祝!大阪市水道民営化プラン廃案!が、しかし…
大阪市水道民営化プランをめぐる状況
2016年2月、大阪市の水道民営化にかかる条例が再提案されました。同年9月、通ってもいない水道民営化後の運営会社事務所の敷金や工事等への補正予算案(2年間で1億9000万円)が提出されるも非難が続出し、11月吉村市長は異例の議案撤回。混とんとしましたが、2017年3月議会にて、この水道民営化プランは、廃案となりました。
しかし、市会終了後、吉村市長は「改正水道法に基づく民営化」を検討しつつ、府域ワン水道を目指すと表明。近い将来、また新たなプランが出される見込みです。
報道によると、民営化と並行して卸売りだけでなく「末端給水までを企業団が担当、大阪府内の水道事業を一つに統合」「大阪市を除く府内42市町村でつくる、大阪広域水道企業団にルール変更も求め大阪市が加盟する」ことを検討するとし、現竹山企業長を口だけの統合と批判、水道統合を堺市長選挙の争点にする考えです。
しかし、そもそも「大阪府内を一つに統合」「大阪市を企業団に加盟」といった内容は、橋下氏ができなかったこと。状況も全く違う事業体を一つにするのは至難の業です。各自治体が熟考すべき問題であり、竹山堺市長の責任を問うたり、争点化すること自体が的外れです。
また、「水道法改正」が閣議決定され、今国会で可決されようとしています。改正の趣旨は水需要の減少、施設の老朽化、技術者不足等の課題に対応し「水道の基盤強化」を図るためとしていますが、@都道府県が主体となり広域連携の推進、A適切な資産管理の推進に加え、B官民連携(PPP)の推進も含まれており、水道民営化を促す内容であることに、多くの懸念と批判を受けています。
都道府県単位で進められる広域化
水源・距離・施設等々全く条件の違う自治体を、とにかく一緒にすればうまくいくのか?
広域化のメリットが出る地域は、あるでしょう。しかし適正な単位は、都道府県でしょうか?
今なら一つ一つの地方議会で議論する素地が残る水道民営化も、この情勢下、広域化で技術を失う自治体が多数になれば、将来、一気に民営化が進む懸念も捨てきれません。
スケールメリット、給水人口の密度、配水管、事務経費…。それぞれの効果額は?
「広域化すれば、必ず効率がよくなる」わけではありません。まずは、広域化で生まれるメリットに対する分析が必要です。
大阪市水道局の技術は、今後も不滅か?
大阪市会では「大阪市水道局の技術力はすばらしい」「大規模事業体として大阪市の技術力で、近畿のみならず西日本の、特に中小事業体への技術協力は責務」「大阪市にもメリットがある」「そのために研修センターの稼働を高めよう」等、市長はじめ会派問わず共通の認識です。
ピーク時3,000人いた水道局職員は、昨年1,600人、今年は1,500人まで落ち込み、将来1,000人体制を目指す、としています。
しかし、これだけ人を減らして、現場経験を積めるのか?現場経験のないまま、他都市への技術協力や研修は、どこまで可能なのか?
大阪市自身の技術力は、本当に維持できるのか?また、現状のまま民間委託を進めると、現場力を失う懸念、契約にかかる事務コストの増大にもつながり、効率が良いのか大きな疑問です。
水道料金の改定を実施する他都市も増える中、民営化ありきの大阪市水道局は、料金値上げの収支シミュレーションすら出していません。これまでのやり方・市長の提案する方向性で「今後も大阪市水道局に、その技術力を残せるのか?」市民にとってよりよい水道を目指すための、冷静な議論が必要です。■
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