2022年03月15日

DXで便利でOK? DXで力を持つのはだれ?〜デジタル資本主義 vs デジタルコモンズ〜

デジタル化で生活は確かに便利になるかもしれない。だけど…
商品検索したら、似たほうな公告が出るだけでしょ?
いいえ、それだけではないのです。


スーパーシティ構想の区域指定地域が発表されたばかりの日本(全国28地域)。

シンポジウムに先立ち、少しでもDXがすすんだ後の社会を想像するために、
関連原稿を公開します。


AMネット会報 LIM98号(2022年3月発行)より
ー−−−−−−−

DXで便利でOK?
平賀 緑(AMネット理事)
ー−−−−−−−

You are what you eat.
あなたはあなたの食べたものでできている。

では、私たちは自分の心身を作る食べものを、どう選んでいるだろうか。
身体に良いもの、健康的なものが望ましい。でも味や予算も気になる。
食べたいものが近くに売っていないかもしれない。何を食べるか選ぶのが楽しみという人もいるけれど、毎日の献立が悩ましい人も多いらしい。

そんなとき、AI(人工知能)がビッグデータやアルゴリズムを駆使して、私の好みやニーズに適した食事をオススメしてくれたら、その食材セットやレシピをタイミング良く届けてくれたら、便利かも知れない。
ちょうど気になっていた物がタイミング良くセールされていたら買うだろう。それくらい、販売サイトのオススメ機能は精度を上げている。


Amazonに代表されるネットショップたちは、私たちの購買履歴だけでなく、サイトで見た閲覧履歴、クリック履歴、検索履歴などを蓄積したビッグデータや、ますます賢くなるAIなどを駆使して、販売方法を革新しているらしい。
膨大な人数から集めた膨大なデータを蓄積して購買パターンを分析することによって、私が「欲しい」と思う前に「あなた今これ欲しいでしょ?」とオススメしてくれることが可能らしい。

つまり、私が「お腹空いた」と感じて何食べようかと考え始める前に、絶妙なタイミングで私の好みや健康状態に最適と判断した食事を、ドローンも駆使した配送システムで届けてくれることも、すでに技術的には可能だろう。
問題は、私の心身を作る「私にとって良い食べもの」を、誰がどんな基準で決めてくれるかということだ。


「健康的な食事」は、あんがいコロコロ変わる。
例えば、私が研究対象としている油脂については、戦後すぐの飢餓状態では高栄養食品と推奨され、そのうち動物性脂肪が悪いとしてマーガリンが推奨され、そのうちトランス脂肪酸が悪いとしてバターが見直されなどなど、時代によって「良い油」は変わってきた。
また、バナナは黄色、トマトは赤色という「自然な(あるべき)」色も、企業や政治や技術などが絡み合って形成されてきた(詳しくは、久野愛『視覚化する味覚 食を彩る資本主義』岩波新書、2021年)。

技術はさらに進み、今では、味覚や聴覚も電子的な刺激で操作できるらしい。同じグラスからいろんなカクテルを飲んでいる気分になれたり、3DCG仮想空間「メタバース(metaverse)」で全身の感覚も含めた「分身」になりかわったり、できるらしい。
『マトリックス』は、技術的にはもう可能なのかもしれない。気がつけば、それくらいデジタル技術が進んでいる。

プロパガンダが生まれたという100年前から現在まで、商品開発やマーケティング戦略をふくめて、私たちの選択を導く技術やノウハウは恐ろしく素晴らしいレベルにまで極められていた。
そこにDXは私たちの五感も情報ももっていこうとしている恐れがある。

私が感じる味や色や音、良いと判断するための情報、欲しいと思う気持ちまでを他者が影響できるようになったとき、では問題は、その技術を、だれがどう使うのか。
その技術を、私たちが管理し勝手に使われることに対して歯止めをかけることができるのか。

「良い食べもの」も、人によっては、有機的に栽培された土臭い野菜を良いと考えるか、植物工場で栽培された衛生的な野菜を良いと考えるか、その判断はさまざまだし、その判断が「私」のアイデンティティーにも繋がる。
私は私が食べたものでできているなら、その決定権は私が持っていたいと思う。■





posted by AMnet at 20:27| 国家戦略特区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする