2017年03月17日

【大阪市水道民営化・市会での議論B】「水道事業の経営形態見直しについて〜水道民営化を推進する唯一の会派、維新の質疑から」#水道民営化

【大阪市水道民営化・市会での議論B】
「水道事業の経営形態見直しについて〜水道民営化を推進する唯一の会派、維新の質疑から」#水道民営化



【大阪市水道民営化・市会での議論】
@「水道法改正での制度」と「現行プラン」と、どう違うのか?
http://am-net.seesaa.net/article/447934673.html

A「これまでの水道統合協議は、どのような経過で進んできたのか?維新へのブーメラン」
http://am-net.seesaa.net/article/448019152.html



平成29年3月13日交通水道委員会では、経営形態見直しについて、以下2人の市議が質疑されました。

杉山幹人委員(東淀川区選出:維新 副委員長)
武 直樹委員(生野区選出:OSAKAいくの 会派代表者)

まずは、「水道民営化」を推進してきた唯一の会派、維新の杉山市議から見ていきます。


<以下、市会での議論の概要>

【経営形態見直しについて】

杉山:(これまでの議論で、水道民営化の現行プランに対する)市民の誤解・不安・反対意見について、そのような懸念には及ばないと確認できた。

水道法改正内容は)自治体サイドからの要望もあり、市に事業認可を残すことで、大災害など不測の事態に際し、水道運営に対する市の公共的役割や責任を担保することがねらいと考える。

一方、運営会社が事業認可を取得する、大阪市の現行プランは、
水道事業の公共性を確保する点は、優先度の高い価値観として、既に十分考慮された形になっているものと理解しているが、その点について局の見解は?


局:(公開資料に記載済みの、これまで通りの答弁)

水道事業は、市民生活に密接に関わる事業。水道事業の公共性については、引き続き確保していくことを大前提として、制度設計を進めてきた。

新たに設立する運営会社:国から事業認可を得た水道事業者として、平常時の事業運営については全面的に責任を負い、運営は、市との実施契約や要求水準に従う。

市に設置するモニタリング部署:履行をチェックするとともに、必要があれば、運営会社に対し、業務改善等の指示を行う。


水道料金:現在の料金水準をそのまま、上限として条例で定める。運営会社は、自らの裁量だけで値上げをすることはできない。
市との協議や常設する外部有識者機関の意見具申等を踏まえるとともに、最終的には、議会の議決を要する。


平常時は運営会社が責任を負うが、地震等の大規模災害により、国庫補助の対象となるような水道施設の損壊が生じた場合には、市は水道施設の所有者として、主体的に施設の復旧等、必要な措置を講ずることとしているなど、今回の経営形態見直しプランにおいては、水道事業の持つ極めて高い公共性に鑑み、市の果たすべき役割、責任等についても、詳細に定めている。


杉山:事業の公共性を確保するという点では、すでに十分留意したプランになっている。



【海外事例について】

杉山:これまで、フランスやドイツ、イギリスでの、特に失敗事例といわれるものを具体的に取り上げてきた。

今回、局として、改めて、海外事例について詳細な検証を進めた、その検証結果について、現在の市の経営形態見直しプランとの比較等も含めて、局の見解は?


局:昨年8月の内閣府の調査を参考に、当局としても独自に、外部専門家への調査委託も行い、主に、フランスのパリ市やドイツのベルリン市、イングランド ウェールズ地方の事例について、詳細に検証。

パリ市・ベルリン市は「再公営化」と言われる事例。

両市に共通する背景に水道料金の上昇への市民の不満。

加えてパリ市は事業会社への管理監督業務を、事業会社にも出資している民間事業者に委譲。
監督する側・される側が利益相反の関係に。

ベルリン市は、市と民間事業者の間で非公開の協定が締結、民間事業者に高い利益率を保証していたことなど。

イングランド事例。
事業の公共性を確保するため、国により事業会社に対する管理・監督を行う組織が設置(オフワット)、料金の規制や経営モニタリングを実施。

市のプランでは、運営会社による事業運営について、客観性、透明性の確保に努める。


杉山:つまり、パリ市・ベルリン市の失敗した理由を研究し、そうならないように、また、イギリスのオフワットもうまくいっているいい事例として、取り入れればいい。

現行プランは、日本で先行事例のない初めてのケース。

国の成長戦略に、大阪市は名指しされており、国との協議・調整も完了。税負担の軽減要望も前向きな回答を得ている。

実際、厚労省の担当に「大阪市が汗をかけることはまだ何か残っているのか?水道局ができることはまだあるのか」と聞いたら、大阪市はよく勉強している。他検討中の自治体と比較しても進んでおり、大阪市のできることはない、と褒められた。

つまり、後は議会で懸念事項を詰めることしか残されていない。
現行プランは、クリアすべき点はすべてクリアされていると理解している。局の見解は?


局:現行プランは先行事例がなく、懸念等、関係省庁と一つ一つクリアにしてきた。

例えば、災害復旧時の国庫補助については、公営と同様にその対象となる
法人税等の新たな負担の軽減措置を要望し、日本再興戦略の中で「交付金や補助金による措置等によって、新たな負担感を最大限なくす仕組みの導入を検討する」と前向きかつ具体的に明記された。

これまでの市会での議論等を踏まえ、運営会社の人材確保に資するため、事業期間の延長も可能など修正をしてきた。
局として、考えられる課題解消に向け、最大限務めている。

杉山:本当に水道局は頑張ってくれている。

水道料金が減少し続ける厳しい経営環境の中、市民の大切なライフラインである水道を、将来にわたり持続・安定させていくためには、水道事業において特に留意すべき「公共性」は損なうことなく、さらなる運営基盤の強化、効率化を図ることが不可欠。

運営権制度を活用した経営形態の見直しは、これらの課題をクリアする極めて有効な手法であり、わが会派としては、以前から申し上げているとおり、市民メリットの実現を図るため、できるだけ早期に、議会での賛同を。

<ここまで>



(コメント)

▽「懸念に及ばないと確認できた」と 冒頭、 杉山市議は言われました。
しかし、これまでの市議会での議論や公開されている資料を、いくら見ても懸念は募るばかりです。

▽例えば、市に設置する「モニタリング部署」。
現場をなくした職員が、どうやってモニタリングするのか?
そもそも、大阪市が作るという運営会社への要求水準自体、いつまで作成できるのか?非常に疑問です。


▽「事業の公共性を確保」
十分に留意されたといいますが、民間マインドを持つ=ビジネスの論理で動く、ということ。

公共性と利益が同じ方向であればいいのですが、常にそうではありません。
公営企業であれば、水道で得た利益はすべて水道のために使われますが、民間会社になれば、株主 配当・ 利益の確保が必要になります。


例えば「節水」
限りある水資源のため、「節水シール」で市民に節水を促す場面はよく見られます。しかし、民間会社からすれば、売り上げが下がること。

例えば「漏水への対応」
漏水は貴重な水資源であり市民生活にも影響するため、 さまざまな調査や工事を、かなりのコストをかけて行っています。

「漏水対策に使うコスト」と「漏水で失う利益」のどちらが大きいのか?
「未然の漏水対応するより、事故が起こってから対応する方が安いのでは?」といった、 そろばんをはじくことになるのではないでしょうか。




▽水道料金の本当の問題。「将来、値上げを断れるのか?」

民間委託会社に対し「そんなんまだいらん」「高すぎる」と、コストダウンさせるのはよくあること。
それができるのは現場を知ればこそ、ですが、現場を知る大阪市の職員は、民営化すれば将来いなくなります。

現場を持たない大阪市が、運営会社からの値上げ要求を本当に断れるのか?断る根拠を持てるのか?

海外事例でも民営化後、水道料金が高騰するケースは多く、公営の今よりも料金が高騰するのではないかと心配です。


※参考:水道民営化で、逆に「水道料金があがる」不安
https://www.facebook.com/amnetosaka/photos/a.355876991117947.76346.355377027834610/1087767437928895/?type=3&theater




▽海外での失敗した理由を研究し、対応しているから大丈夫?

現行プランは、日本で先行事例のない初めてのケースです。
しかし海外では似たような事例が数多く存在します。

海外では失敗ばかりでも、大阪市だけは成功する…?

民営化し、ビジネスマインドを持つことが、水道に適しているのか?
公共性と利益の相矛盾するものを、本当に将来にわたって、公共性が担保できるのか?

しかも、公共性を担保する主体の大阪市が、都構想で、なくなるかもしれないのに…?


▽税負担の軽減措置

今回、上下分離方式で、大阪市が資産を持つことで固定資産税は不要ですが、民営化すると、当然、法人税がかかります。

現在、大阪市は政府に対し、法人税の免除を要請しており、
「交付金や補助金による措置等によって、新たな負担感を最大限なくす仕組みの導入を検討する、と前向きかつ具体的に明記された。」
とあります。

しかし、民営化された日本郵政は法人税を支払っています

税の公平性の観点からも、「未来永劫、水道の運営会社だけ、交付金や補助金などの措置を受ける」ことが、本当に可能なのでしょうか?

公営企業であれば不要の法人税は、国・大阪府など、多くが大阪市外に流出することになります。



▽水道料金の改定は?

杉山市議自身が
水道料金が減少し続ける厳しい経営環境の中…」と言われています。

言われる通り、今後の人口減少や節水を考慮すれば、水道料金収入は、このままだと下がると予想されます。

一方、通常の民間会社であれば、まずは「売り上げの増加」を考えますが、「民営化でコストダウン」ばかりが議論の中心となるのは、なぜなのでしょうか?

実は、大阪市の水道料金設定は、98%の世帯が、「水の原価」より安く、水を買っています。

大阪市はすでに大都市で一番水道料金が安く、大阪府内でも一番安い基準。
他都市では値上げする自治体もでていますが、大阪市では、20年間値上げされていません。


--水道を民営化せねばならないほど、経営環境が悪化する…。

そうであれば、将来世代のためにも、これほど安い、原価割れの水道料金システムを続けてもいいのか。

料金値上げありきではなく、今の課題・懸念を解決するにはどのような形が最適なのか。


議案提出以降、維新の市議は
「極めて有効な手法」「市民メリットの実現を図るため早期実現を」
と言いますが、本当に、それ以外の手法、それぞれのメリットデメリットをきちんと検証したのか、非常に疑問です。
(ちなみに、料金改定した場合の、収支シミュレーションはされていません。)


※参考:大阪市水道民営化すれば、「市民負担が軽くなる?」
https://www.facebook.com/amnetosaka/photos/a.355876991117947.76346.355377027834610/1084644201574552/?type=3&theater



▽そもそも、競争原理や、経営の自由度を高めることが民営化のメリットのはずです。
しかし地域独占の水道は、競争がありません。
公共性の高い、命の水を維持しようとすると、どうしても自由度が低くなります。

大阪市水道局の説明は非常に分かりやすく、頑張っていることは確かです。

しかし、これほどの公共性を、民間企業に求めることが、そもそも困難なのではないでしょうか?



※参考@
・水道局独自の調査は公開されていない模様(2017年3月16日現在)。
・内閣府資料
「フランス・英国の水道分野における官民連携制度と事例の最新動向につい 2016年8月」
http://www8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/houkoku/report/pdf/h28kaigai_suidou.pdf


<この質疑の動画はこちらから>
http://www.gikai-web.jp/moviefile/w_h29/20170313kousu2.html
posted by AMnet at 20:53 | TrackBack(0) | 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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