2017年03月23日

【大阪市水道民営化・市会での議論C】「水道事業の経営形態見直しについて〜収支シミュレーションは信頼できるのか?いびつな案になっていないか〜

【大阪市水道民営化・市会での議論】
@「水道法改正での制度」と「現行プラン」と、どう違うのか?
http://am-net.seesaa.net/article/447934673.html

A「これまでの水道統合協議は、どのような経過で進んできたのか?維新へのブーメラン」
http://am-net.seesaa.net/article/448019152.html

B「水道事業の経営形態見直しについて〜水道民営化を推進する唯一の会派、維新の質疑から」
http://am-net.seesaa.net/article/448069081.html



今回の報告はC「水道事業の経営形態見直しについて〜収支シミュレーションは信頼できるのか?いびつな案になっていないか〜です。

経営形態見直しについて、以下2人の市議が質疑されました。

杉山幹人委員(東淀川区選出:維新 副委員長)
武 直樹委員(生野区選出:OSAKAいくの 会派代表者)

賛成の維新の杉山市議質疑(報告B)の次は、武議員を見ていきます。

主な主張は
1、料金値上げを回避するための経営形態変更というが、収支シミュレーションでみても数年しか変わらない。

2、そもそも収支シミュレーションの算定条件、30年間もの長期間の予想を信頼できるのか?

3、公共性を求めるあまり、経営自由度がなくがんじがらめ。民営化のメリットが失われ、いびつな形に。

4、「経営形態変更」することが目的へと、問題が矮小化している。



<以下、市会での議論の概要>
C「水道事業の経営形態見直しについて
〜収支シミュレーションは信頼できるのか?いびつな案になっていないか〜

【収支シミュレーションは信頼できるのか】


武:経営形態変更の質疑への応対のために、これまで膨大な手間とコストがかかっており、そろそろ結論を出すべきだ。

経営形態の見直しの必要性は
「給水収益の減少が続くが、災害対策などコストは増大する見込み。経営の効率性・生産性を向上させ、料金値上げを回避する」
とある。

しかし、経営形態を変更しても、トレンドは同じ。30年間の収支シミュレーション期間直後の平成60年以降赤字となるのでは?
結局、料金改定の時期が延びるだけで、避けられないのでは?


局:運営権の活用により、相当期間、料金値上げを回避できることは大きな意義がある。



武:とにかく市民にとっては「数年でも黒字期間がのびればよい」ということか。
運営会社に変えれば、今後もずっと黒字が続くというのであれば考慮に値するが、数年しかない。

収支シミュレーションを見れば、この先赤字になることが明らか。
赤字転落直前で、シミュレーション期間がうまいこと切れている。これはたまたまなのか?作為的なのか?

そもそも収支シミュレーションはあっているのか?
例えば、収支シミュレーションの算定条件は平成27年度の黒字77億円だが、実際の決算は145億円と2倍近く違っている。
この数字で算定し直せば、赤字転落時期はさらに先に延びるのでは?
大阪市の予算でも毎年10年の粗い試算がされているが、毎年かなり変わっている。本当に信頼できるのか?

局:専門家のアドバイスの元、収益・費用も極力盛り込んでいる。ただし30年間の長期のため、経営環境の変化によって変わる。

しかし、運営会社の収支は、民間的経営手法の導入により、コスト削減効果が発生するため、公営企業との比較でいえば収支上もコストメリットの差が継続的に続く。

武:30年先までは、やはりわからない。
それなのに、「30年先に赤字にあるから今決めろ」と。それほどメリットがないのに、なぜ急ぐ必要があるのか。



【管路更新のペースアップは実現できるか】

武:更新が必要な管路がたくさん残っている。
平成27年度末での管路耐震化率は26.2%、現行プラン案では、30年後約2200`を更新し70%を目指すとある。

平成24年度までは年間55q、近年は年間70qのペースを、運営形態の変更で年間80qにするとあるが、どんな手法なのか。

局:民間手法の活用により「工期の短縮」と「工事費用の削減」で、管路耐震化ペースアップを実現する見込み。


「工期短縮」…請負者トン協力体制の構築、長期契約に基づく指示書方式を採用。工事発注の弾力化・手続きの効率化により短縮。加えて、単価契約方式を採用。設計・積算業務の効率化を図る。

「工事費用の削減」…小規模工事のまとめ発注や、柔軟な価格交渉が可能な比較見積もり方式の導入による競争性の促進


武:その手法は、公営企業のままでもできるのではないか?経営形態を変更する決断の根拠は、これでできるのか?

公営・運営会社ともに、管路耐震化は80`でシミュレーションされているが、現状、公営企業は70`。
70`で算定すると黒字期間が伸びるのでは?


局:公営企業では70`が上限だが、運営会社では80`できると考える。
シミュレーションは、比較のため、同条件で算定している。70`で計算すると赤字転落は5年程度先送り予想。耐震化は約300`遅れる。


武:シミュレーション、5年先送りだと平成58年、運営会社だと60年くらいと2年しか変わらない。

複雑なスキームを作っても、この程度のメリットしかない。


【まとめ】

武:「公共性の担保」を目指せば目指すほど、株式会社化することでの経営メリットを失っている。
目的が、「経営形態を変更する」ことに矮小化されている。


常に大阪市の管理下にあり、料金改定の権限すらない会社に経営努力が生まれるのか?こんな自由度のない案でいいのか?
こんな自由度のない会社に転籍し、公務員の身分を失う職員のモチベーションは上がるのか?何を糧にがんばれるのか?


公共性を目指せば目指すほど、重要視されるあまり、経営の自由度が極端に制限されたいびつなものになっているうえに、「えいや」といけるものすごいメリットもない。

だから結論も出ない。しかし、大阪市水道局は、このままの公営企業のままでいいと思っておらず、むしろ公営企業のままでは未来はないのかと考える。

公共性と自由度のバランスのとれた経営形態の見直しは必要だが、今回の案には賛成できない。


(コメント)
水道事業に「公共性の担保」が特に重要であることは、どの会派も異論がありません。

しかし、武議員指摘の通り、
「公共性を目指せば目指すほど、重要視されるあまり、経営の自由度が極端に制限されたいびつなものになっているうえに、「えいや」といけるものすごいメリットもない」
に尽きると思います。


そもそも「公共性の担保」と「経営の自由度」は両立できるのか。

相反するからこそ、維新の杉山議員の言われる通り
「これ以上、水道局が汗をかけるところがない」
にも関わらず、メリットがない案にしかならない。

メリットがないのに、経営形態を変更する意味がどこにあるのか?


水使用量の減少による収入減の一方、水道管更新など老朽化でのコスト問題は、全国共通です。

数十年後の将来、経営が厳しくなることは、まず間違いありませんが、民営化は
「自力で水道事業をやることを行政があきらめる」ことであり、行政の責務を放棄することだと言えます。

水がなくては生きていけません。
将来、公営・民間関わらず、経営が苦しくなると予想するのであればこそ、行政が責任もってやるべきではないでしょうか。



※武議員配布資料

@大阪市水道局作成の経営収支シミュレーション及び算定条件
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/pdf/20170313take1.pdf

A「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」 全国事業体ごとの推計結果」より大阪市ページを抜粋
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/pdf/20170313take3.pdf
posted by AMnet at 13:56 | TrackBack(0) | 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/448297791
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック