進む日本の水ビジネスと問題点
オルタナティヴ水フォーラム(FAME) 2012
マルセイユ(フランス)
私たち、日本の市民社会組織/NPOと労働組合は、水への人権の実現させるための国際連帯を強力に推進します。水の商品化・水道民営化に反対する人々の声と力を結集させる取り組みとして、NGOと労働組合による協働作業、すなわち、政策提言をはじめ国際協力を行なうNGOへの人的・技術的支援を計画しています。そのために、水道労働者が国際的に連帯する必要性を強く感じています。国や水道事業体の公公連携だけではなく、民衆の立場での公公連携です。
しかし、日本国内の状況は違います。以下に、日本の水道事業の実態がまったく逆方向に進んでいることを報告します。
2009年1月に政権与党であった自民党は「水の安全保障戦略機構」を発足させました。この機構は、水を戦略資源と位置づけ、「チーム水・日本(Team Water Japan)」として官民一丸となり、世界に進出することを目的にしています。特にアジア地域に焦点を絞り、開発援助だけでなく、水道事業の技術・運営・管理などにも進出し、公営企業にも関わらず水ビジネスにおけるアジアの盟主を狙うナショナリズムを基調としていいます。その一例が、2009年12月、政権を握った民主党が閣議決定した「新成長戦略」です。自由貿易の拡大を進め、鉄道・水・エネルギーのインフラ輸出によるアジア市場の開拓と意図しています。2012年6月にタイ・バンコクで開催予定の第2回アジア太平洋水サミットにおいても、水インフラ輸出が進められようとしています。
政治の動きに合わせて、産業界も世界の水ビジネスに照準を定めました。2008年3月にあるシンクタンクが、急拡大する世界水ビジネス市場へのアプローチを含む報告書を作成しました。日本企業の進出すべきモデル地域の検討や水メジャーの動向の研究などを行なっています。例えば、日本企業は、素材や機器などの製品分野では世界のトップクラスですが、運用分野でのノウハウが不足しているこが指摘されています。
これには理由があります。日本の水道事業は、水道法のもと、公営原則で運営されています。そのため、民間企業に水道事業のマネジメント能力が備わりませんでした。そこで、2008年10月、水道産業ロビーも水道産業活性化プランの報告書を作成しました。この報告書では、日本の水道普及率が97%と高く、ほぼすべての人が水道水を得られる環境にある一方で、水道事業の経営環境の厳しさを指摘しています。そして、その解決策として、民間資金の活用、事業の広域化、官民連携の推進を掲げているのです。水道事業を民間企業が担うことにより、水道産業を活性化させ、同時に海外における水ビジネスにも優位性を持って進出できるとしています。この官民連携とは、これまで官が担ってきた水道事業の技術や運用などのノウハウを民間企業に移転することを目的にしています。
私たちは、官民連携のもとで、国・水道事業体・水道産業界がシンジケート化し、国策による水メジャーを目指していることを危惧しています。公共サービスとしての水道事業は非営利原則であるべきです。
私たちは、日本の水道事業が民営化と水メジャー化していることを批判し、水の公共性と公共サービスを求めるあらゆる人々・団体と連帯し、公共サービスの維持と公公連携の推進を求めて活動を続けます。
2012年3月14日
特定非営利活動法人 AMネット
特定非営利活動法人 水政策研究所
全水道 大阪市水道労働組合
全水道 東京水道労働組合 浄水委員会
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堀内 葵 aoihoriuchi [@] gmail.com
特定非営利活動法人 AMネット
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