2019年09月12日

G20サミットに市民社会の声は届いたのかー先進国の閣僚や首脳たちだけで、世界のルールを決めるのはおかしいー

「先進国の閣僚や首脳たちだけで、世界のルールを決めるのはおかしい」

2019年6月28・29日のG20大阪サミットに併せて、国内外、さまざまな市民社会側の取組がされました。

どういった取り組みが、どんな立場でされたのか。ぜひご覧ください!


AMネット会報LIM92号(2019年8月発行)より記事紹介


G20
サミットに市民社会の声は届いたのか
 


堀内 葵(国際協力NGOセンター アドボカシー・コーディネイター/AMネット理事)


6月29日(土)、大規模な交通規制や公立幼稚園や小中学校の臨時休業、企業活動の自粛要請など、人々の生活に大きな影響を及ぼしたG20大阪サミットは、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献などを記載した「G20大阪首脳宣言」と17に上る付属文書を採択して閉幕した。


このG20大阪サミットに向けた市民社会による活動は、おおよそ3つの「立場」で整理できる。


一つ目は、G20サミットで議論される課題に対し、市民社会の「立場」から政策提言を行うものだ。G20諸国の市民社会を中心に、「C20」という枠組みがつくられ、2013年のG20サンクトペルブルグ・サミット(ロシア)以来、議長との対話や意見交換を続けてきた。


G20議長が出席して市民社会との対話に臨む場が、G20サミットの数ヶ月前に開催される「C20サミット」だ。


過去に、ロシアのプーチン大統領、オーストラリアのアボット首相、ドイツのメルケル首相、アルゼンチンのマクリ大統領などが参加してきた。今年は、国際協力NGOセンターとSDGs市民社会ネットワークが共同事務局を務める「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」が中心となり、4月21〜23日に東京で「C20サミット」を開催し、G20議長を招待した。


しかし、直前になって外交日程と重なるとの理由で出席が叶わず、代わりに外務副大臣が出席することとなった。


C20による政策提言は、反腐敗、教育、環境、ジェンダー、国際保健、インフラ、国際財政制度、労働・ビジネスと人権、地域から世界へ(市民社会のあり方)、貿易・投資、デジタル経済という11分野からなる個別提言と、全体宣言(コミュニケ)および、「東京民主主義宣言」から成る。


G20サミットに集う各国首脳たちに対し、地球規模の課題には地球規模での解決策が必要であることや、市民民社会と多くの取り残されている人々とともに、多国間主義、民主主義、市民的権利、透明性や公開性などの共通の価値観の重要性を提言している。


政策提言書は、上記の事情により、C20サミットに先立って首相官邸を訪問したC20代表団によって、G20議長に手渡された。



<C20サミットには40ヵ国からのべ800名以上が参加した。スクリーンには、C20政策提言書をG20議長に手渡している場面が映し出されている。>



二つ目は、サミット開催地の市民社会として、地元の「立場」から様々な社会問題を考え、発信する、というものである。


これは本誌でも報告されている通り、サミットに先立つ6月25〜26日に「G20大阪市民サミット」として開催され、最終日には、地に足の着いた活動や日々の暮らしから自分たちの声を首脳会議や世界に発信することを盛り込んだ「G20大阪市民サミット全体宣言文」が採択された。


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<「G20大阪市民サミット全体宣言」が採択>


三つ目は、G20サミットそのものが金融危機や貧困、気候変動・環境破壊、戦争などを世界中にばらまいてきたとして、サミットに反対する「立場」から抗議活動を行うものだ。


G20大阪サミットの首脳会合を前に、大阪・本町から難波にかけて街頭デモが行われ、首脳会合当日には会議場であるインテックス大阪のある咲洲に近い天保山でも200名近くが集まるデモが開催された。



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<G20サミットの地元・大阪では、市民によるデモが開催された>


街頭デモでの集会アピールでは、世界中に住む多くの人々が戦争・占領、困窮と悲惨、地球温暖化と巨大化する災害、独裁政権の下での人権抑圧に苦しんでいること、世界の主要国と自称する19の国とEU、国際機関の首脳が集まるG20はグローバルな問題について解決策を考え出すとされているが、そもそも誰がG20にそのような権限を与えたのか、G20はそのような役割にふさわしい集まりなのか、と問うている。


デモを主催した「G20大阪NO!アクション・ウィーク実行委員会」は、「戦争や占領、温暖化の犠牲になる人々、新自由主義的グローバル化の中で犠牲にされ、搾取されてきた人々を排除して、むしろそのような犠牲を生み出してきた側の諸国が大半を占める会議に私たちは何も期待することはできません」と主張している。


これら3つの立場は、それぞれ立脚点が異なり、G20サミットをどのようなものとして捉えているか、また、どのような方法で働きかけをするかは異なっているものの、「市民社会」からの発信である、という点で共通している。


では、これらの「市民社会」からの声は、どの程度、G20の首脳たちに届いたのか。


一つ目の立場である「C20」は、G20の公式なエンゲージメント・グループ(参画グループ)としてG20サミットに参加しており、政府側の分野別作業部会での発表やシェルパ会合での意見表明、そしてG20議長や外務副大臣への政策提言書の手交が実現している。


これらの政策提言は、G20首脳宣言への反映を目的として行われた。6月29日に国際メディアセンターにて発表されたC20による緊急声明では、教育や国際保健、労働などの分野で一部、市民社会が提案してきた内容が盛り込まれた一方で、環境やジェンダー、インフラ、貿易・投資など、多くの分野で市民社会による提言が反映されなかった。


特に、気候変動では、アメリカ政府によるパリ協定離脱について改めて言及されるなど、市民社会が求めてきた積極的な取り組みは約束されなかった。


なお、「C20」に参加している「環境・気候・エネルギー」ワーキンググループの参加団体は、G20首脳会合の期間中、世界中で気候変動への取り組みやや石炭火力発電への支援停止を呼びかけるキャンペーンを行い、メディアから注目された。


国際メディアセンターにおけるエンゲージメント・グループの取り扱いについても触れておく必要がある。


国際メディアセンターとは、各国のメディアがサミットの取材を行う場所であり、従来のサミットではエンゲージメント・グループにもアクセスが認められ、メディア関係者や記者への個別ブリーフィングや記者会見の開催が行われてきた。メディアにとっても、サミットを多角的に報道する観点からエンゲージメント・グループの参加は歓迎されてきた。


しかし、今年のサミット議長国である日本政府は、エンゲージメント・グループの作業場所を、記者が作業するスペースから5分以上も歩かなければならない隔離された施設に設置し、エンゲージメント・グループによる自由な文書配布を認めず、スクリーンやプロジェクターなど記者会見に必要な設備も準備せず、C20関係者の服装すら制限するという前代未聞の対応を繰り返した。


服装の制限―特定の文言が記載されたTシャツの着用は、G20参加国の出身者に「不快な思いをさせるかもしれない」との理由だったが、実際の文言はいわゆるヘイトスピーチとは程遠いものであったため、C20関係者の抗議と説得により、服装の制限は撤回された。本件は意見表明の自由や報道へのアクセスへの制限が加えられようとした事例として記録し、今後、同様の事態が発生しないよう、政府側・市民社会側ともに今後の教訓とすべきである。


二つ目の立場については、採択された「G20大阪市民サミット全体宣言」を、今後、どのような場で活用し広げていくのかが、主催者である「G20大阪市民サミット実行委員会」によって検討される予定だ。



三つ目の立場については、デモ開催直後に複数の大手メディアで取り上げられ、特に海外メディアの関心が高かったことが特徴的である。


G7やG20サミットなどの国際会議においては、開催地やその周辺の人々がデモを行うことが恒例となっており、特に移民排斥や気候変動交渉などで問題発言を続ける首脳が多数参加するG20サミットにおいても、首脳とは異なった声をしっかりと聞こうというメディア側の姿勢が見られる。

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<「G20大阪市民サミット」では議論の様子をグラフィック・レコーディングという手法で可視化した>


しかしながら、2020年のG20サミットはサウジアラビアを議長国として開催されることや、2021年のイタリア、2022年のインドまでが決定しており、「G20サミットを持続させるな!」や「G20はいらない」という声は首脳たちには届きそうにはないのが現状だ。


来年のG20サミットで議長国を務めるサウジアラビアは、「後見人制度」により男性の従属下に置かれる女性の人権が抑圧されていることや、2018年に発生したジャーナリスト殺害事件、イエメン内戦への軍事介入など、国内外で人権上の課題を多数抱えている。


「C20」が発表した政策提言書においても、腐敗防止やジェンダー平等(特に、LGBTQIの人々の人権保護)が挙げられており、日本も含むG20諸国全体の課題として、継続的に働きかけをしていく必要がある。今後も、市民社会として、それぞれの「戦略」が効果的に機能するよう、3つの立場を組み合わせていかなければならない。■


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2019年02月10日

市民の声をG20/G7に〜W7の経験から〜近年、首脳たちがおこなう議論に対して、非政府主体や市民社会が、自分たちの課題や主張を反映させようという動きが活発になっています。

AMネット会報LIM89号より(2018年11月発行)


市民の声をG20/G7に〜W7の経験から〜

2019 G20サミット市民社会プラットフォーム 
G20大阪市民サミット実行委員会共同代表
アジア・太平洋人権情報センター所長
AMネット理事                      三輪 敦子


 来年2019年6月、大阪でG20が開催されます。G20はG7と並ぶ、いわゆるサミット(頂上会談)ですが、近年、首脳たちがおこなう議論に対して、非政府主体や市民社会が、自分たちの課題や主張を反映させようという動きが活発になっています。


 これらのグループは、エンゲージメントグループ(engagement group)と呼ばれ、C20(civil society:市民社会)、W20(women:女性)、L20(labor:労働組合)、B20(business:ビジネス)、Y20(youth:若者)、T20(think tank:シンクタンク)等、様々なグループが存在します。

 このようなグループが、G20やG7に関わるようになった背景には、「グローバル化した社会におけるグローバル化した問題に対応するには、政府だけでは十分ではなく、非政府主体や市民社会の関与と参加が決定的に重要」との理解があります。


 エンゲージメントグループがどのように活躍できるかは、G20やG7を開催するホスト国の政府が、非政府主体や市民社会とどのような関係を築いてきているかに左右されます。

一方、エンゲージメントグループについては、それぞれのグループがどのように構成されているかも重要なポイントです。多様な人たちの様々な声を反映できるかによって、主張に信頼がおけるグループかどうかが変わってきます。


 2018年のG20ホスト国はアルゼンチンで、C20は、8月6〜7日(月火)にブエノスアイレスで開催され、日本からは2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同代表 の岩附由香さん達が参加しました。


 会議では、2017年12月から2018年7月にかけて、8つの分野別におこなわれた議論を経て作成された「C20政策提言書」 がマクリ大統領に手渡されました。

大統領がC20に出席するなど、アルゼンチンC20は、政府が市民社会を尊重していることが特徴的です。この関係が大阪C20に受け継がれるよう、市民社会として働きかけていく必要があります。

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[1] C20政策提言書(2018)は、以下からダウンロードできます。

https://uploads.strikinglycdn.com/files/6d2b6e53-1e36-481c-9f32-08d60141a3ea/C20-2018-POLICY-PACK-JP.pdf
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 エンゲージメントグループといっても、具体的にどんな人たちが、どんな場所で、どんなことをするのか、イメージがわきにくいのではないでしょうか。今年の4月に、カナダG7に伴って開催されたW7(Women 7)に参加した経験を少しご紹介したいと思います。


 今年のG7は、カナダのシャルルボワで、6月8日から9日にかけて開催されました。

それに先立ち、W7は、4月25日から27日まで、オタワで開催されました。どうしてG7サミットと同時に開催しないのかと思われるかもしれませんが、これは、G7の議論に影響を与えるためには、G7と同時期では遅いというのが理由です。

自分たちの主張をG7の議論に反映させるためには、G7が開催される前にエンゲージメントグループ会合を開催し、効果的にロビイングをおこなうのが大切と考えられているわけです。


 今年の開催国カナダのトルドー首相は、自らを「フェミニスト首相」と称し、2015年の首相就任後、閣僚の半数を女性にしました。報道陣に「どうして閣僚の半数を女性にしたのか」と尋ねられた際、「2015年だから(Because it’s 2015.)」と答えたエピソードは有名です。

そんなこともあり、今回のW7でも、「2018年だから」が合言葉のように何度も使われていました。


 トルドー首相は、そうした自身の主張を前面に押し出す形で、「G7のすべての議題でジェンダー平等を優先課題とする」という政策を掲げました。そしてそれを実施するために、「ジェンダー平等諮問委員会(Gender Equality Advisory Council: GEAC)」という委員会を設置し世界の23名の女性を指名、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん他、日本からは女性差別撤廃委員の林陽子さんが加わりました。


 今回のW7は、この「ジェンダー平等諮問委員会」の会合と時期をあわせて開催し、意見交換もおこないました。

そのような場を通して、@様々な背景を有する女性の声を届け、A女性の課題に取り組むための具体的なヴィジョンを提言し、それによりG7が真剣にジェンダー平等に取り組み、女性の現実に則った議論と決定がおこなわれることが目標でした。


 「未来はフェミニスト(The future is feminist.)」をテーマに開催されたW7には、カナダ、他のG7各国、「途上国(グローバルサウス)」から、約60名が参加しましたが、ほとんど全員がNGOでした。組織委員会を構成したのは、Action Canada for Sexual Health and Rights、Oxfam Canada等、7つのNGOでした。


 分科会は、1)ジェンダーと交差性・複合性、2)経済的エンパワメント、3)女性と平和・安全保障、4)気候変動、5)性と生殖に関する健康と権利、6)女性に対する暴力、7)女性運動/フェミニスト運動の7つが設置され、筆者は、「性と生殖に関する健康と権利」の分科会に参加しました。


 事前に「草案の草案」のようなものが作成されているのかと思っていたら、1日目午前から、各グループで、ポストイットと模造紙を使って意見を出し、それを分類し、まとめあげていくという、まさに参加型のプロセスで議論され、提言が練り上げられたのは新鮮な経験でした。英語での文章を求められる国際的な会議で、日常語が英語である参加者が大多数である強みをまざまざと見せつけられた思いでした。


 トルドー首相が参加し、各分科会からの報告がおこなわれた対話集会では、グアテマラから参加した先住民の女性が「グアテマラの鉱山で操業する多国籍企業が先住民女性の生活に深刻な影響を与えているが、その多くはカナダ企業だ」と発言しました。

 終了日前日の深夜におよぶ事務局の奮闘で提言がまとめあげられました。主な内容は以下のとおりです。


1)【ジェンダーと交差性・複合性】 すべての課題との関連性、交差性・複合性を理解したデータ収集、交差性・複合性に配慮した意思決定への参加促進


2)【経済的エンパワメント】 持続可能性・不平等是正の重要性、ディーセントワークの推進、ケアワークの評価と再配分、女性と労働に関連する条約(特にILOの職場における暴力に関する条約)の批准


3)【女性と平和・安全保障】 ドナーとしてのG7の役割、紛争解決・平和構築関連予算の50%を「女性と平和・安全保障」関連事業に、和平協議・会議の代表の半数を女性(地域の女性含む)に


4)【気候変動】 気候変動枠組条約へのジェンダー視点の確保、成長経済からの脱却、気候変動の影響に関するジェンダー分析


5)【性と生殖に関する健康と権利】 ジェンダー視点に立った「性と生殖に関する健康と権利」へのアプローチ、自律的主体としての女性の身体の認識、生殖に関する健康についての知識・情報・アクセス・選択の確保、刑事罰やグローバル・ギャグ・ルールの撤廃


6)【女性に対する暴力】 交差制・複合性の認識(カナダにおける先住民女性の失踪・殺害)、G7各国のGDPの一定割合を「女性に対する暴力」対策に、適切なデータの収集、国際協力や投資の際の条件・留意事項として「女性に対する暴力」への対応・対策を


7)【女性運動/フェミニスト運動】 ジェンダー平等に向けた社会変革・女性の人権課題に関する政府理解に果たしてきた役割の認識、女性団体への資金提供、W7への継続的支援


 こうして提出されたW7の提言は、全面的にジェンダー平等諮問委員会による首相への提言に反映されることになり、W7のML上では「歓喜」のメイルが飛び交いました。


 驚いたのは、G7直後に米国のNGO であるICRWが中心になり、Report Card on the 2018 G7(2018 G7評価シート)という文書を作成したことです。トルドー首相が掲げたジェンダー平等/フェミニストG7に関する目標がどの程度、達成されたかを検討すると同時に、来年のフランスG7に向けた課題を確認することを目的として、G7の公約を検証する文書が発表されました。

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Report Cardは以下からダウンロードが可能です。

https://www.icrw.org/wp-content/uploads/2018/06/G7-Summit-Brief-v7.pdf
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 今回のW7 が市民社会と政府の距離が近い会議であったのは、現政権のスタンス、さらに市民社会、女性NGOが協力して、首相の政策を追い風に自分たちのアジェンダを訴えようと力をあわせたことが大きかったと思います。

W7との意見交換会で、トルドー首相が述べた「社会の方が政治家や行政組織よりもずっと意識が進んでいることがある」「物事を前進させるために、あなたたち(W7参加者)の情熱が必要」という言葉が非常に印象的でした。

市民社会のアジェンダを実現するには、市民社会と政治や行政の緊密な連携が必要ですが、トップの理解とリーダーシップが不可欠であることを改めて強く感じた機会でした。日本も「2019年だから」と言える形で市民と政府との建設的な議論ができることを願います。そのための重要な機会としてG20を活かせるよう、市民社会のパッションを集めたいと思います。■



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2019年01月09日

G20に市民が関わる意義とは?豪華ゲストによる、G20大阪市民サミット・キックオフイベント「市民がつなぐ、大阪から世界へ」開催報告

AMネット会報LIM89号より


【11/17大阪開催】G20大阪市民サミット・キックオフイベント

「市民がつなぐ、大阪から世界へ」開催報告

2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同事務局 AMネット理事 堀内葵


日本で初めて開催されるG20サミットの舞台として大阪が選ばれてから約9ヶ月、関西のNGO有志メンバーが集まり「G20大阪市民サミット実行委員会」が結成されました。10月の設立総会に続き、11月に大阪・PLP会館で開催されたキックオフイベントの様子をご紹介します。


開会挨拶として、同実行委員会の共同代表である三輪敦子さん(AMネット理事、アジア・太平洋人権情報センター所長)より、今年6月にカナダで開催されたG7サミットでのジェンダー主流化の状況を紹介しつつ、大阪G20サミットに向けて、

1)フェミニストで行こう、

2)アカウンタブルであろう(ここに来られない人の声も届け、説明責任を果たそう)、

3)公正で豊かな社会に向けて大阪から発信しよう、

という3つのメッセージが出されました。


つづいて、同実行委員会の加藤良太さん(関西NGO協議会理事)から

201962829日(金・土)で行われるG20大阪サミットに合わせて、62526日(火・水)に「G20大阪市民サミット」を開催する予定であること、

それに先立つ4月には世界中の市民社会からG20に提言するための「C20サミット(Civil 20 Summit)」が東京で開催されること、

また、それらの狙いや道のりについて説明があり、サミット開催地の市民社会として世界に向けて発信し世界から学んでいく、そして、地域社会にとっての政策的レガシーを市民の手で得ていく、と結ばれました。


国際協力NGOセンター(JANIC)の職員として、C20サミット開催に取り組む「2019  G20サミット市民社会プラットフォーム」の共同事務局を務める堀内からは、

サミットの議論を実りあるものにするために、首脳に提言を行う公式の場として「エンゲージメント・グループ」が設置されていること、

企業(B20)・労組(L20)・女性(W20)・若者(Y20)など合計7つあるエンゲージメント・グループのうちC20を市民社会が担うこと、

今年のアルゼンチンG20サミットに向けて市民社会が作成した政策提言書を引き継ぎつつ、日本と世界の市民社会の声を集める工程など、世界の市民社会との連携状況

および、2019421日(日)〜23日(火)に東京で開催する「C20サミット」について紹介を行いました。


▼2019年C20サミットのワーキング・グループ一覧

1.反腐敗

6.インフラ

2.教育

7.国際財政の構造

3.環境・気候・エネルギー

8.労働・ビジネスと人権

4.ジェンダー

9.地域から世界へ

5.国際保健

10.貿易・投資


その後、同実行委員会の永井美佳さん(大阪ボランティア協会事務局長)をモデレーターとして、加藤さん・堀内・癘{育生さん(環境市民代表理事)、早瀬昇さん(大阪ボランティア協会常務理事)4名によるミニシンポジウム形式のリレートークがあり、G20サミットという場に市民がどのように関わっていけるかを話し合いました。


癘{さんは「市民が政府に対し、正式に声を上げるメカニズムが少ない。私たちはこの社会の主人公として参画する権利がある」、

早瀬さんはG20サミットに向けて市民が取り組む意義を5つに分けてお話しされました。

すなわち、1)いつもより目立てる、2)普段では届けられない声を出しやすい、3)いつもなら付き合いのない人とも一緒にできる、4)SDGsを実現するステップになる、5)国際的なネットワークを作れる、です。


堀内からは大阪・関西ならではの課題を発信する機会であり、C20サミットに向けてはインターネットを通じた意見の投稿が可能であること、

2019 G20サミット市民社会プラットフォームや大阪市民サミット実行委員会を媒介にしてぜひ発信していただきたいこと、

C20サミットの提言書作成の基本言語は英語ではあるが、プラットフォームが手助けをすることで幅広い意見を出せること、

などをご紹介しました。


休憩をはさんで、2019 G20サミット市民社会プラットフォーム共同事務局の稲場雅紀さん(SDGs市民社会ネットワーク業務執行理事)から、G20の基本的な説明がありました。


もともとは財務大臣会合として始まったが、2008年のリーマンショックによって首脳級会合に格上げされたこと、

資本主義の危機を先進国だけではなく新興国の力も借りて解決しようとする「支配階級」の会議であること、

それゆえに市民社会を含むあらゆるアクターがあるべき社会について提言をしていく必要があること、

C20サミットで主に議論される8つの課題は一見遠いように見えるが、すべて経済に関わっており、私たちの生活そのもの。

市民社会の視点として「経済正義(Economic Justice)」という考え方を取り入れる必要があること、

など示唆に富む講演でした。


その後、今年のアルゼンチンC20サミットで結成された8つのワーキング・グループの政策提言書を読み込み、大阪の市民社会から発信できることを考えるワークショップを行いました。C20のワーキンググループはアルゼンチンから引き継いだ8つに加え、日本から「貿易・投資」が新たに設けられる予定です。


全体発表を受けたコメントが実行委員会および発表者からなされ、

三輪さんは「SDGsに加えてG20も多くの人をつなぐ機会になっている。経済正義を、という点はまさにその通り。企業もSDGsに関心を持っているが、企業で働く人も会社を離れると一人の市民なので、ぜひそうした視点からも参加してほしい。IMFのラガルド専務理事は『多様性は議論を強くし、組織のリスク回避に役立つ』と話している。この場もまさに多様な人が集まっている」

と指摘されました。


稲場さんは

これからは、単にNGO/NPOのネットワークだ、と言っているだけでは神通力がなくなっていく。本当に強いのは具体的な課題を持つ当事者や、しっかりと証拠をもって当事者の代弁ができる人。『私自身の抱える問題』について話す人は声を聴かれやすい。今日はそうした声がたくさん上がり本当に良かった」

コメント。


同実行委員会の共同代表である新川達郎さん(同志社大学教授)は

G20各国政府に何をさせるのか、公共の利益を追求させることは市民の役割。平和・安全・秩序を守るのが一国の政府の第一の役割。効果的な抵抗の仕方を考えること(例えば、市場の規制)は市民社会の役割。私たち自身はいくつもの役割を持って生きている。公正・正義・平等を共通の価値として打ち立てていくべき」

とお話しされました。



アルゼンチンでのG20サミットが121日に閉幕し、仕事の未来、開発のためのインフラ、持続可能な食料文化という3つの主要議題に加え、2030アジェンダ(SDGs)への取り組みやジェンダーによる賃金格差を縮小するコミットメントなどを盛り込んだ首脳宣言が発表されました。


同時に、日本政府による記者会見が行われ、大阪G20サミットでは

経済成長と格差への対処の同時達成、

SDGsを中心とした開発・地球規模課題への貢献、

AIやロボットなどの「革新的技術」を活用した経済成長と社会的課題の同時解決、

質の高いインフラ、

国際保健、

気候変動問題、

海洋プラスチックごみ問題

などが議論されることが明らかになりました。


4月のC20サミットに向けて世界の市民社会と協力しつつ、6月の大阪市民サミットまでの半年あまり、日本全国の市民社会とも連携した活動を展開していきます。■



【参考】

2019 G20サミット市民社会プラットフォーム

http://www.civil-20.jp

C20サミット公式サイト(英語)

https://civil-20.org


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