2020年06月06日

パンデミック時代に考える食と農〜食の国際貿易とグローバル生産体制を押し進めてきた歴史と、付加価値を追求してきた「不要不急」の食〜

AMネット会報LIM95号より、コロナ後の世界を考える重要な視点です。
会報発送前ではありますが、原稿を公開します。


パンデミック時代に考える食と農

平賀緑(AMネット理事。立命館大学専門研究員、京都橘大学非常勤講師)


COVID19パンデミックによる食と農への影響について、メディアでも取り上げられ、国内外でさまざまな論者が論じ、研究者もこのトピックに飛びついている感がある。

重要課題ではあるものの、あまりの「流行」に天邪鬼な私はやや引き気味でいたが、学生たちに講演する機会もあったため、思うところをまとめてみた。あくまで20205月現在に国内外の議論を聞いて考えたエッセイであって、自ら調査研究を手がけた内容ではないことをご了承いただきたい(元となった講演は文末参照)。


パンデミックにより「自粛」要請された外食産業が影響受けていること、キャンセルされた宴会用やオリンピック需要を見込んだ食材、そして給食のための食材が無駄となってしまったこと、そのため政府が「お肉券」など導入しようとして頓挫したこと(まだ諦めてないようだが)。

また農業生産現場では、安い労働力として依存を強めていた外国人「研修生」が来日できず農作業や出荷作業が滞っていること、外食産業で多いバイトが消えて学生たちも困窮していることなどなど。

そして「食料」輸出国が輸出制限したことから「『世界同時多発食料危機』が自給率4割の日本を襲う」と警告が発せられた。
世界に目を向けると、確かに4月頭には国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が世界的な食料不足の恐れを警告している。

海外でも移民労働者が動けなくなったため農業生産・出荷作業も滞っている。もとから劣悪な労働条件だった食肉処理工場では、米国で2万人、ブラジルで数千人が集団感染するなど、食料サプライチェーンの行き詰まりが懸念されている。

しかし食料の不足より、それ以上に、パンデミックによる貧困化・経済的影響による飢餓が懸念されている。


現在パンデミックにより影響を受けている食のグローバル・サプライチェーンを簡単に書き出してみると次のようになるだろう。


世界的に大手数社が寡占状態の農業資材(種子、化学肥料、農薬など)への依存

・・これが物流の寸断で滞り

 ↓

安価な外国人労働者や季節労働者(日本では「海外研修生」)を多用しての大規模農業生産

・・人の移動禁止で滞り

 ↓

大手数社が寡占する大規模な食肉処理場・食品加工場

・・もとから劣悪な労働条件に加えて政府・企業が稼働を強行して人権侵害的な感染が広がっている

 ↓

WTO自由貿易体制に組み込まれ拡大した農産物・食品の国際貿易や長距離輸送

・・移動禁止や輸出規制による「食料危機」が叫ばれる

 ↓

大手小売店の発展(スーパーやコンビニが主な食料入手先に)

・・買い占めにより食料不足。この現場では学生バイトも仕事が忙しくなったとのこと

外食・中食など「食の外部化」の発展

・・補償なき休業要請により経営危機や失業。パートやバイトの学生たちも収入減。

・・ステイホームでの食生活はインスタント、レトルト、スイーツが増えて、逆に不健康になったとの声も


これが「アフターコロナ」に人とモノの流れが復元されて、元の食料システムを復活できればすべてOKだろうか?

そもそも、なぜ、ここまで寸断されるほど食のサプライチェーンが世界中に引き延ばされ、「不要不急」を控えたら無駄になる食材がこれほど増やされていたのか。


■食の国際貿易とグローバル生産体制を押し進めてきた歴史

これほど危機に弱い食料供給体制は、比較優位理論で生産を特化し、その国際貿易を押し進め、労働力には季節労働者や外国人労働者を使ってコスト削減するなど、過去半世紀にわたり「効率性」を求めてきた結果だという(J. Clapp)。

1980年代から途上国に対しては構造調整計画(SAP)を押しつけ、人々の口に入る食べものより輸出して外貨を稼ぐ商品作物の生産を押し進めたこと。

GATTウルグアイラウンドからWTO成立につながる農業分野の交渉の結果、「農業に関する協定」によって農業と食料が自由貿易体制にがっちり組み込まれたこと。

加えて、租税回避や経済の金融化が、タックスヘイブンを組み込んだ国際貿易や企業の多国籍化、さらに農地や食料の金融商品化を押し進めてきた。

今日世界では、生産された食料の約4分の一が国境を越えて貿易されるという。


日本に関しては1985年のプラザ合意とそれに続く「前川レポート」によって「開発輸入」や食品企業の海外進出が、食のグローバル化を一段と拡張した。

加えて、近年のTPPや日米、日EUなど自由貿易協定の数々によるさらなるグローバル化を推し進めていた最中だった。


結果、生産から消費まで長く伸びきった食料サプライチェーンが発展していた。
「効率性」を高めるため特化した生産や加工現場は生産量や生産物を変更しづらく、寡占が進んだチェーンの一部が寸断されるとチェーン全体が行き詰まる、危機にもろい食料システムとなってしまった。


■付加価値を追求してきた「不要不急」の食

学生たちにネット越しで様子をうかがったところ、居酒屋系のバイトは消滅して困っているが、逆にピザやファストフード、スーパーのバイトは忙しくなったとのこと。ここから「不要不急」の食と、「必要」な食とが対比されて興味深かった。


そこで思い出したのが、デヴィッド・ハーヴェイが現在の消費について語っていた話だった。

必要以上を消費させることが勝負の現在経済において、ハーヴェイがツーリズムの発展について述べていたのは、ツーリズムで文化的な経験を販売することだった。
旅先で、「ご当地」を体験し、「ご当地」の食を楽しむ。旅先では財布のヒモも緩み、より多く消費してくれる。

こうした「経験の消費」は、輸送や在庫管理することなく生産した「経験」が消費された瞬間に換金され価値が実現される。
かつ、いくらでも多く消費してもらえる。

これをハーヴェイは「consumption of spectacular(華やかさの消費)」と説明していた。基本的物資の生産と保有が一巡してしまった現在の世界に、ツーリズムがこれほど推進されたのがよく分かる説明だ。


 「経済学とは、社会がその希少な資源をいかに管理するのかを研究する学問」と教科書は定義づけ、生産についてが注目されやすい。

しかし、生産した商品の価値は、販売しなければ実現できない。
現在でもGDPの最大部分を占めているのは消費であり、消費の増加が経済成長を支える。

ところが、これだけ物が溢れて必要な物はほとんど揃っている現在、必需品だけを生産していては利潤を見込めない。
そのため企業は、消費者も気づいていなかったようなニーズを開拓し、新商品を絶え間なく打ち出し続ける。

食の世界でも、必要なカロリー以上を消費させるため、目先を変えた新商品が次々発売され、企業は塩と砂糖と油を使って必要以上に食べさせるためのノウハウを研究している(詳しくは『フードトラップ』に)。


そして利潤を得るために、基礎的な食べものより、「高付加価値」な食品への転換が促される。
牛肉1kgを生産するためには穀物9kgが必要だから環境コストが高いとしばしば非難されるが、これは裏を返せば、穀物9kgを出荷するより牛肉1kgに変えて出荷する方が「付加価値」がつくからという、利潤追求と経済成長の戦略でもある。

草や畑の残さや庭の虫を食べていた牛や豚や鶏(庭鳥)を閉じ込めると、外部から穀物など飼料をインプットする必要に迫られる。
裏を返せば、補助金漬けで過剰生産した大豆やトウモロコシの価格を維持し市場を拡大するため、加工型畜産を組み合わせると都合良いとも考えられる。


日本の農業生産現場におけるコロナ禍を特集したTV番組でも、今まで「強い農業」のために政府が押し進めてきた、より高付加価値化にとりくみ、より輸出向けに力をいれていた生産者さんが、今一番コロナ禍の影響を受けていると報道していた。

だから日本の牛肉生産者を支えるために「お肉券」との発想に至るわけだ。


覚えておきたいのは、このような「不要不急の食」は、消費側にとっては不要不急で自粛可能かもしれないが、その生産者にとっては生活のため必須だということだ。

その意味では、販路が絶たれた牛肉生産者や、居酒屋でのバイトを失って困窮している学生たちのたちまちの生活を支援することは必要だろう。現場のある農林水産業、物流、小売、外食産業などリモートワークできない食料システムの各段階で「必要な食」を支えてくれている、普段から安く使い倒されてきた多数の労働者についても、スタッフへの感染の危機と併せて労働条件の見直しが求められる。


ただ同時に覚えておきたいのは、パンデミックの前から、肉や油や加工食品を多用する現在の食料システムは、地球の環境も人の健康も破壊していたことだ。

大豆やパーム油の増産が原因と目されているアマゾンやインドネシアでの森林火災や、気候変動サミットに行って嬉しそうにステーキを食べて世界の冷笑を買った環境大臣など、まだ1年内の話である。

環境と健康と地域社会を破壊していた農業食料システムをアフターコロナに取り戻しても、ウィルスではなく農業食料によって、地球と人の寿命は短命に終わるかもしれない。


■モノカルチャーによる生命の大量生産

かなり早い段階から霊長類学者グドール氏はウィルスの世界的大流行は
「人類が自然を無視し、動物を軽視したことに原因がある」
と指摘していた。

「これは何年も前から予想されてきたことだ」とも。

他の論者からも、野生動物の生態圏が破壊されたから人間の生活圏にウィルスを持ち込むことになったとの指摘もある。
野生動物がビジネスになったからこそ、武漢の市場に集められていたのだとも考えられる。


加えて、家畜を閉じ込めて大量生産する「工業的畜産」「加工型畜産」「集約型畜産施設(CAFO)」と呼ばれる畜産形態にもウィルス発生の疑いが向けられている。

ウィルスの発生と人への感染の実態はまだ分からないが、工業的畜産がウィルスの培養槽となったことは充分考えられる。

COVID19の前から、抗生物質を多用しすぎて耐性菌が脅威となり、鳥インフルエンザ、狂牛病、豚インフルエンザ、豚コレラと家畜の病気が次々発生するなど、畜産現場は病んでいた。


豚の方が内臓が人間に似てるから感染しやすい、と聞いたのは、私が丹波で鶏や鴨を放し飼いしていたころだった。
同じ町内に数年前、鳥インフルエンザを発生させた浅田農産があり、私たちがいたころにも小規模な鳥インフルエンザが問題となったため、「感染源」と目されていた野鳥との接触を避けるために鳥たちを密閉しろと指導が入った。

閉じ込める方がストレスが溜まって不健康になると抵抗した私たちに、保健所のスタッフも、走り回る鳥たちを見ながら、ここの鳥たちは元気なのはわかりますけどね、と言われた。

現在また、豚コレラを防止する感染症予防対策として農林水産省は家畜放牧を禁止しようとしている。


私は理系研究者ではないので断定できないが、たとえ野鳥がウィルスを保有していたとしても、それを「高病原性」鳥インフルエンザ(HPAI)に強化したのは、遺伝的に同じ鶏を密集させて大量生産していた工業的畜産の鶏舎が培養槽として機能した結果と考えている。

基本的に、植物も動物も、単一種を同じ所で大量生産すると病弱になる、同じ種が密集すると病原菌の培養槽となる、と考えている。

連作したり、モノカルチャーで単一作物を大量栽培すると、農薬や消毒が欠かせなくなる。

逆に、いろんな植物を共に育てる方が強くなるとして、コンパニオンプランツという手法も知られている。


自然界は植物も動物も、一つの種を一所に集めない。

必ず植物も動物も微生物もウィルスも混ざった多様性のなかで生きている。

多様性があれば、弱い個体は食べられたとしても、同じ種の強い個体、免疫性や対応性を得た個体が生き延びて、種は生き延びる。

しかし、「商品」として輸出したり出荷したりする作物を「効率的」に栽培するため、産業としての農業では生物多様性が削られてきた。

かつてアンデスの民が多種類育てていたジャガイモは、現在では45種が世界的に生産されている。

同時に、工業的農業に基づく私たちの食生活も単調化されてきた。
これだけ多種多様な食品が溢れているのに!と思われるかもしれないが、ではなぜ、数種類の穀物・油糧種子の輸出が止められただけで騒ぐのだろう。

日本において、日清製粉と日本製粉の小麦粉、日清オイリオとJ-オイルミルズの食用油、三井製糖と日新製糖の砂糖を口にしないことがどれだけ難しいか、試してもらいたい。

いずれも、150年前には常食していなかった食品であるにもかかわらず。

世界的には、「ABCD」と称されるアグリビジネスが「この世界には、自由市場で取引されている穀物など、一粒たりとも存在しない」と豪語している。

つまり、これら大企業が扱う数種類の食材に、私たちの食生活が依存している。


■人と環境と地域社会の健康を第一にする「エコロジカル・パブリック・ヘルス」を

「アフターコロナ」の食と農についても、すでに多くの人が、より地域に根ざした、より持続可能な食と農を、この危機をきっかけに見直すべきと述べているため、ここでは繰り返さない(岡田先生の記事も参照)。

ただ、「ショックドクトリン」のナオミ・クレインが「コロナショック」を警告しているように、下手をすれば、このショックでより破壊的な社会が作られる危険性も充分ある。


そもそも、食料自給率や農業の存続を懸念する声は聞こえても、見かけは食品がありふれている日本において、現在の食料システムが生活習慣病の要因として不健康を広めていたり、気候変動の一大要因として地球を破壊していたりとの認識は薄い。

肥満という目に見える不健康が社会現象として問題化された欧米においては、私たちの食生活を形成する政治経済社会的な要因についての研究が進んでいる。

その中でも著名な論者であるTim Langは、食を健康と環境と社会正義の要と捉え、人と環境と地域の健康改善を第一目的とする「エコロジカル・パブリック・ヘルス」を提唱した。

public health とは、日本語では公衆衛生と訳されるが、正しくは「health of public (大衆の/人々の健康)」を意味すると考える。


見かけの経済成長を無理やり押し進めてきた資本主義的経済社会の世界において、パンデミックは自然現象ではなく人間が作り出した経済社会の結果だったとの声も聞く。

そのため、今後パンデミックは継続的な状態となるかもしれない。

資本主義的経済の発展の中で、人間は、医学などの知識と技術で弱い個体を救う術も手に入れたが、格差社会の中で健康的・環境的・経済的コストを弱者に押しつける社会システムも作ってきた。

しかし、経済とは、もともとは「経世済民」として、世の中を治め、人民の苦しみを救うことを目的としていたはずだ。

パンデミックを乗り越えるために「命か経済か」ではなく、「命のための経済」を取り戻すことが重要だろう。

弱者へのしわ寄せを防ぎつつ、本来の、自然の恵みである農と生命の糧である食と、それを支える地域経済社会とを取り戻すきっかけになればと願っている。



2020514日「パンデミック時代に考える 食と資本主義の歴史」講演(約90分)はこちらのyoutube再生リストから視聴できます。

https://www.youtube.com/watch?v=j0q7HSqxiEs&list=PLXN-sA-t7F-WPcaXWQ8oJoeDow4s3KNjs

(短縮URL https://bit.ly/3gQsvN8

 
<平賀 緑プロフィール>

広島県出身。1994年に国際基督教大学卒業後、香港中文大学へ留学。香港と日本において新聞社、金融機関、有機農業関連企業などに勤めながら、1997年からは手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」共同代表として、食料・環境・開発問題に取り組む市民活動を企画運営した。2011年に大学院へ移り、ロンドン市立大学修士(食料栄養政策)、京都大学博士(経済学)を取得。植物油を中心に食料システムを政治経済学的アプローチから研究している。

主な参考文献/サイト:

David Harvey's Anti-Capitalist Chronicles (podcast)
https://anticapitalistchronicles.libsyn.com


Eric Holt-Giménez (2017) "A Foodie’s Guide to Capitalism: Understanding the Political Economy of What We Eat" Monthly Review Press
https://foodfirst.org/a-foodies-guide-to-capitalism-understanding-the-political-economy-of-what-we-eat/


Jennifer Clapp "Spoiled Milk, Rotten Vegetables and a Very Broken Food System"
The New York Times (Opinion) 202058
https://www.nytimes.com/2020/05/08/opinion/coronavirus-global-food-supply.html

マイケル・モス()、本間徳子()『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』日経BP2014

霊長類学者グドール氏 コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」
AFP 2020412
https://www.afpbb.com/articles/-/3278221


岡田知弘「コロナと闘う5 地域ごとに課題潜在 問われる自律体制」
日本農業新聞 20200509
https://www.agrinews.co.jp/p50745.html

https://www.change.org/p/江藤-拓農林水産大臣-放牧制限しないで

posted by AMnet at 17:08| 食と農 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月02日

大阪市で検討が始まった「管路耐震化事業」の民営化(PFI)。管路耐震化の遅れは「民営化では解決しない」【陳情書を提出しました】

大阪市は、「水道事業全体」の民営化の条例は、廃案となりました。

今回、水道法改正を受けて、
次は「管路耐震化事業」の民営化に向けた、
新たなプランが2020年2月の議会で議論されることとなりました。

しかし、民営化で、管路耐震化の遅れは、解決できません。

そもそも管路耐震化で一番遅れている原因は、現場の「施工」。

「図面がない」「図面通りに布設されていない」
「地元調整が進まない」
「繁華街」や「狭小道路」など布設困難な場所が多い

などの課題があるからこそ、工事が進んでいないと考えられます。

民営化で
「マンパワー」が増えても、「まとめ発注」で効率化されても、
課題解決される問題ではありません。

今回の民営化プランも問題山積。

もっと詳しい内容は、以下をご覧ください!


<以下、陳情および、対象の資料画像を貼り付けました>

大阪市会議長 様


改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」に関する陳情書


【陳情趣旨】

これまでに発表された「改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」(以下「素案」という)について、以下の通り陳情いたします。


1、PFI手法導入によるシミュレーション結果(素案:第2章2-6-1、2-6-3)では、
「設計業務」で完成図書管理、「施工業務」で許可手続のみが、直営業務となっています。

しかし、水道局がほとんど工事に関与していない状態で、工事の適正な管理ができるのか疑問です。
また民間事業者が設計し、内容を知らない工事の認可手続きができるのでしょうか。


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2、リスク分担素案:第3章3-4)での、
「管路更新事業にかかるリスク」の「大阪市に起因する場合」とは何を意味するのでしょうか。

その増額分は、PFI事業導入効果額に含まれているのでしょうか。
大阪市の配水管は古く、図面に記載のない埋設管が多く存在すると考えられます。

これは契約時に想定できない事由として、大阪市がすべて負担することになり、大阪市の事業費が膨らむ結果となるのではないでしょうか。

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「経営上のリスク」での「民間事業者の経営努力でカバーできる範囲」は、どのように見極めるのでしょうか。

海外では運営会社のグループ会社に利益を移し、運営会社の利益を過小報告される事例も発生しています。
(パリ市では7%の利益率と報告されていましたが、再公営化後の調査で、実際には利益率が15〜20%であったと発覚しました)

また災害発生時、事業者も同様に被災している中で、復旧に当たる人材を確保できるでしょうか。

万が一、民間事業者の人材確保ができない場合、どのように対応するのでしょうか。


3、水道料金の仕組み(素案:第3章3-5-1、3-5-2)の中で、
「水道料金は大阪市が条例で定め、見直す場合、条例改正(市会の議決)が必要」とあります。

しかし、事業者へ支払う「水道料金の按分率」の当初設定値(上下限含む)も、
誰が決定権を持つのかも、明示されていません。

按分率は、水道料金に大きく影響すると考えますが、そこに議会の関与はあるのでしょうか。

職員のノウハウも喪失し、議会の関与が少ないとなれば、

実質的に民間事業者主導で按分率が決定されるのではないかと大いに懸念します。


また「定期レビューを実施し、按分率を見直す」とありますが、

契約時に支払総額が未定、その後の変更過程も不明確というのは公営企業の契約として、極めて不適切です。


さらに「資材価格高騰のリスクを水道局が負う」となれば、

調達費用軽減の経営努力が果たされるのか不安が生じます。


「事業者側で制御しえないリスクに対し、按分率を引き上げる」としていますが、

事業者側で制御できないのか、経営努力不足なのか、どのように見極めるのでしょうか。



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4、基本スキーム(素案:第3章3-6-1)での、
「計画」「設計」「施工」のうち、耐震化工事が最も進まない工程は、

現場である「施工」と推測されますが、PFIで解決できるのか疑問です。

それぞれの工程で、どのような割合で積み残しているのでしょうか。


水道施設の台帳を整備している水道事業者は、全国でも61%(厚労省2016年)しかありません。

大阪市に歴史があるからこそ他都市と比較しても、図面がない、または、図面通りに布設されておらず、施工が遅れる可能性も容易に推察できます。


大阪市は、繁華街や狭小道路など布設困難な場所が多く、市民生活に影響を及ぼさず地元調整を進めるにも、民間事業者で進捗率を上げることは、より困難ではないでしょうか。

また、全長約5100qのうちの1800qを15年間で布設するとありますが、布設しやすい現場はどれほど残っているでしょうか。

これら課題に対し、民間事業者による「マンパワー」や「まとめ発注」が解決策となるかが疑問です。


5、モニタリングの仕組み(素案:第3章3-6-2、3-6-3)には、

「豊富な経験・ノウハウを有することが必須条件」とあります。

しかし、そのための具体的施策「新設布設工事」よりも、更新事業がノウハウを要することは明らかです。


2019年12月に報道発表された大阪市上下水道工事に伴う「不適正施工問題」では、


「施工管理に関する知識や、点検事項に関しての十分な知見が備わっていない水道局職員がいること」
「組織的な能力不足を恒常化させていた」


と、「第3者委員会」から指摘されています。

現在、そして15年後の水道局に計画・設計・施工の全てをモニタリングできる職員はいるのでしょうか。


二重の監視体制として、大阪市のチェック体制に加えて、民間事業者によるセルフモニタリングを実施とありますが、

民間事業者は技術や経験をどのようにして身につけるのでしょうか。

この二重監視体制は、第3者委員会の意見と整合性がとれているのでしょうか。


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6、素案(第3章3-7)において、『大阪市中小企業振興基本条例』を明記し、

市内中小企業者の受注機会増大や連携・協力に努めるよう要請を行う」旨の記述があります。

しかし、努力義務に過ぎず、この枠組みではグループ企業内だけで受発注することが可能です。


シミュレーション比較(素案:第2章2-6-2)では、
まとめ発注の効果が「包括委託は限定的、PFIは最大限に発揮」としています。

しかし、地元中小企業者の受注機会増大を行えば、他社への発注から竣工検査までに時間を要し、PFIでもまとめ発注の効果が限定的となるのではないでしょうか。

逆に言えば、シミュレーション比較では「PFIでの地元中小企業者の受注機会増大を見越していない」ことになります。


7、PFI事業モニタリング統括部署の設置(素案:第4章4-6-2)で
施工モニタリングの強化が本当にできるのでしょうか。

「工事業者の作業状況写真を元に日々の進捗を監視及び電話等で迅速に指示し、抜き打ち巡視で施工レベルを維持できる」
としています。

しかし、事務所にいながら、線ではなく点の報告で、監督員の判断材料となりえるか。
的確な指示ができるのか。

「不適正施工問題」においても

「施工写真」での埋め戻し材料の不備を見抜けなかったにもかかわらず、

写真により的確な指示ができるとする、根拠を具体的に示すべきです。


8、素案(第5章5-1-2)において「広域的な復旧支援体制」では
「実施契約により市内早期復旧や他都市被災時の復旧支援等の役割が明記」とあります。

しかし、この素案では、実施契約の内容および、なぜ体制強化になるかが示されておらず、開示が必要と考えます。


9、「府域一水道」は議会の関与がないまま議論が進んでいることに、大きな疑念を抱いています。

府域一水道に大阪市民は、どういったメリットがあるのでしょうか。


2013年5月市会で否決された「大阪広域水道企業団との統合」との違いを明らかにするとともに、

府域一水道での市議会の関与をどのようにしていくかが問われています。


オール大阪水道体制.jpg
(参照:「オール大阪での検討」第19回副首都推進本部会議資料「持続可能な府域水道事業の構築に向けた取組み」23P)

また、PFI管路更新事業により生み出された「水道局職員の再配置」を

「広域連携体制の拡充」に充てるとあります。


しかし、水道局職員数の急激な減少(H20年決算1929人→H30年決算1317人:32%減)により、

現場力や技術力が低下しているからこそ、

第3者委員会に能力不足を指摘されたのではないでしょうか。

まずは水道局自身をしっかり立て直すために、人員を再配置することが必要です。



【陳情項目】

1.「改正水道法の適用によるPFI管路更新事業と水道基盤強化方策について(素案)」の審議は、本素案が採択され実行された場合に生じる広範且つ長期的な影響を市議会として十分に考慮の上、長い目での大阪市民の利益を踏まえ慎重に議論を進めること。


2.本素案および広域化の議論についても、議会の関与の担保を図ること。



水は生活のもっとも基本的かつ不可欠なインフラであり、水へのアクセス(安全で安価にいつでもだれでも利用できること)は大阪市民の生活にとって欠かせないものです。十分な情報公開のうえ議会での慎重な議論を進めます。


以 上

2020年2月1日




【陳情代表者】 

大阪の水道を考える市民の会

      構成団体:NPO法人AMネット、大阪を知り・考える会、近畿水問題合同研究会、

      しみんマニフェスト大阪UP 他


【賛同人】

仲上健一(近畿水問題合同研究会 理事長)


posted by AMnet at 20:01| 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月25日

SDGs達成に貢献する万博にするための意見書を、大阪市・博覧会協会に提出しました。

SDGs達成を目的として開催される、大阪・関西万博。


なのですが、環境アセスメントの方法書を見ても、SDGsの文字がどこにもありません。。。残念過ぎます。

加えて、会場が「夢洲」であることで、SDGs達成から、逆に遠のくのでは?というのも、私たちの大きな懸念です。

本日12/25、大阪市と日本博覧会協会を訪問し、夢洲懇談会の一員として、今回は6団体で一緒に意見書を提出しました!

よりよい万博にするため、市民が意見を言える機会が今。

「こんなことを調べて欲しい」「これが心配」といった、
いろんな意見を受けて、これからどんな環境アセスメントになるか、が決まります。

2019年1月6日〆切で、大阪市・博覧会協会が、環境アセスメントへの意見を受付しています。

AMネットが提出した意見書は
「SDGs達成のための万博にするために、説明してほしい」というもので、要旨は以下の3つ。

@環境アセスメントにSDGsの視点を。開催前〜開催後・跡地利用も念頭に。

Aなぜ夢洲なの? 逆に、持続可能な開発目標であるSDGsと大きくずれるのでは?
懸念する8つの視点から「他候補の6会場より、夢洲がSDGs達成に貢献できる」具体的理由を説明して!

B上下水道の整備、計画も決まってないけど、送水ルートが限られており、いざという時どうなるの?

よろしければ参考にしていただき、多くの方の提出をお願いいたします。

☆AMネットが提出した意見書はこちらからDL可能です。【Wordファイル】


<提出先>
■公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
環境影響評価方法書の公表及び意見の受付について

■2025年日本国際博覧会環境影響評価方法書等の写しの縦覧並びに意見書の受付について


<以下、AMネットとして提出した意見書です>

1、SDGsの観点を、環境アセスメントに取り入れるべきです。

方法書・立候補申請書に事業の目的として記載され、「2025年万博基本構想検討会議」整備等部会部会長も発言している通り、日本は万博開催でSDGs達成に貢献すると、世界に約束したも同然です。

そもそもこの方法書にSDGsに関する記載がなく、その視点をもつ全体像・具体策もありません。SDGsの精神に則り、アセスメントを実施してください。

開催中は当然として、万博前および万博後・跡地利用に関しても、どのようにしてSDGs達成に貢献するのか、明示してください。


2、なぜ夢洲を会場としたのか、明確に説明ください。

夢洲を会場とすることで、逆に持続可能な開発目標であるSDGsと大きくずれるのではないかと懸念します。なぜ夢洲なのか。どのようにしてSDGs達成の貢献につなげるのか、他候補の6会場より、夢洲がSDGs達成に貢献できる、具体的理由を説明してください。

特に以下項目について、最低限、他6会場との比較検討の結果を明示すべきです。


@目標1. 貧困をなくそう

大阪府知事・大阪市長が「万博とカジノはセット」と度々明言されています。

「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」SDGsとIRカジノは矛盾しないか。考え方、立ち位置をしっかりと説明すべきです。


A目標11. 住み続けられるまちづくり

京都議定書同様、日本の地名が冠になった国連防災世界会議で採択された2030年までの国際的な防災指針「仙台防災枠組20152030」が、SDGsにも取り入れられています。

「仙台防災枠組20152030にそって、災害リスク・防災の観点から、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う(ターゲット11.b)」。

夢洲は、汚染土壌、汚染水、軟弱地盤、台風、高潮、地震、液状化、護岸沈下、津波、コンビナート火災、避難経路、避難先の受入れ状況等、多くの懸念が寄せられています。SDGsの観点からも、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施に関するリスクアセスメントを自主的に実施し、明確にすべきです。


B目標12. 作る責任、つかう責任

海面には限りがあり、私たちが使える海は残りわずかです。大阪市民が今後、1020年使えるごみの最終処分地に、税金を使って購入した土砂で埋め立てる理由および、新島フェニックスとの関係を説明ください。


-1 埋立の回避、埋立必要規模の最小化

夢洲を会場とすることでの、ごみ処理および埋立地の喪失等、影響について回答ください。


「大阪湾フェニックス計画に参画し、長期的展望に立った最終処分地の確保を図っている。(2.2.10 廃棄物(1)一般廃棄物 P46)」との記載がありますが、フェニックスは、近畿24168市町村を受け入れる重要な処分地です。瀬戸内法、瀬戸内海環境保全基本計画、瀬戸内海の環境の保全に関する大阪府計画にある「埋立ての回避、埋立て必要規模の最小化」の趣旨からも、夢洲を処分地として延命化を図るべきだと考えます。


-2 大規模災害等に備えた災害廃棄物の処分地の確保

大規模災害時、早期の復旧・復興のためには、災害廃棄物の迅速かつ計画的な処理が必要であることは過去の災害からも明らかです。


大規模災害等に対し、仮置き場および最終処分地の重要性からも、夢洲を開発して良いのか。加えて「近畿ブロック大規模災害廃棄物対策行動計画」への影響はないか回答ください。


「瀬戸内海環境保全基本計画(5廃棄物の処理施設の整備及び処分地の確保)」「瀬戸内海の環境の保全に関する大阪府計画(35-3)」の「廃棄物の処理施設の整備及び処分地の確保」にも、「廃棄物の海面埋立処分に際しては、環境保全と廃棄物の適正な処理の両面に十分配慮するとともに、当該処分地が地域で果たす役割や大規模災害等に備えた災害廃棄物の処分地の確保に対する社会的要請の観点から、整合性を保った廃棄物処理計画及び埋立地の造成計画によって行うものとする」とされています。


また、南海トラフ巨大地震により、近畿ブロック全体で災害廃棄物が約7,900万トン、津波堆積物が約900万トン、合計で約8,800万トン発生すると推計されています(中央防災会議防災対策推進検討会議による同地震の被害想定)。



-3 埋立てに当たっての環境保全に対する配慮

「瀬戸内海環境保全基本計画」「瀬戸内海の環境の保全に関する大阪府計画」にある通り、沿岸域の環境の保全、再生及び創出に関する目標である、「海面の埋立てに当たっては、環境保全に十分配慮することとし、環境影響を回避・低減するための措置が講ぜられていること」「特に藻場・干潟等は、一般に生物多様性・生物生産性が高く、底生生物や魚介類の生息・生育、海水浄化等において重要な場であることを考慮するものとする。」とあります。これらに対し実施する措置を回答ください。


加えて、夢洲を会場とすることで「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成(ターゲット12.2.)」と矛盾しないか、説明すべきです。


C目標13. 気候変動に具体的な対策を

 気候変動について、会場内での温室効果ガスの排出抑制等しか検討されておらず、あまりに不十分です(P81)。

地球温暖化により「今のペースで温室効果ガスの排出が続けば、今世紀末に海面上昇が1メートルを超える可能性がある」と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2019年9月に「海洋・雪氷圏特別報告書」の政策立案者向けの要約版を公表したばかりです。

高潮や津波等、今の想定のままでよいのか。「気候関連災害や自然災害に対する強靭性及び適応の能力を強化(ターゲット13.1)」できるのか。

「海洋・雪氷圏特別報告書」を踏まえ、地球温暖化の影響および対策も検討すべきです。



D目標15. 陸の豊かさを守ろう

夢洲は「大阪府レッドリスト2014」において生物多様性ホットスポットAランクに指定されています。「自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し…緊急かつ意味のある対策を講じる。(ターゲット15.5)」と矛盾しないか、説明すべきです。


E会場決定プロセスへの懸念

他候補会場とどのように比較検討され、夢洲に決定されたのか。パート―ナーシップおよび市民参加型プロセス、議会の関与等、決定までのプロセスを具体的に明示してください。


2025年万博基本構想検討会議」での検討がされたと方法書に記載がありますが、議事録・資料からも6会場を候補とし検討を始めたにも関わらず、夢洲が候補地にあがったとたん、夢洲が決定したかのように、第1回から夢洲ありきで議論が進んでいるように映ります。


F5つのP、パートナーシップの強化

 調査・予測・評価・事後調査において、情報公開と市民参加を促進し、幅広い市民および市民団体との連携し、協働する手法を提示し、確実に実施すべきです。


G持続可能性アセスメント・防災に関するリスクアセスメントを実施すべきです。

SDGs前に開催されたミラノ博において、SDGsへの寄与を謳った持続可能性アセスメントが実施されています。大阪万博はSDGs達成を目的として開催する万博であり、SDGsゴールの5年前、2025年というタイミングで実施する重要な位置にあります。

大阪万博では、2、@で前述の通り、防災に関するリスクアセスメント及び、ミラノ万博よりもさらにヴァージョンアップした持続可能性アセスメントを、自主的に実施すべきです。



3、上下水道の整備、災害時

20181月、山口県周防大島町において、橋の送水管の破断事故が発生し、数日間水道が届かなくなりました。夢洲への送水計画は不明ですが、送水ルートが限られていることは明らかです。同様の事態が起こった際に、15〜30万人規模の命に係わる事態となります。


そもそも、夢洲まちづくり計画の詳細も決まっていない中で、アセスメントを実施すべきではありません。

非常時、どのような計画・体制になるのか。上水・下水ともに、どのように整備計画を立てるのか。通常時のみならず、災害時を含めた整備計画を決定し、説明すべきです。

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2019年09月12日

G20サミットに市民社会の声は届いたのかー先進国の閣僚や首脳たちだけで、世界のルールを決めるのはおかしいー

「先進国の閣僚や首脳たちだけで、世界のルールを決めるのはおかしい」

2019年6月28・29日のG20大阪サミットに併せて、国内外、さまざまな市民社会側の取組がされました。

どういった取り組みが、どんな立場でされたのか。ぜひご覧ください!


AMネット会報LIM92号(2019年8月発行)より記事紹介


G20
サミットに市民社会の声は届いたのか
 


堀内 葵(国際協力NGOセンター アドボカシー・コーディネイター/AMネット理事)


6月29日(土)、大規模な交通規制や公立幼稚園や小中学校の臨時休業、企業活動の自粛要請など、人々の生活に大きな影響を及ぼしたG20大阪サミットは、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献などを記載した「G20大阪首脳宣言」と17に上る付属文書を採択して閉幕した。


このG20大阪サミットに向けた市民社会による活動は、おおよそ3つの「立場」で整理できる。


一つ目は、G20サミットで議論される課題に対し、市民社会の「立場」から政策提言を行うものだ。G20諸国の市民社会を中心に、「C20」という枠組みがつくられ、2013年のG20サンクトペルブルグ・サミット(ロシア)以来、議長との対話や意見交換を続けてきた。


G20議長が出席して市民社会との対話に臨む場が、G20サミットの数ヶ月前に開催される「C20サミット」だ。


過去に、ロシアのプーチン大統領、オーストラリアのアボット首相、ドイツのメルケル首相、アルゼンチンのマクリ大統領などが参加してきた。今年は、国際協力NGOセンターとSDGs市民社会ネットワークが共同事務局を務める「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」が中心となり、4月21〜23日に東京で「C20サミット」を開催し、G20議長を招待した。


しかし、直前になって外交日程と重なるとの理由で出席が叶わず、代わりに外務副大臣が出席することとなった。


C20による政策提言は、反腐敗、教育、環境、ジェンダー、国際保健、インフラ、国際財政制度、労働・ビジネスと人権、地域から世界へ(市民社会のあり方)、貿易・投資、デジタル経済という11分野からなる個別提言と、全体宣言(コミュニケ)および、「東京民主主義宣言」から成る。


G20サミットに集う各国首脳たちに対し、地球規模の課題には地球規模での解決策が必要であることや、市民民社会と多くの取り残されている人々とともに、多国間主義、民主主義、市民的権利、透明性や公開性などの共通の価値観の重要性を提言している。


政策提言書は、上記の事情により、C20サミットに先立って首相官邸を訪問したC20代表団によって、G20議長に手渡された。



<C20サミットには40ヵ国からのべ800名以上が参加した。スクリーンには、C20政策提言書をG20議長に手渡している場面が映し出されている。>



二つ目は、サミット開催地の市民社会として、地元の「立場」から様々な社会問題を考え、発信する、というものである。


これは本誌でも報告されている通り、サミットに先立つ6月25〜26日に「G20大阪市民サミット」として開催され、最終日には、地に足の着いた活動や日々の暮らしから自分たちの声を首脳会議や世界に発信することを盛り込んだ「G20大阪市民サミット全体宣言文」が採択された。


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<「G20大阪市民サミット全体宣言」が採択>


三つ目は、G20サミットそのものが金融危機や貧困、気候変動・環境破壊、戦争などを世界中にばらまいてきたとして、サミットに反対する「立場」から抗議活動を行うものだ。


G20大阪サミットの首脳会合を前に、大阪・本町から難波にかけて街頭デモが行われ、首脳会合当日には会議場であるインテックス大阪のある咲洲に近い天保山でも200名近くが集まるデモが開催された。



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<G20サミットの地元・大阪では、市民によるデモが開催された>


街頭デモでの集会アピールでは、世界中に住む多くの人々が戦争・占領、困窮と悲惨、地球温暖化と巨大化する災害、独裁政権の下での人権抑圧に苦しんでいること、世界の主要国と自称する19の国とEU、国際機関の首脳が集まるG20はグローバルな問題について解決策を考え出すとされているが、そもそも誰がG20にそのような権限を与えたのか、G20はそのような役割にふさわしい集まりなのか、と問うている。


