2019年02月14日

国家戦略特区で合法化する賭博〜地域の荒廃と犯罪の温床化を招くカジノ誘致の今とこれから

AMネット会報LIM90号より転載(2019年2月発行)
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国家戦略特区で合法化する賭博

地域の荒廃と犯罪の温床化を招くカジノ誘致の今とこれから

いしだ はじめ(AMネット)



過熱気味の地方自治体による誘致合戦

2018年4月の閣議決定から凄まじい速さで法案成立をしたカジノを含むIR法(特定複合観光施設区域整備法)。国家戦略特区最大規模の案件でもあり、多くの自治体が誘致合戦を繰り広げており、2025年開場予定に向け、その動きは加速しています。


現在候補地とされているのは、下図の9自治体で、中でも誘致申請を予定している大阪府、和歌山県、長崎県は、他自治体より一歩も二歩も前のめりです。

それ以外にも申請を検討している横浜市は、現内閣でも特にカジノ推進派である菅義偉官房長官のお膝元とあって有力視されています。また、北海道の高橋はるみ知事もIR誘致に積極的で、苫小牧市や釧路市では賛成意見が多数を占め、中でも苫小牧市はIR誘致に向けた施策「苫小牧国際リゾート構想」掲げ、IR構想に関する市民説明会を開催するなどしています。


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IRは、統合型リゾートの立地を目的とするもので、カジノだけでなく、MICE施設(会議場、展示場等)やショッピングモール、ホテルなど観光の振興に寄与する様々な施設が一体となっていることが条件です。そのため建設には約2年〜3年かかると予測され、2021年〜2022年頃あたりに候補地が確定する見込みと言われています。


熱の入り方が違う大阪府と松井知事

2025年の万博開催が決定した大阪では、「2024年のIR開業」を目指しており、松井知事は「2019年夏頃に事業者を決定したい」などと、国のスケジュールを無視した発言をしています。

国から正式な認定を受けたわけでもなく、またその施設内容も明確に決まったわけでもない中でのこの発言は、波紋を呼んでいます。

いま大阪府では、万博とカジノは一体となって進められています。万博によって夢洲へのアクセスなどインフラ等の基盤整備を行い、IR施設の整備を狙うこの万博が「カジノ万博」と言われるゆえんです。


 大阪府が誘致しようとしている夢洲は、大阪湾の北方に位置する埋め立てによる造成地。現在も埋め立てが進んでいる地盤としては緩い土地です。半恒久的な巨大建設物の建設に不向きなだけではなく、大阪市は、地震によって液状化する地域に指定しています。また昨年の台風では護岸が崩れるなど、大勢の観光客を集客するには大変危険な場所といえます。大阪府は、こうした施設誘致の前に、市民の安全と安心となる防災対策をするべきと考えます。


大阪の事業者選定に応募する意向を示しているメルコリゾーツ&エンターテインメント(マカオ)とウィン・リゾーツ(ラスベガス、マカオ)の二社の他にも、ギャラクシー・エンターテインメント、シーザーズ・エンターテインメント、ゲンティン・シンガポール、ラスベガス・サンズなどが大阪でのカジノ運営受託を目指しすでに府の職員と接触済み。2012年から20185月までに、11のカジノ企業の幹部が松井府知事と面会。2017年5月以降、IR関連企業の関係者は、職員と119回会っています。


この他メルコリゾーツは大阪府へ5,000万円の寄付や、天神祭の花火のスポンサー料として約9,000ドルを支払うなど関係強化を図っています。

また、鹿島建設は夢洲の統合型リゾートの開発を推進・支援を目的とする「夢洲まちづくり開発推進チーム」を関西支店に設置済み。事業者や建設会社ら周辺の動きも活発となっています。

今後の政府の日程や大阪府の予定は別表の通りですが、国の動きと連動し、各地域での誘致活動が活発化していくでしょう。


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犯罪と地域崩壊を招いている世界のカジノ事情

カジノを誘致すれば外国人観光客が増え、景気浮揚の期待が高いですが、世界的に見てカジノは斜陽化が進んでいます。よく語られるシンガポールやラスベガスの隆盛とは真逆に、業績そのものは悪化。特に犯罪の温床となっているマネーロンダリング規制が強化されたマカオでは収益が大幅に減少。規制の甘い日本でカジノを開場すれば、犯罪がらみの資金が大量に流れ込むことが予測されます。

また、統合型リゾートでは、カジノの収益によって施設内のホテルや飲食店は低価格で提供され、地元の商業施設が衰退する現象も起こっています。米国のアトランティックシティでは、観光客がIR施設に奪われることで地域経済が沈下し、地域崩壊を招いたことが実証されています。

韓国のカジノ施設のひとつ、江原ランドの入場客数は年間309万人です。江原ランドの入り口周辺は質屋が建ち並び、貴金属から自動車、不動産まで、なんでも質にとって金を貸す業者が多いとの報告もあります。このような光景が、果たして地元住民が誇れる町の姿かどうかを考えるべきです。


全国で市民が連帯するカジノ反対の動き

2018年9月に実施されたカジノ誘致に関する市民向け世論調査で賛成52.7%となった和歌山県とは対照的に、1月の読売新聞の調査では誘致「反対」55%、「賛成」33%となっている大阪は、首長らの前のめりなカジノ誘致は、反対する市民の意向とは逆行しています。


こうした市民の反対活動のつながりとして、20144月に設立された全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会があります。ギャンブル当事者やその家族のほか、弁護士、司法書士、学者、医師等の各種専門家、消費者等の相談活動の従事者など、幅広い人々が参加。各地域でカジノ設置に反対する住民団体との連携を行っています。

大阪では、カジノに反対する団体懇談会など複数の団体が立ち上がっており、それぞれの活動で協力し合っています。

先のカジノに反対する団体懇談会に参加する8団体によるカジノ反対署名活動をはじめ、201810月には、大阪カジノに反対する市民の会が「カジノ誘致計画について説明を求める要望書」を大阪府知事宛に提出し、12月に府市IR推進局との団体応接も行われました。

2019年に入って以降活動は活発化しています。「どないする大阪の未来ネット」「カジノ問題を考える大阪ネットワーク]主催の大阪市天王寺での街頭宣伝(1/14)では、現職国会、市議会議員を含む約50名が参加し、反対署名171筆が集まるなど関心の高さがうかがえました。

今後、カジノに反対する団体懇談会では、2月に府知事宛てに反対署名の提出を予定しています。

4月の統一地方選挙に向け、カジノ反対の議員を議会の多数派とし、地域の経済・くらし・文化を守るための活動が活発化していくでしょう。■


posted by AMnet at 15:36| 国家戦略特区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月12日

国家戦略特区の規制改革は誰のもの?〜国家戦略特区がはらむ問題点〜

<AMネット会報LIM84号より転載>

国家戦略特区の規制改革は誰のもの
国家戦略特区がはらむ問題点

いしだ はじめ(AMネット)

総理大臣の思惑で決定できる制度上の欠陥
2014年よりはじまった国家戦略特区。
「内閣総理大臣主導の下、強力な実行体制を構築して、大胆な規制改革と税制措置等を行う、これまでとは次元の違う特区制度の創設」を検討するとして、2014年5月9日の第1回国家戦略特区ワーキンググループ(以降WG)がスタートしました。

このWGの座長は八田 達夫氏(大阪大学社会経済研究所招聘教授、アジア成長研究所所長)ですが、八田氏はWGから上げられてきた事案について諮問する「国家戦略特区諮問会議」の有識者議員を兼務しています。

この第1回のWGの中で有識者の原 英史氏が制度設計について次のように述べています。
「構造改革特区・総合特区制度のいずれも、基本的には、『地方公共団体が提案・申請→国が認める」という枠組み』であったために、『地方のイニシアティブ』を重んじるあまり、国が受け身になって」しまいうまくいかなかった」とし、今回は『総理主導』の特区制度の提案をしています。

「総理を長とする『特区諮問会議』を設置する(特区担当大臣、民間有識者メンバーなどで構成し、議題に応じて関係大臣が出席)」と提案。その原案となっているのは、第6回「産業競争力会議」で有識者議員でもある竹中平蔵氏が示した「アベノミクス戦略特区」のイメージです。

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諮問会議で優先課題を提示
内閣府のサイトでは国家戦略特区は自治体や民間事業者からの提案をもとに、あくまでも自治体、民間事業者、国の三者が対等の立場で規制改革メニューについて協議し、区域会議、諮問会議を経て規制改革メニューに追加するプロセスを謳っています。

しかし、制度の根底にあるのは総理を長とする民間有識者議員で構成される「特区諮問会議」主導の下に規制改革メニューの骨格が規定され、その規定に沿った提案の多くが事業化されていると言えます。なぜか。それはWGの第2回会議で示された規制改革事例に現れています。


「集中ヒアリング」で取り上げる具体的な規制改革事項(案)が挙げられており、「外国人医師の国内医療解禁」、「有期労働契約期間(5年)の延長」「公設民営学校の解禁」、「農地流動化のための農業委員会の関与廃止」、「保険外併用療養の範囲拡大(評価実施体制の柔軟化等)」など、現在までに実施された規制改革の骨格ともいえる項目が組込まれているからです。

諮問会議では何度となく民間議員より優先的に取り組む課題が提示され、その意図に沿ってWGや区域会議が進められてきました。

自治体、民間事業者からの提案→各省庁を交えた区域会議で規制の解除を検討→諮問会議で事業決定のような構造にはなっていますが、WGや諮問会議で優先課題を提示→自治体、民間事業者がそれに沿った提案を行い、区域会議を経て諮問会議で決定する、という構造になっており、WGの有識者や諮問会議の民間議員と総理大臣の思惑で規制改革が進められているのが実態と言えます。 

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外国人人材活用は誰のための制度か
「外国人材の活用」は規制改革の柱の一つです。上の表は、内閣府が2017年5月に出した、規制改革事項等の活用状況のうち、外国人活用に関する事項を抜粋したものです。規制改革事項として次の3つが挙げられています。

・外国人家事支援人材の活用
・創業人材等の多様な外国人の受入れ促進
・クールジャパン外国人材の受入れ促進
しかし「クールジャパン外国人材の受入れ促進」は、提案自治体や事業者が存在しません。

「規制改革は行ったが活用する事業体が無い」外国人人材に関する規制改革に限りませんが、特にこの分野では民間議員による利益相反の疑いがあります。

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諮問会議の有識者議員の一人である竹中平蔵氏は様々な民間企業の肩書を持っています。よく知られているのは「パソナグループ取締役会長」ですが、それ以外にも「オリックス社外取締役」、「森ビルアカデミーヒルズ理事長」、「一般社団法人外国人雇用協議会顧問」をはじめ10以上を数えます。

外国人家事支援事業については、神奈川県をはじめ、東京都、大阪府、兵庫県が指定を受け3都府県で適合事業者が決まり、スタートしています。認定されたのは下記事業者で、株式会社パソナも含まれています。
・株式会社ダスキン
・株式会社パソナ
・株式会社ポピンズ
・株式会社ベアーズ
・株式会社ニチイ学館
・株式会社ピナイ・インターナショナル

外国人雇用協議会の政策提言のポイント
これ自体非常に疑わしいことですが、ことは家事支援人材に留まりません。
竹中氏が顧問を務める一般社団法人外国人雇用協議会(http://jaefn.or.jp/)は、「政府の政策・制度の改善を実現」を設立趣旨に掲げています。その政策提言のポイントは右の図2の通り。

提言概要の1番目にクールジャパンが提示され
「『クールジャパン』分野では、日本の優れた文化・技術・技能を働きながら身につけたい外国人が存在する一方で、さまざまな領域で在留資格により就労が阻まれている。」とあります。

中でも「『新・高度人材』の受入れ」の項目では「『クールジャパン』をさらに高めていくには、エンジニア、サイエンス、デザイン等、分野を問わず、文化・技術・技能を進化させていくクリエイティブな人材が不可欠であり、世界から予備軍を集めて切磋琢磨する環境を作ることが必要と、唱えています。

「海外の制度も参考にしつつ、現行の高度専門職の在留資格の拡大等により、企業等に所属しないフリーランスの高度人材(「新・高度人材」)についても、受入れを拡大すべき。」としています。

「「外国人雇用相談センター」(仮称)の設置」では、「国家戦略特区の枠組みを活用し、入管局とは別途、国・自治体・民間が一体となった相談窓口を整備し、企業や外国人が相談できるようにすることを提案する。」とあり、現実に「創業人材の受入れに係る出入国管理及び難民認定法の特例」として新潟市、愛知県、広島県、今治市で実現されています。

この団体の会員企業には、株式会社AOKIホールディングス、株式会社アルク、株式会社ニトリホールディングス、株式会社三越伊勢丹ホールディングスなど名立たる企業が名前を連ねています。

国家戦略特区における外国人人材の分野は、まさに外国人雇用協議会の提言に沿ったものであり、この団体の会員企業への利益誘導に繋がっていくことは十分に考えられます。■

posted by AMnet at 18:00| 国家戦略特区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする