォンテラ社は、TPPで日本の牛乳・乳製品のシェアを虎視眈々と狙っています。フォンテラ社は北海道の釧路管内(酪農主産地)に出向き、JA組合長や酪農生産者と『現地意見交換会』と称して、指定団体・ホクレン以外との生乳販売の他 、乳製品加工・販売などのより踏み込んだ商談を進める噂があることなども、今後の本道酪農生産のあり方を鑑み、同社の企業参入に大変危機感を持っています。

仮に生乳の自主流通(アウトサイダー)を目的に、前述のNZ・フォンテラ社や、都府県並みの買い取り価格を示す(株)MMJが北海道のみならず、全国中の酪農家から局地的に生乳を買いあさるとどうなるでしょうか?

価格・生産量も含めた産地間での「住み分け」の調整が難しくなり、酪農家同士の『モラルハザード』を助長するだけでなく、スーパーなどで小売される国内の「牛乳・乳製品」の価格高騰を招くことが必至となります。

北海道においても、酪農家戸数が年200戸ペースで減少しています。
後継者不足や、牛舎施設の老朽化など、酪農生産現場を取り巻く厳しさは加速度を増しています。TPP協定いかんに関わらず、酪農家戸数や頭数の減少など生産基盤の弱体化により、現在も全国的な生乳生産量の減少・低迷に歯止めがかかりません。
また、TPP協定の発効によって、最も甚大な影響を被るのは、酪農・畜産分野であると試算されています。


最後になりますが、今回の熊本大地震で被災された方々に心から哀悼とお見舞いの意を申し上げながら、5/1現在地震による農業関連被害総額は1,085億円を超え、生乳廃棄量621d、家畜の死亡・廃用54万1,310羽にも及びます。
一刻も早い復旧対策が望まれる中、生乳出荷のメドが立たない熊本県の指定生産者団体を緊急支援しているのは『JAグループ』です。この先も、生乳生産を含めた安定供給を担う農業団体であり続けていきたいと切に願っています。■


<これまでの北海道通信はこちらから>
北海道通信vol.1 北海道JAの役割
http://am-net.seesaa.net/article/430972793.html

北海道通信vol.2北海道農業とTPP聖域5品目の関係
http://am-net.seesaa.net/article/438060983.html

北海道通信vol.3北海道農業事情
http://am-net.seesaa.net/article/439134227.html

北海道通信vol.4 生乳の仕組み、指定団体制度の役割
http://am-net.seesaa.net/article/442570265.html

北海道通信vol.5 バター不足の真実
http://am-net.seesaa.net/article/442570586.html
posted by AMnet at 13:45 | TrackBack(0) | 北海道通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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