水道民営化はどうなっているか、そして大阪市の水道は大阪都構想でどうなるか?
全国の水道があぶないといわれる中、水道を民営化(PFI/コンセッション)すれば問題解決されるかのように言われてきました。
そんな中、大阪では大阪都構想の住民投票が近づいています。都構想で大阪市がなくなれば、大阪市の水道事業はまるごと「大阪府に移管」されるため、大阪の水道事情は一気に変わります。
■全国の水道民営化。今、どうなっているか
2018年8月のPFI法改正、2019年10月の水道法改正により、「水道事業全体」の民営化が進められる一方、「切り売りの民営化」も進められています。
内閣府PPP/PFI推進室は、2017年「コンセッション導入に向けた働きかけ(トップセールス)リスト」が発表され、全国19事業体が対象となっていました。
しかし現在、「水道事業全体の民営化」は、議会で否決、または民営化の条例提出までたどり着けないケースが多くあります。
現在、民営化が実際に進んでいるのは宮城県と大阪市のみであり、全体としてさほど進んでいるとは言えなません。
つまり、水道民営化したほうが良い、と判断した自治体はごく「少数派」ということです。
宮城県は、宮城県の上水道・下水道・工業用水のすべてまとめて一括で民営化が現在進行形です。
※宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)。
浜松市は下水道民営化後、水道事業(上水)民営化が進んでいましたが、市民の反対が大きく浜松市長選以降、保留となっています。
ただし、民営化の重点分野として、「水道」「下水道」は今も設定されています。
「水道事業全体」の民営化がだめとなれば、大阪市のように「切り売りの民営化」が今後一層進むのではないでしょうか。
水道職員の技術継承が大きな課題と言われています。
公務員減らしが進み、民営化までいかずともすでに、どの自治体も民間委託が進んでいることが大きな原因です。
民間に依存すればするほど、現場を失い技術継承が困難となります。
チェック機能も働かなくなり、企業の言いなりになるしかありません。
その中でも、民営化は契約年数も長く、課題解決から遠のくことは海外事例からも明らかです。
■大阪市の水道の今
大阪府と大阪市の水道は、長年いずれも水余り状態でした。
橋下知事以降、二重行政の象徴とされ、さまざまな議論を経たのち、2017年、水道事業(上水道)全体の民営化が廃案となったことで、水道事業全体の民営化はストップしました。
(維新:賛成、自民:継続審議、公明・共産:反対。いずれも過半数なく、審議未了のまま廃案)
しかし「水道事業全体」の民営化をストップしたにもかかわらず、その後、大阪市で進んでいるのは水道事業の「切り売りの民営化」です。
2020年2・3月市議会において、大阪市の「管路更新事業」「工業用水」の民営化が議会で可決しました。
(いずれも賛成は維新・公明、反対は自民・共産・市民第一)
下水道はすでに、大阪市の職員を転籍させクリアウォーター鰍ェ設立され、包括委託されています。
最終的に「公共施設等運営権制度(混合型)の導入をめざす」とあり、将来的には民営化(コンセッション)の方針です。
■水道民営化?大阪市の水道の将来を「決めるのは大阪府」
大阪都構想は、「大阪市を廃止し、4つの基礎自治体として特別区を作る」というものです。
大阪市が一括で実施してきた事業は、「大阪府」「特別区」と、4つの特別区が共同で設置・運営する「一部事務組合」に仕事が分かれます。
水道・下水道は共に、「大阪府」に移管されることとなっています。
大阪府が事業継続するため、大阪市水道局(下水道も)の資産すべてと職員は、大阪府に移管されます。
しかし決まっているのは、ここまでです。
水道料金をどうするか、水道を民営化するのかなど、「大阪府が決める」と決まっているだけで、何も決まっていません。
大阪市民の水道にも関わらず、大阪市民が水道の将来を決められなくなるのです。
■水道料金で築いた資産が、全て大阪府のものに
大阪市水道局は約4723億円の資産を持ち、現金預金だけで約530億円にもなります。
水道料金が、全国の大都市および大阪府下でも一番安いにもかかわらず、年間の利益は年間100億円超という、安定の黒字です。
大阪都構想が成立すれば、土地・建物、現金預金や基金など、
これまで“大阪市民が払った水道料金”で作り上げた、これらすべての資産が、大阪府に移管(無償譲渡)されます。
大阪市が水ビジネスを海外で展開、などと言われたのは大阪市水道局の職員のスキルが高いからですが、
これら職員も、「大阪府にただであげる」ことになります。
■大阪市のままなら、水道料金値上げは必要ない
「将来の水道料金値上げは避けられない」。
これは、これまでの設備更新費用を先送りしたツケであり、全国的な傾向であることは間違いありません。
2040年度までに、全国の約90%の水道事業者が水道料金の値上げが必要というレポートが全国ニュースで流れました。その値上げ率は全国平均で36%、中には料金がおよそ5倍になる自治体もあります。
一方、大阪市の必要値上げ額は「0円」です。
つまり、大阪市のままであれば、当面値上げの必要はありません。※
しかし、特別区になれば水道料金があがる可能性は、非常に高くなります。
大阪市の人口は府域の3割しかなく、特別区選出の議員が一致団結しても、大阪府議会では少数派です。
大阪府議会で「料金を上げる」と決めれば上がります。
また、水道の広域化の将来像は、水道会計の一本化です。
大阪府域で1番安い、大阪市の水道料金は、「上がる」しかないのです。
■大阪市の水道の役割
大阪市の水道事業は、大阪市域をしっかりと守ることを最優先したうえで、大規模自治体として近隣自治体の支援をするべき立場です。
大阪府下にバラバラになっては、その力すら発揮できません。
大阪市の水道をなくすことは、大阪市民の水道を不安定にするだけでなく、周辺市に住む人々にとっても大きなダメージを追うものなのです。
※「人口減少時代の水道料金 全国推計 推計結果(改訂版)」
https://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2018/pdf/2018-03-29-02.pdf
文責:AMネット事務局
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