2018年05月22日

北海道通信〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11 (食の「安全・安心」編)

AMネット会報LIMより転載

北海道通信 〜この先の『食と農と環境』の取り組みへvol.11
食の「安全・安心」編

白川 博

○ 【遺伝子組み換え「てん菜」(GMてん菜)】について


 平成29年3月に、日本農学アカデミーは、「遺伝子組み換え作物(GM作物)の実証栽培に関する提言」を公表しました。

その内容は、日本で頻発する自然災害などの様々な農業環境の変化に対応するため、海外の遺伝子組み換え作物の利点を生かした「実証栽培」を全国各地で行うことなどを提言するものでした。

 その中で、北海道を中心に栽培される寒冷地作物「てん菜」についても除草剤耐性のある『遺伝子組み換えてん菜(GMてん菜)』の栽培試験を行うよう、国と道庁に求める提言が含まれており、内外関係者に大きな波紋を及ぼしました。


 これまでも、遺伝子組み換え作物(GM作物)の安全性や一般作物との交雑問題は、全国的な問題として取り上げられてきました。

しかし、対象となっていた作物は、「稲・麦・大豆」などで、砂糖や甘味原料の加工用途が中心の「てん菜」には遺伝子組み換えの商業メリットがないとされてきました。そのため、上記の提言により生産者はもとより、糖業者(北海道には、系統・商系含め8工場が点在)にもGMてん菜原料の受け入れ拒否などの動きが生まれました。



○ 【農薬・グリホサート剤】の残留基準問題について

 北海道が主産地形成を担う「てん菜」は、栽培特性上、春先の種まきから晩秋の取り入れまでの生育期間が長く、草取りなどの過重労働が兼ねてより課題となっています。

 ここに、前述の遺伝子組み換え「てん菜」ならば、「ラウンドアップ」に代表されるグリホサート剤への耐性があるとの提言内容が出たことの意味を考える必要があります。

農薬・グリホサート剤とは、商品名「ラウンドアップ」・「タッチダウン」などに代表される除草剤で、欧米ではすでに環境保全や発がん性の影響などから使用禁止されている農薬です。

平成29年3月下旬に、厚労省の「薬事・食品衛生審議会」において、農薬・グリホサート剤などの残留基準値が大幅改正されました。これは、食品安全委員会が査定する「食品健康影響評価」の結果を踏まえ、国際基準(コーデックス規格)に合わせたものとされます。

同剤の残留基準値が緩和された原料作物は、小麦などの穀類、小豆などの豆類、そして、問題となる「てん菜」でした。

 一方、同提言に対しては、農業団体はもとより、糖業者など関係団体も強く反発しています。食の「安全・安心」が担保できないことも大きな要因ですが、てん菜の過重労働は、草取りなどの「管理作業」だけが課題なのではなく、生育ステージ総体の問題であるからです。


○ 当面する対策運動と消費者理解の醸成などについて

 このような課題に対し、北海道庁では平成17年3月に、通称『北海道GM基本条例』を公布しました。同条例により、北海道では遺伝子組み換え作物を栽培する場合には知事の「認可」が必要となっています。

 この法的根拠に基づき、JAグループ北海道は、今年3月に、改めて『食の安全・安心宣言』を行い、農畜産物の安定供給を目的に、遺伝子組み換え作物の「栽培・集荷・販売」を行わないことを徹底し、交雑汚染のリスクに対しても、万全の対応を行う予定ということです。

 他方、消費者庁の有識者会議も1月31日に会合を開き、食品表示における「GM混入率5%以下」より、混入率がほぼ「ゼロ」となる検出限界値まで引き下げる方針を発表しました。

これまでも、5%までは遺伝子組み換えが事実上、容認されていたことから、消費者が誤解を招くことなどを求めていたことに応えたもので、今年度中に新表示基準を盛り込んだ「報告書案」が政府に提出される見通しです。

『北海道発信』においても、遺伝子組み換え「てん菜」栽培を北海道の一部の生産者が望んでいる実態を地域住民に話題提供しながら、遺伝子組み換え作物がもたらす、様々な脅威やリスクなどを共有し、食の「安全・安心」をしっかりとお伝えしていきたいと思います。■


posted by AMnet at 20:19| 北海道通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする