AMネット会報LIM78号(2016年2月発行)より
北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol. 3
清水 敬弘さん
北海道・オホーツクの農業団体職員、清水 敬弘です。
第3回目では、日本政府のTPP「影響試算」の農業団体としての見解や、【聖域】とまで呼称されてきた重要5品目が北海道内ではどの様な位置づけにあるかなども含め、検証していきたいと思います。
ご案内の通り、日本政府は昨年12月24日に影響試算額を公表しました。
3年前に3.2兆円の経済効果があると試算した実質GDP(国内総生産)は、今次のTPP協定で何と、14兆円も増加すると見込む一方で、農林水産物は万全な国内対策によって、影響は再度『限定的』であるとし、1,300〜2,100億円に留まると過小評価しました。
この試算公表には、私ども農業団体のみならず、各界の有識者からも厳しい批判が相次いでおります。
また、なぜ一度、協定合意した農畜産物の品目も、7年後に「再協議」のテーブルに上げられてしまうのか?明確に政府から示されない状態が続いています。私どもは、政府が示した影響試算は、【効果を過大評価し、被害を過小評価】するものであり、その対応姿勢は、まるで戦前の「大本営発表」を思わせると厳しく追及しております。
これまで北海道の農業団体は、各関係機関・団体と連携を深めながら、衆・参両院での「国会決議」を遵守せよ!と訴え続けてきました。それらは、繰り返し本編でお伝えしてきた【聖域】と呼ばれる重要5品目の影響が極めて大きい地域が北海道農業であるからです。
歴年にわたり、『日本の食糧生産基地』と呼称され、国の農政誘導が進められてきた北海道では、広大な農地面積を有する反面、重要5品目に全て該当する『コメ・小麦・てん菜・馬鈴しょ』などを幾多の歳月をかけ品種改良し、『寒冷地作物』として確立してきました。
とりわけ、小麦・馬鈴しょと同様にオホーツク地域では、砂糖の原料となる「てん菜(別名:砂糖大根)」は、民間の製糖工場に原料を搬入し精製糖として食卓に並ぶまでの過程で、実に数多くの関連企業との連携を必要とします。
畑で収穫するためのトラクター・各収穫機械の「農機具メーカー」に始まり、収穫した「てん菜」原料を大型トラックで製糖工場に搬入し不純物を迅速に搬出するまでを担う「運送会社」や工場内の各部署ごとに働く「専門スタッフ」など、てん菜生産のみを抽出しても農業は地場産業者とともに歩む、極めてすそ野の広い基幹産業であります。
他方、前述の農作物等が栽培することが難しい地域では、牛・豚(重要5品目)などの畜産振興を推進することで、広大な北海道の農地を守り抜いてきました。
しかし、輸入農畜産物とは圧倒的な「内外価格差」があることから、『政府管掌作物(国が内外価格差是正を目的に、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物:コメ・麦等)』で国内農業衰退を防いできました。
私どもはTPPなどの貿易交渉で『関税差益』が撤廃されると、【世界の常識】である自国の農業生産はもとより、代替作物が存在せず、地域農業者がこれまで「てん菜」等を生産することで果たしてきた『地域コミュニティ(地域雇用)』をこの先は守ることができないとの「統一見解」を持っています。
また、関税収入は農業・農村振興にも役立ててきました。
近年、全国各地で乱発する自然災害を最小限に食い止めるための国土保全・治水効果など、農地の『多面的機能』を日本以外の諸外国では農業政策により、当たり前のように支援しています。
関税収入が枯渇した状態で、日本政府は『必要財源』を一体どのように講じていくのでしょうか。
最後になりますが、私ども北見地区農民連盟では、過日2月5日に、最高決議機関である「第57回定期総会」において『TPP断固反対、批准阻止を強く求める特別決議』を採択しました。
いつから、農業団体は、国会批准対策を諦めたのか?と、生産現場・内外から強いしっ責を受けています。私どもはこの先も、北海道農業・農村を守ることは日本の「基礎食料生産」を守り抜くことに直結するとの観点から、取り組みを強く継続展開してまいります。■
<これまでの北海道通信はこちらから>
北海道通信vol.1 北海道JAの役割
http://am-net.seesaa.net/article/430972793.html
北海道通信vol.2北海道農業とTPP聖域5品目の関係
http://am-net.seesaa.net/article/438060983.html
北海道通信vol.3北海道農業事情
http://am-net.seesaa.net/article/439134227.html