デモを主催した「G20大阪NO!アクション・ウィーク実行委員会」は、「戦争や占領、温暖化の犠牲になる人々、新自由主義的グローバル化の中で犠牲にされ、搾取されてきた人々を排除して、むしろそのような犠牲を生み出してきた側の諸国が大半を占める会議に私たちは何も期待することはできません」と主張している。


これら3つの立場は、それぞれ立脚点が異なり、G20サミットをどのようなものとして捉えているか、また、どのような方法で働きかけをするかは異なっているものの、「市民社会」からの発信である、という点で共通している。


では、これらの「市民社会」からの声は、どの程度、G20の首脳たちに届いたのか。


一つ目の立場である「C20」は、G20の公式なエンゲージメント・グループ(参画グループ)としてG20サミットに参加しており、政府側の分野別作業部会での発表やシェルパ会合での意見表明、そしてG20議長や外務副大臣への政策提言書の手交が実現している。


これらの政策提言は、G20首脳宣言への反映を目的として行われた。6月29日に国際メディアセンターにて発表されたC20による緊急声明では、教育や国際保健、労働などの分野で一部、市民社会が提案してきた内容が盛り込まれた一方で、環境やジェンダー、インフラ、貿易・投資など、多くの分野で市民社会による提言が反映されなかった。


特に、気候変動では、アメリカ政府によるパリ協定離脱について改めて言及されるなど、市民社会が求めてきた積極的な取り組みは約束されなかった。


なお、「C20」に参加している「環境・気候・エネルギー」ワーキンググループの参加団体は、G20首脳会合の期間中、世界中で気候変動への取り組みやや石炭火力発電への支援停止を呼びかけるキャンペーンを行い、メディアから注目された。


国際メディアセンターにおけるエンゲージメント・グループの取り扱いについても触れておく必要がある。


国際メディアセンターとは、各国のメディアがサミットの取材を行う場所であり、従来のサミットではエンゲージメント・グループにもアクセスが認められ、メディア関係者や記者への個別ブリーフィングや記者会見の開催が行われてきた。メディアにとっても、サミットを多角的に報道する観点からエンゲージメント・グループの参加は歓迎されてきた。


しかし、今年のサミット議長国である日本政府は、エンゲージメント・グループの作業場所を、記者が作業するスペースから5分以上も歩かなければならない隔離された施設に設置し、エンゲージメント・グループによる自由な文書配布を認めず、スクリーンやプロジェクターなど記者会見に必要な設備も準備せず、C20関係者の服装すら制限するという前代未聞の対応を繰り返した。


服装の制限―特定の文言が記載されたTシャツの着用は、G20参加国の出身者に「不快な思いをさせるかもしれない」との理由だったが、実際の文言はいわゆるヘイトスピーチとは程遠いものであったため、C20関係者の抗議と説得により、服装の制限は撤回された。本件は意見表明の自由や報道へのアクセスへの制限が加えられようとした事例として記録し、今後、同様の事態が発生しないよう、政府側・市民社会側ともに今後の教訓とすべきである。


二つ目の立場については、採択された「G20大阪市民サミット全体宣言」を、今後、どのような場で活用し広げていくのかが、主催者である「G20大阪市民サミット実行委員会」によって検討される予定だ。



三つ目の立場については、デモ開催直後に複数の大手メディアで取り上げられ、特に海外メディアの関心が高かったことが特徴的である。


G7やG20サミットなどの国際会議においては、開催地やその周辺の人々がデモを行うことが恒例となっており、特に移民排斥や気候変動交渉などで問題発言を続ける首脳が多数参加するG20サミットにおいても、首脳とは異なった声をしっかりと聞こうというメディア側の姿勢が見られる。

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<「G20大阪市民サミット」では議論の様子をグラフィック・レコーディングという手法で可視化した>


しかしながら、2020年のG20サミットはサウジアラビアを議長国として開催されることや、2021年のイタリア、2022年のインドまでが決定しており、「G20サミットを持続させるな!」や「G20はいらない」という声は首脳たちには届きそうにはないのが現状だ。


来年のG20サミットで議長国を務めるサウジアラビアは、「後見人制度」により男性の従属下に置かれる女性の人権が抑圧されていることや、2018年に発生したジャーナリスト殺害事件、イエメン内戦への軍事介入など、国内外で人権上の課題を多数抱えている。


「C20」が発表した政策提言書においても、腐敗防止やジェンダー平等(特に、LGBTQIの人々の人権保護)が挙げられており、日本も含むG20諸国全体の課題として、継続的に働きかけをしていく必要がある。今後も、市民社会として、それぞれの「戦略」が効果的に機能するよう、3つの立場を組み合わせていかなければならない。■
posted by AMnet at 14:14| G20 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月08日

水道民営化すると→プレイヤーが増え、より複雑に。想定外への対応が遅れる。競争がなくなる。コストが上がる。サービスが不安定になる。台風で露呈した関空コンセッションの危うさ、などAMネット会報記事より

8/20〆切】水道民営化を進める、改正水道法の10月施行に向けたパブコメが始まっています。


「水道民営化を進める」と多くの批判を受ける中、国会での審議もほとんどないままに、2018年可決した水道法改正。

201910月1日の改正水道法の施行に向けて、関連制度等のパブリックコメントは5案件あり、8月20日〆切。


以下2つのパブコメは同じ指摘ができる水道民営化に直結する内容です。

公共サービスで民営化を進めるとはどういうことか。AMネット会報記事をご紹介します。

よろしければ参考にしていただき、パブコメを提出しましょう!

■「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について


■「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」に関する御意見の募集について



AMネット会報LIM90号(2019年2月発行)より

公共サービスの効率化?まずは「安定」を!

公共サービスの民営化を進める政府

2018年6月PFI法改正が、同年12月水道法改正も成立しました。

PFI法は、ほぼ全ての「公共施設等」が対象と非常に広範です。

以下の図を見てもわかる通り、さまざまな分野の公共施設のPFI実施方針が、公表されているだけでもこれだけの数字が上がっています。

(対象外は「各事業の所轄部局で定める」もののみ)


内閣府PFI分野別実施件数.jpg

(出典:内閣府 PPP/PFIの概要)


政府は内閣府に「PPP/PFI推進室」を設置し、PPP/PFIを優先的に検討すべきとする指針を出し、ワンストップ窓口を作り、全額補助金でのコンセッション導入可能性の調査など、国の支援機能の強化が図られています。


その中でも水道は、「コンセッション方式導入による官民連携の推進」が水道法改正により明記され、水道のコンセッション導入のための調査を内閣府が推進するなど、まさに主要ターゲットです。


そういった調査や委託を受けた地域の中から、「コンセッション導入に向けた働きかけトップセールスリスト」として19自治体が名指しされています。


※「トップセールスリスト」対象事業体

大阪市・奈良市・広島県・橋本市・紀の川市・ニセコ町・浜松市・大津市・宇都宮市・さいたま市・柏市・横浜市・岐阜市・岡崎市・三重県・四日市市・京都府・熊本市・宮崎市


ちなみにトップセールスリストの「対象事業体の選定指標」は、こうなっています。


@コンセッション方式導入に向けた実施方針を策定済み

Aコンセッションを含む官民連携検討のために、厚生労働省の交付金や委託調査を活用

B下水道のコンセッションを検討

C要件に該当(人口20万人以上、平成25年度に原則黒字経営、2040年度まで人口減少率が20%以下)



特にCの「要件」を見ると、

「そこそこの人口規模で、今後も減らず、黒字運営」といった、好条件の自治体が対象であることが分かります。


なぜ、好条件の自治体をよりすぐり、わざわざコンセッションを導入せねばならないのか?理解に苦しみます。


PFIで「プレイヤーが増え、より複雑になる」


コンセッションは、公共施設等の「計画策定」「建設」「維持・管理」「運営」など多分野の業務を行うため、多くは、複数の企業でグループを作り、SPC(特定目的会社)を設立します。


その際、SPC参加企業間はもとより、SPCと地方公共団体・金融機関、SPCが破綻しないよう地方公共団体と金融機関の間など、いくつもの協定や契約を結ぶこととなります。

PFIの仕組み.jpg

(出典:内閣府HP PFIの仕組み)



PFIで「競争がなくなる」

水道事業のコンセッションであれば、通常20~30年と長期にわたります。


 そもそもSPC参加企業は、営利を目的とする民間会社であり、利益のために参加しています。

業務ごとに入札する従来と比べ、PFIはSPCに、一括して任されています。

するとどうなるか。

外部との価格競争なく、SPC参加企業内で請け負う「SPC版の随意契約」となり、結果「割高な価格」となる可能性を容易に想像できます。


しかし、地方公共団体は現場もノウハウも無くなるため、その価格が適正なのか判断することすら困難になります。

そもそも、どこまで情報公開がされるかも不透明であり、すでに浜松市の下水道コンセッション契約でも、「企業の利益に反する」とされれば情報公開する必要がありません。


長期間、競争がない状態の中で、ブラックボックス化し、料金が高騰しないか。契約内容は履行されるのか。市民サービスレベルの向上は可能か。


コストカットしながら、それらが可能なのか、非常に疑問です。


PFIで「想定外への対応が遅れる」

長期契約期間中に、想定外の災害が起きればどうなるでしょうか。


まずは地方公共団体・SPC(特定目的会社)のどちらの分担か、契約書のリスク分担を確認することから始まります。


分担が明確でない場合は、まずはどこが責任をもって対応するのか、交渉・調整が必要となります。

いざという時、責任の所在はどこか。契約が多岐にわたるほど、参加企業内の思惑も錯綜し、調整困難となるでしょう。


また、SPCの分担であっても、SPCが費用負担できない場合、サービス継続の必要があれば、結果的に、公金を投入せざるを得ないでしょう。


日常的に、リスク分担を再交渉するとしても、長期の事業リスクを見通すことは非常に困難です。

地方公共団体が普段から維持管理していれば、「すぐに対応する」ことが可能です。PFIで想定外時の対応が遅れることは明らかです。


また、日ごろからの耐震化も、「性能発注しているから安心」というわけではありません。「契約通り実施されない」事例が、海外で多く起こっていることも留意すべきです。


料金収入はSPCが徴収する、つまり、金を握るのはSPCです。現場の運営もSPC、金もSPCが握るのに、最終責任は行政がとることになります。


一例として、廃案になった大阪市の水道民営化プランでのリスク分担を見てみます。

災害などの「不可抗力リスク」では「物理的損壊が、運営権者が行う維持管理の範囲内で対応できる場合」は民間事業者の担当、「物価変動リスク」「金利変動リスク」は、「経営改善の余地がある場合」は民間事業者のリスク担当とあります。


つまり民間事業者が「できない」と言えば、実質的に、行政がリスク分担せざるを得ないということになります。「リスクは行政に、利益は民間に」と言われるゆえんです。


PFIで「コストがあがる」

PFI導入により、「株主配当」「役員報酬」「法人税」など、公営企業であれば不要な経費が必要となります。しかし、それ以外にも、PFI固有の経費がかかります。


PFI経費比較国土交通省のPPPPFIへの取組みと案件形成の推進.jpg

(出典:国交省のPPP/PFIへの取組みと案件形成の推進)


PFIを使うということは、参加企業や金融機関、地方公共団体など、プレイヤーがふえるということです。

当然、それぞれ協定書や契約書が必要となり、調整コスト、事業計画等の調査・提案コスト、それらにかかる弁護士やコンサルタントへの外部への報酬等が、必要となります。


 また資金調達の金利コストも上がります。起債など地方公共団体は、これまで市場よりも低金利で調達することが可能でしたが、民間が調達するとなれば、信用力の差は歴然であり、当然金利があがります。


施設更新には多額の資金が必要なため、金利増も、大きな負担となるでしょう。


 地方公共団体の負担も増えます。

それら契約は地方公共団体の職員が取り扱える専門性を超えており、外部アドバイザーへの報酬も当然必要となります。


モニタリング・管理監督で事業内容を監視するとしていますが、現場のない中の実施は、安全性を担保しようとすればするほど、従来の内部監査より手間・コストがあがると容易に想像できます。


PFIで「サービスが不安定に」


民間事業者・公共、それぞれがサービスを実施した場合の財政負担を比較し、民間事業者がカットできたとなれば、「VFM(Value for Money)」がある、と判断します。


このVFMの有無が、PFI導入が適当かどうか、判断材料となりますが、これらコスト増の中、民間事業者がVFMを上げるには、図で見る通り、水道事業の維持管理・運営費、設計・建設費を下げるしかない、ということになります。


PFI導入で、サービスの向上を図ることが、そもそもスキームとして困難であることは明らかです。


PFI方式で、地方公共団体はSPCに対し、「運営権」=物件(財産権)を売却します。

逆に言えば、地方公共団体にとって、運営権の売却で得た資金を使って、企業債などの債務を返済できることが大きなメリットの一つです。


2018年PFI改正によって、運営権を売却した資金で過去の貸付を返済しても、これまで繰り上げ返済に必要だった「繰上償還に係る補償金」が免除されることとなりました。これは債務削減を狙う地方公共団体の負担を減らすものです。

内閣府がワンストップ窓口で相談も容易、調査費用も全額補助、PFI導入すれば債務返済も容易に…こういったあらゆる方法で、国は地方自治体のPFI/コンセッション導入を後押ししています。


SPCは公共サービスの「運営権」を「物件」とし抵当権の設定や譲渡が可能です。

「運営権」を担保とし、銀行や官民ファンド、証券市場から資金調達を行うことができます。


「運営権」が担保になる。万が一、SPCが破たんした場合、その担保はどうなるのか

英国第2位の建設会社であり、多数のPFIを請負っていたカリリオン社が、2018年1月破綻した事実があります。

イギリスの市民サービスへの影響は、どうなったのか。政府・地方公共団体の費用負担は?詳細な報告が待たれます。


台風21号で露呈。関空コンセッションの危うさ

関西国際空港は2016年4月以降、国内第1号の空港コンセッションとして、オリックス鰍ニフランス資本のヴァシン・エアポートを中心としたコンソーシアム企業が運営しています。


 2018年9月、台風21号による高潮と高波によってターミナルや滑走路が浸水し、地下の配電盤が故障して停電しました。


いくつか記事見だしを上げてみるだけでも、コンセッションのもろさを指摘する報道が絶えません。


産経:関空めぐる権利関係複雑 防災、復旧のネックにも


東洋経済:「関空」経営陣、災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ


日経:災害時の対応に課題も 関空運営、台風21号で混乱


日経 xTECH民営化から2年半、水没した関空の“後始末”は誰が?


「短期間で復旧したのは、関空を運営する関西エアポート(KAP)経営陣の危機対応能力を疑問視した官邸が、早い段階で国主導の復旧に事実上切り替えたからだ」

「KAP経営陣の資質については、国内外の航空会社が2016年4月の民営化当時から疑問視しており、台風対応という危機管理で表面化しただけ」

などと手厳しい記事が顕著ですが、これは関空に限ったことではなく、そもそもPFI/コンセッションが抱える課題そのものと言えるでしょう。


民間事業者の「創意工夫とノウハウ」とは?

政府資料はじめ、コンセッション導入を検討する自治体の資料をいくら見ても、民間事業者を入れるメリットは「民間の創意工夫とノウハウ」という抽象的なものであり、具体的に何かが見えないのが現状です。

唯一具体的なものは、「一括発注による業務の削減」「職員数削減」と、どこも同じですが、これは民営化のメリットと言えるのでしょうか。



技術継承が危ういのはなぜか

業務委託、包括委託、PFI、コンセッション、完全民営化…と様々な種類がありますが、これらの手法はすべて「PPP=官民連携」です。


「業務委託」は、すでにほとんどの自治体で進み、水道料金の検針業務をはじめ、管路耐震化の工事など、個々の業務が発注されています。

大阪市も民間への業務委託が進み、10数年で2000人から1300人まで職員数が激減しました。

これは「700人分の現場を失った」だけであり、仕事が減ったわけではありません。

業者に対して、発注・管理監督業務だけでなく、市民サービスを円滑にするため、民間事業者の失敗のフォローやノウハウを教える必要があります。


また、水道局がすぐに対応できたサービスも民間に任せた結果、日数・費用が増えるなど、市民サービスも悪化しています。


この10数年もの間、全国の水道職員の若手採用はほとんどなく、30~45%もの職員数が減らされています。

全国の水道で「技術継承が困難」な状況は当然の結果です。

PFI/コンセッションだけでなく、PPPをこれ以上増やすべきではありません。■


posted by AMnet at 19:40| 水の私営化問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月02日

【大阪IR基本構想へパブコメを送ろう!8/9〆切】夢洲に集客施設を作るのは、無理!夢洲万博は半年間で2,800万人の集客を想定…(USJ来場者は約年間1400万人)

【パブコメを送ろう!8/9〆切】

大阪IR基本構想(案)へのパブリックコメントが始まっています。


大阪IR基本構想(案)より抜粋


1章14P「IRの立地」

IR基本構想1章14PIRの立地.jpg

2章34P「安心して滞在できるまちの実現」

 IR基本構想2章34P安心まちづくり.jpg


に対する、パブコメとしてよろしければお使いください。


■パブコメ提出・構想案はこちらから
「大阪IR基本構想」(案)に対する府民意見等の募集について

http://www.pref.osaka.lg.jp/irs-kikaku/ir_pubcomme/index.html



■夢洲に集客施設を作るのは、無理!■

万博やIRカジノで、人を集めていいの?
万博会場は、夢洲と決まったわけではありません。


【夢洲】ってどんなところ?

@大阪市民があと10~20年、タダで捨てられる「ごみの最終処分地」です。


「グリーンテラス」予定地(画像左の緑ゾーン)
一般ごみの焼却灰が1000万dも埋め立てられており、ダイオキシン・PCBなどの有害物質のため、現在立ち入り禁止の区画です。

「IRカジノ・万博」予定地
浚渫土砂が埋立土砂の80%を占めます。この浚渫土砂は、100年近くにわたり、重化学工業の工場排水・廃液が沈殿している大阪湾の海底地層で、有害。非常に危険です。

夢洲機能配置イメージ.jpg



A夢洲は、埋立途中の水びたしの土地。


(2018年10月の夢洲航空図)

夢洲航空図.jpg

産業廃棄物や浚渫土砂の埋立は、建築物を建設するかどうかで埋め立てるのか変わってきます。

しかし夢洲は埋立も、周囲の護岸設計も、そもそも「建築物の建設を想定されていない」場所です。


夢洲は、埋め立て地だから「沈下」します。

建築物を予定した関空ですら想定以上に沈み、「洪積層の沈下」という従来の常識を覆す事実が起きています。


夢洲は、建築を想定せず埋立てた、埋立途中の水びたしの土地。

その下は、阪神淡路大震災で多くの家屋が倒壊した沖積粘土層の軟弱地盤。

その下にある洪積層も、関空では沈んでいるのです。


B災害時、夢洲は孤立します。

2018年の台風被害で関空は陸の孤島となりました。災害時に大人数を島外へ避難させるのが困難だと明らかです。

万博は、半年間で2,800万人の集客を想定しています(USJ来場者は年間1400万人)。


夢洲へのアクセスは、橋とトンネルの2つしかありません。


コンテナ船が来るたび、すでに大渋滞しています。災害でなくとも、万博で2800万人もの集客をさばく余裕はありません。



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2019年07月05日

『なつぞら』からみる「北海道の酪農家の変遷」北海道通信 〜この先の『食と農と環境』の取り組みへ〜vol.15

2019年5月発行、AMネット会報LIM91号より

北海道通信 〜この先の『食と農と環境』の取り組みへ〜 vol.15

『なつぞら』からみる「北海道の酪農家の変遷」編                    白川 博   


北海道の白川 博です。今号は、【北海道の酪農家の変遷】編と題して、具体的な事例も交えお伝えできればと思います。まず戦後、北海道の酪農家がたどってきたこれまでの苦悩などについて報告していきたいと思います。


○ 戦後「なつぞら」時代の北海道酪農

 今春から始まったNHK連続テレビ小説『なつぞら』。

記念すべき100作目は、戦後の北海道・十勝の大自然で、まっすぐに生き抜いたヒロイン・なつの愛と感動のドラマとのことですが、「北海道の酪農家の変遷」も丁寧に描かれていると感じています。


ヒロイン「なつ」の同級生宅も牛1頭から始めたように、「酪農業」は、豚や鳥のような多頭飼育の経営スタイルではなく、1頭でも飼育して牛乳生産ができることから、どの牧場でも、搾乳牛は『家族』のように扱われてきました。


 『なつぞら』で、草刈 正雄さんが演じる「おじいさん」が自分の牛乳と他の酪農家の牛乳と一緒にされたくないと農協(JA)と反発するシーンは、私のまわりにいるたくさんの酪農家の共感と同時に賛否を呼びました。

本来、自由度が高い「個人経営」であるはずの酪農業が、農協だけに集荷を受けるのはたしかにおかしな話です。


 一方で、農協以外の集荷先である各「乳業メーカー」は、北海道のような広大な農地に点在する酪農家、一軒一軒に牛乳を集荷に回るだけでも大きな手間となります。


さらに、当時は酪農家と乳業メーカーの間で牛乳価格の「相対取引」も可能であったことから、商系メーカーから価格の「買いたたかれ」が横行しました。そのため北海道の酪農家は、営農継続がかなわず離農する農家もあるなど、大変不遇な時期がありました。


そのため、個人の酪農家が団結し、しっかりと「価格競争力」を持って、各「乳業メーカー」に対し生乳取引するため、農協が「一元集荷」などを行うことになりました。


そのことが結果として、現代の北海道酪農の『ブランドイメージ』を定着させたと評価する酪農家が多いことも事実です。半面、なつのおじいさんのような、個人の酪農家が持つ生産オリジナリティは、当時表現することが難しくなりました。


○酪農家のオリジナリティと北海道ブランド確立

 戦後の北海道酪農は、国(農水省)の農政誘導により、『大規模効率化』を優先してきました。

北海道の酪農家の多くは、メガ・ギガファームと呼ばれる大規模な搾乳機械及び周辺施設を、億単位の自己投資と国の補助事業により建設することを個人・法人経営を問わず選択しました。


 一方で、本当に自分のペースで酪農業を楽しみながら、かつ、牛乳の品質も最高峰のままで収益率も高い『小規模家族経営』の酪農家が近年、北海道内でも増えてきました。

前述の通り、当時の北海道は牛・馬を1頭から飼育して農業経営を始める方が少なくありませんでした。


行き過ぎた経済至上主義のレールに最初から乗ろうとしなかった草刈 正雄さん演じる「おじいさん」の勇気と苦悩が評価されるのはそれから四半世紀以上、先のことになります。

『不毛地帯』とまで揶揄された北海道の酪農地帯で当時、農家の団結を促し「価格競争力」を持って、商系の乳業メーカーとしっかりと対峙して、現在の日本酪農への安定生産・供給体制を確立したのは紛れもなく農協の力が大きいと感じています。


今も昔も、北海道牛乳の「クオリティ」は最高峰です。それは、酪農生産者の不断の努力の裏付けであることは言うまでもありません。
しかし、当時の酪農家の切実な「総意」として、品質保持の難しい牛乳の「成分特性」を活かした農協の『一元集荷・多元販売』という業界戦略によって確立してきた「北海道ブランド」があることもまた、事実です。
今後の『なつぞら』の展開にも目が離せませんが、ほどよいバランスで、農協や地域関係企業と共栄・共存を図ることも大切なのかも知れません。


posted by AMnet at 18:45| 北海道通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする