今回、水道法改正を受けて、
次は「管路耐震化事業」の民営化に向けた、
しかし、民営化で、管路耐震化の遅れは、解決できません。
そもそも管路耐震化で一番遅れている原因は、現場の「施工」。
「図面がない」「図面通りに布設されていない」
などの課題があるからこそ、工事が進んでいないと考えられます。
民営化で
<以下、陳情および、対象の資料画像を貼り付けました>
大阪市会議長 様
「改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」に関する陳情書
【陳情趣旨】
これまでに発表された「改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」(以下「素案」という)について、以下の通り陳情いたします。
1、PFI手法導入によるシミュレーション結果(素案:第2章2-6-1、2-6-3)では、
「設計業務」で完成図書管理、「施工業務」で許可手続のみが、直営業務となっています。
しかし、水道局がほとんど工事に関与していない状態で、工事の適正な管理ができるのか疑問です。
また民間事業者が設計し、内容を知らない工事の認可手続きができるのでしょうか。
2、リスク分担(素案:第3章3-4)での、
「管路更新事業にかかるリスク」の「大阪市に起因する場合」とは何を意味するのでしょうか。
その増額分は、PFI事業導入効果額に含まれているのでしょうか。
大阪市の配水管は古く、図面に記載のない埋設管が多く存在すると考えられます。
これは契約時に想定できない事由として、大阪市がすべて負担することになり、大阪市の事業費が膨らむ結果となるのではないでしょうか。
「経営上のリスク」での「民間事業者の経営努力でカバーできる範囲」は、どのように見極めるのでしょうか。
海外では運営会社のグループ会社に利益を移し、運営会社の利益を過小報告される事例も発生しています。
(パリ市では7%の利益率と報告されていましたが、再公営化後の調査で、実際には利益率が15〜20%であったと発覚しました)
また災害発生時、事業者も同様に被災している中で、復旧に当たる人材を確保できるでしょうか。
万が一、民間事業者の人材確保ができない場合、どのように対応するのでしょうか。
3、水道料金の仕組み(素案:第3章3-5-1、3-5-2)の中で、
「水道料金は大阪市が条例で定め、見直す場合、条例改正(市会の議決)が必要」とあります。
しかし、事業者へ支払う「水道料金の按分率」の当初設定値(上下限含む)も、
誰が決定権を持つのかも、明示されていません。
按分率は、水道料金に大きく影響すると考えますが、そこに議会の関与はあるのでしょうか。
職員のノウハウも喪失し、議会の関与が少ないとなれば、
実質的に民間事業者主導で按分率が決定されるのではないかと大いに懸念します。
また「定期レビューを実施し、按分率を見直す」とありますが、
契約時に支払総額が未定、その後の変更過程も不明確というのは公営企業の契約として、極めて不適切です。
さらに「資材価格高騰のリスクを水道局が負う」となれば、
調達費用軽減の経営努力が果たされるのか不安が生じます。
「事業者側で制御しえないリスクに対し、按分率を引き上げる」としていますが、
事業者側で制御できないのか、経営努力不足なのか、どのように見極めるのでしょうか。
4、基本スキーム(素案:第3章3-6-1)での、
「計画」「設計」「施工」のうち、耐震化工事が最も進まない工程は、
現場である「施工」と推測されますが、PFIで解決できるのか疑問です。
それぞれの工程で、どのような割合で積み残しているのでしょうか。
水道施設の台帳を整備している水道事業者は、全国でも61%(厚労省2016年)しかありません。
大阪市に歴史があるからこそ他都市と比較しても、図面がない、または、図面通りに布設されておらず、施工が遅れる可能性も容易に推察できます。
大阪市は、繁華街や狭小道路など布設困難な場所が多く、市民生活に影響を及ぼさず地元調整を進めるにも、民間事業者で進捗率を上げることは、より困難ではないでしょうか。
また、全長約5100qのうちの1800qを15年間で布設するとありますが、布設しやすい現場はどれほど残っているでしょうか。
これら課題に対し、民間事業者による「マンパワー」や「まとめ発注」が解決策となるかが疑問です。
5、モニタリングの仕組み(素案:第3章3-6-2、3-6-3)には、
「豊富な経験・ノウハウを有することが必須条件」とあります。
しかし、そのための具体的施策「新設布設工事」よりも、更新事業がノウハウを要することは明らかです。
2019年12月に報道発表された大阪市上下水道工事に伴う「不適正施工問題」では、
「施工管理に関する知識や、点検事項に関しての十分な知見が備わっていない水道局職員がいること」
「組織的な能力不足を恒常化させていた」
と、「第3者委員会」から指摘されています。
現在、そして15年後の水道局に計画・設計・施工の全てをモニタリングできる職員はいるのでしょうか。
二重の監視体制として、大阪市のチェック体制に加えて、民間事業者によるセルフモニタリングを実施とありますが、
民間事業者は技術や経験をどのようにして身につけるのでしょうか。
この二重監視体制は、第3者委員会の意見と整合性がとれているのでしょうか。
6、素案(第3章3-7)において、『大阪市中小企業振興基本条例』を明記し、
市内中小企業者の受注機会増大や連携・協力に努めるよう要請を行う」旨の記述があります。
しかし、努力義務に過ぎず、この枠組みではグループ企業内だけで受発注することが可能です。
シミュレーション比較(素案:第2章2-6-2)では、
まとめ発注の効果が「包括委託は限定的、PFIは最大限に発揮」としています。
しかし、地元中小企業者の受注機会増大を行えば、他社への発注から竣工検査までに時間を要し、PFIでもまとめ発注の効果が限定的となるのではないでしょうか。
逆に言えば、シミュレーション比較では「PFIでの地元中小企業者の受注機会増大を見越していない」ことになります。
7、PFI事業モニタリング統括部署の設置(素案:第4章4-6-2)で
施工モニタリングの強化が本当にできるのでしょうか。
「工事業者の作業状況写真を元に日々の進捗を監視及び電話等で迅速に指示し、抜き打ち巡視で施工レベルを維持できる」
としています。
しかし、事務所にいながら、線ではなく点の報告で、監督員の判断材料となりえるか。
的確な指示ができるのか。
「不適正施工問題」においても
「施工写真」での埋め戻し材料の不備を見抜けなかったにもかかわらず、
写真により的確な指示ができるとする、根拠を具体的に示すべきです。
8、素案(第5章5-1-2)において「広域的な復旧支援体制」では
「実施契約により市内早期復旧や他都市被災時の復旧支援等の役割が明記」とあります。
しかし、この素案では、実施契約の内容および、なぜ体制強化になるかが示されておらず、開示が必要と考えます。
9、「府域一水道」は議会の関与がないまま議論が進んでいることに、大きな疑念を抱いています。
府域一水道に大阪市民は、どういったメリットがあるのでしょうか。
2013年5月市会で否決された「大阪広域水道企業団との統合」との違いを明らかにするとともに、
府域一水道での市議会の関与をどのようにしていくかが問われています。
また、PFI管路更新事業により生み出された「水道局職員の再配置」を
「広域連携体制の拡充」に充てるとあります。
しかし、水道局職員数の急激な減少(H20年決算1929人→H30年決算1317人:32%減)により、
現場力や技術力が低下しているからこそ、
第3者委員会に能力不足を指摘されたのではないでしょうか。
まずは水道局自身をしっかり立て直すために、人員を再配置することが必要です。
【陳情項目】
1.「改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」の審議は、本素案が採択され実行された場合に生じる広範且つ長期的な影響を市議会として十分に考慮の上、長い目での大阪市民の利益を踏まえ慎重に議論を進めること。
2.本素案および広域化の議論についても、議会の関与の担保を図ること。
水は生活のもっとも基本的かつ不可欠なインフラであり、水へのアクセス(安全で安価にいつでもだれでも利用できること)は大阪市民の生活にとって欠かせないものです。十分な情報公開のうえ議会での慎重な議論を進めます。
以 上
2020年2月1日
【陳情代表者】
大阪の水道を考える市民の会
構成団体:NPO法人AMネット、大阪を知り・考える会、近畿水問題合同研究会、
しみんマニフェスト大阪UP 他
【賛同人】
仲上健一(近畿水問題合同研究会 理事長)
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