大阪市会議長 丹野 壮治様
「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)」に関する陳情書
【陳情趣旨】
損害賠償等、長期間にわたる事業契約によるリスクが不明瞭なままであり、カジノ設置に関する問題点が市民に知らされていない。
大きな財政等の影響を受けるにもかかわらず、今回の区域整備計画の議決が実質的に大阪市会の最終判断となる。
大阪IRは35年と非常に長く、さらに「事業の継続を前提として」30年間の延長を協議する、とあり、実質的に65年ものライセンスを認めている。
65年後も「延長なし」等、明記されておらず未来永劫付き合う可能性もある。
ほとんどの大阪市民は、lR事業者が撤退しない限り、35年、最大65年間の契約とは知らない。
カジノができてから市民が「辞めたい」と思っても、実質的にやめられない可能性が高い。
世論調査でも反対が多く、賛成の人もほとんど状況を知らず、加えて、将来反対するやもしれぬ世代は止められない構造になっており、まさに市民不在と言わざるを得ない。
1,「リスク分担」が明確でなく、「契約解除」の記載もない。
カジノ実施方針・募集要項のリスク分担(※末尾参考参照)では「詳細は、実施協定で示す」とあるだけで、区域整備計画にリスク分担が書かれていない。
一方、「想定されるリスク」への役割分担は記載されており、被害が出た際に、「大阪市の責任」とどこまで補償を求められるかも不明である。
このような将来リスクが不明のまま、議決すべきではない。
また、契約解除に関する記載もない。
実質的に、IR事業者はいつでも撤退可能であり、今予算で790億円予算措置したとしても、開業前の撤退も可能である。
一方、大阪府市は撤退させれば、損害賠償請求リスクが発生する。
最低でも、区域整備計画だけでなく、実施協定が確定したのち、リスクを真摯に検討し、議論を経た後とすべきである。
以下に述べる2、3、による損害賠償請求など、将来世代の多大なツケとなる可能性があると考える。
また、事業実現に向けた主な課題として「新型コロナの影響」「国の詳細制度設計(IR税制・カジノ管理規制等)」「夢洲特有の課題」とあるが、これら「解決が必要不可欠」な課題が解決できる見込みもない。
2,「IR事業用地の適正確保」によるリスク
土地所有者としてのIR事業用地の適正確保(土壌汚染対策、液状化対策、地中障害物撤去)について、引渡し前に限るのか、将来に渡るのかすら明確でない。
第5回副首都推進本部会議資料4「IR事業用地の適正確保について」には、「土地所有者として市が負担」とあり、開発により、夢洲の土地改良費がどれほど青天井になっても、大阪市の負担は将来に渡る。
たとえ契約上、法的責任はないとしても、市長が言いきり、市会で議決されば、大阪市の対応を期待してIR事業者は投資することとなる。
となると、適正確保を大阪市が実施しないとなれば、3,に指摘するリスクにも直結する。
逆に大阪市がIR事業用地の適正確保を負担したとなれば、新たに、それ以前の土地売買等の契約者との不平等も起こり、訴訟となる可能性が起こる。
つまりいずれにせよ、将来世代に訴訟のタネを残すこととなる。
3,「投資家の期待」を裏切った場合のリスク 〜ISDS条項〜
TPP等の投資協定による投資家対国家の紛争解決手続き、ISDSによるリスクを考慮されていない。
将来、カジノを止めると公約にあげての知事・市長が誕生したとしても、ISDSによって、多額の賠償請求が発生する可能性が高く、将来世代の選択を奪いかねない。
ISDSは実際の損害額だけでなく、投資家の「正当な期待」を害した、として「公正衡平待遇」義務違反が認定されれば、「儲かるはずだった利益」も、賠償することとなる。逸失利益が何十年も渡ると認定されれば、賠償額がいかほどになるか想像もできない。
「大阪IR反対に合理的な根拠がない」と認定されれば、「収用と同等の措置」と主張された場合も、損害賠償の対象となる。
【陳情項目】
1、 社会的コスト・経済損失も計算されていない。財政リスクが大阪市の負担になり、将来世代に及ぶ市民生活にも影響が非常に大きい。
大阪市民の意見を聞くべく、議員提案による条例を制定し、住民投票を実施すること。
大阪市民の意見を聞くべく、議員提案による条例を制定し、住民投票を実施すること。
2、 夢洲の土地改良費790億円について、慎重に予算審議を進めること。
陳情者
NPO法人AMネット
NPO法人AMネット
<ISDSについて参考情報>
※これまでの仲裁で投資家の多くが主張し、問題となってきたのが「公平衡平待遇」と「収用」。多くの仲裁事例で「投資家の正当な期待」を保護しなかったことをもって「公正衡平待遇」義務違反が認められてきた。投資家にとっては、投資保護協定は一種の「保険」やリスクヘッジとして位置づけられる。
※対象となる紛争は「投資家と締約国の間で生ずるあらゆる投資に関する意見の相違」と非常に範囲が広い協定が多くを占める。日本は32の投資協定と投資規律を含む16のEPA(TPP含む)が発効。(2021年2月時点)日本と投資協定が結ばれていない場合も、協定を結んでいる国に現地子・孫会社を設立し、子・孫会社を通じて投資すればその国の協定によってカバーされる。
※協定によって内容、たとえば投資財産の定義もさまざまだが、ほとんどの協定で「企業等の法人としての投資のみならず、株式・出資・その他の形態の企業の持ち分・債権・貸付金・法令や知的財産権、契約に基づく権利等」が含まれ得る。投資協定の内容は協定ごとにさまざまであり、明確な基準はない。
※ISDS仲裁手続きの多くは、3人の仲裁人による一審制。仲裁人は数十人しかおらず、国・投資家側が同じ事務所のケースも。過去判例は、双方の承認がなければ原則非公開。
※過去判例では政府が環境保全や健康被害の防止等を理由とした規制措置であっても、投資協定違反とされ、損害賠償責任が認められたケース有。
【参考】リスク分担について(実施方針35P・募集要項26P)より抜粋
第7 設置運営事業の円滑かつ確実な実施の確保に関する事項
5. リスク分担の基本的な考え方
(2) 法令等変更
a. 法令等(c.に示す特定条例変更等を除く。)の制定又は変更により設置運営事業者に増加費用又は損害が生じるときは、設置運営事業者が当該増加費用又は損害を負担するものとする。
b. 法令等の変更によって本事業の前提となる環境に重大な変化が生じていると認められるときは、大阪府と設置運営事業者は協議の上、必要な範囲で実施協定又は区域整備計画等の見直しを行うことができる。
c. 事業期間中に、本事業にのみ適用される等、設置運営事業に特別に影響等を及ぼす大阪府又は大阪市による条例等の制定又は変更(以下「特定条例変更等」という。)が行われ、設 置運営事業者に損害等が生じた場合、大阪府又は大阪市は、自らが行った特定条例変更等によって設置運営事業者に生じた損害等をそれぞれ補償する。
※要するに、「国の法令変更へのリスクは事業者が負うが、大阪府・市の方針変更は、府・市が損害賠償する」ということ。府市のみリスクを負うこととなる可能性が高い。
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