北海道通信vol.4 生乳の仕組み、指定団体制度の役割
http://am-net.seesaa.net/article/442570265.html
北海道通信vol.5 バター不足の真実
http://am-net.seesaa.net/article/442570586.html
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2016年06月18日
2016年05月20日
北海道通信 -北海道農業とTPP聖域5品目の関係〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.2
AMネット会報LIM77号(2015年12月発行)より
北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol. 2
清水 敬弘さん
※vol.1はこちらから
第2回は、TPPが今後、北海道にもたらす様々な影響等について考えたいと思います。
北海道は『日本の食糧生産基地』と呼ばれ、TPPの他、貿易交渉事における農畜産物「関税交渉」では、最も甚大な影響が及ぶとされる地域です。
日増しに明らかになる交渉結果で、強く批判されているのが【聖域】と呼称され、北海道で多くを生産するコメや牛肉を含む「重要5品目」の関税交渉における『大幅譲歩』であります。
実は、北海道で意欲をもって農業を始める若き農業青年は、大半の方が親の栽培する農産物が、『政府管掌作物※』であることを知りません。
TPP問題を知ることは、国内外をめぐる農業政策の『違いや構造的課題』を知ることです。
日本国内で栽培する野菜類や果樹などの『市場流通品目』と、『政府管掌作目※』との収支の違いや仕組みを勉強する機会が乏しいことから、北海道の各JAでは青年部・女性部向けの「農政学習会」などを進める様になりました。
(※国が内外価格差是正を目的に、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物:コメ・麦等)
ここからは、前述のTPP交渉「大筋合意(大幅譲歩)」ではどの様な影響が予測されるのかを検証していきます。
現在、日本の関税収入は約9,300億円(平成23年内閣府調べ)とされ、多種多様な国内農畜産物をその『重要度』などによって高関税をかけ、農作物の無秩序な輸入を防いでいます。
これまで、関税収入を財源とし農業政策を構築していた農水省は、「足りない部分は(国民理解を経て)一般財源で賄う」と、北海道の政府説明会で回答しました。
我々は、今もなお財政逼迫し【借金大国】と揶揄されている日本の国民各層に「納税者理解」を得ることは極めて難しいものと理解しています。従って、前述の「国家貿易品目」指定の『政府管掌作物』は事実上、作付できず、そのほとんどが海外原料に置き換わることが予測されます。
かつて、日本の貿易交渉では1951年の丸太関税撤廃や、1964年の木材「完全輸入自由化」が断行され、全国各地の林業振興は荒廃し、北海道で林業関連の雇用を失ったマチは、その後衰退の一途を辿りました。
「農業生産だけは失ってはならない!」と訴える、基礎自治体首長が北海道には多数おります。それは、農林水産業が、『基幹産業』として、地域のコミュニティ形成を担ってきたからです。
北海道庁農政部では、TPPが農業分野に与える影響試算額を見直し、総額1兆5,846億円、地域雇用でも11.2万人失われると下方修正しました。しかし、私どもの『独自試算』では、これ以上のインパクトがあるとみており、現在も、影響試算の検証を続けております。
また一方で、北海道はTPP妥結以降も、広大な大地を利活用して、大規模畑作・酪農経営ができると論じる各界有識者の方々がおられますが、これは大きな間違いです。
規模の大小を問わず、農業経営にも『損益分岐点』があり、TPP以前から国の政策誘導などによって、大規模畑作・酪農経営を行うために、高額な借り入れをした資本投資の支払いが残る農家が多くいます。
前述の、意欲ある当地の若き農業青年は、来る日も早朝から夜遅くまでの『過重労働』を、こなしています。
大切な『親子時間(先代から農業経営を学ぶ時間)』や農政学習の時間の代償の上に、農地面積や家畜頭数の『規模拡大』を進めてきました。あくまでも、農業経営は『個人の判断』です。
しかし国や農水省が提示する農業政策推進は『政府管掌作物』栽培であり、北海道農業者の近未来の経営判断に極めて大きな地域影響を及ぼすことを、私は前職が農業者であった経験則から痛いほど理解しております。
そのため、この先の見通しが全く立たない経営体が後を絶たず、健全経営の家族農家でも余力財産がある内にと、『見切り(離農)』をすることが予測されています。
最後になりますが、【終わりの始まり】が見えてしまうかの様な国内農畜産物関税の『大幅譲歩』となるTPPの大筋合意ですが、国会批准までは時間が残されております。
この先も、北海道農業は日本を支え続ける基礎食料生産を持続していくためにも、私どもは決して諦めることなく、TPP断固反対運動の各種対策を講じてまいります。■
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北海道通信vol.5 バター不足の真実
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北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol. 2
清水 敬弘さん
※vol.1はこちらから
第2回は、TPPが今後、北海道にもたらす様々な影響等について考えたいと思います。
北海道は『日本の食糧生産基地』と呼ばれ、TPPの他、貿易交渉事における農畜産物「関税交渉」では、最も甚大な影響が及ぶとされる地域です。
日増しに明らかになる交渉結果で、強く批判されているのが【聖域】と呼称され、北海道で多くを生産するコメや牛肉を含む「重要5品目」の関税交渉における『大幅譲歩』であります。
実は、北海道で意欲をもって農業を始める若き農業青年は、大半の方が親の栽培する農産物が、『政府管掌作物※』であることを知りません。
TPP問題を知ることは、国内外をめぐる農業政策の『違いや構造的課題』を知ることです。
日本国内で栽培する野菜類や果樹などの『市場流通品目』と、『政府管掌作目※』との収支の違いや仕組みを勉強する機会が乏しいことから、北海道の各JAでは青年部・女性部向けの「農政学習会」などを進める様になりました。
(※国が内外価格差是正を目的に、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物:コメ・麦等)
ここからは、前述のTPP交渉「大筋合意(大幅譲歩)」ではどの様な影響が予測されるのかを検証していきます。
現在、日本の関税収入は約9,300億円(平成23年内閣府調べ)とされ、多種多様な国内農畜産物をその『重要度』などによって高関税をかけ、農作物の無秩序な輸入を防いでいます。
これまで、関税収入を財源とし農業政策を構築していた農水省は、「足りない部分は(国民理解を経て)一般財源で賄う」と、北海道の政府説明会で回答しました。
我々は、今もなお財政逼迫し【借金大国】と揶揄されている日本の国民各層に「納税者理解」を得ることは極めて難しいものと理解しています。従って、前述の「国家貿易品目」指定の『政府管掌作物』は事実上、作付できず、そのほとんどが海外原料に置き換わることが予測されます。
かつて、日本の貿易交渉では1951年の丸太関税撤廃や、1964年の木材「完全輸入自由化」が断行され、全国各地の林業振興は荒廃し、北海道で林業関連の雇用を失ったマチは、その後衰退の一途を辿りました。
「農業生産だけは失ってはならない!」と訴える、基礎自治体首長が北海道には多数おります。それは、農林水産業が、『基幹産業』として、地域のコミュニティ形成を担ってきたからです。
北海道庁農政部では、TPPが農業分野に与える影響試算額を見直し、総額1兆5,846億円、地域雇用でも11.2万人失われると下方修正しました。しかし、私どもの『独自試算』では、これ以上のインパクトがあるとみており、現在も、影響試算の検証を続けております。
また一方で、北海道はTPP妥結以降も、広大な大地を利活用して、大規模畑作・酪農経営ができると論じる各界有識者の方々がおられますが、これは大きな間違いです。
規模の大小を問わず、農業経営にも『損益分岐点』があり、TPP以前から国の政策誘導などによって、大規模畑作・酪農経営を行うために、高額な借り入れをした資本投資の支払いが残る農家が多くいます。
前述の、意欲ある当地の若き農業青年は、来る日も早朝から夜遅くまでの『過重労働』を、こなしています。
大切な『親子時間(先代から農業経営を学ぶ時間)』や農政学習の時間の代償の上に、農地面積や家畜頭数の『規模拡大』を進めてきました。あくまでも、農業経営は『個人の判断』です。
しかし国や農水省が提示する農業政策推進は『政府管掌作物』栽培であり、北海道農業者の近未来の経営判断に極めて大きな地域影響を及ぼすことを、私は前職が農業者であった経験則から痛いほど理解しております。
そのため、この先の見通しが全く立たない経営体が後を絶たず、健全経営の家族農家でも余力財産がある内にと、『見切り(離農)』をすることが予測されています。
最後になりますが、【終わりの始まり】が見えてしまうかの様な国内農畜産物関税の『大幅譲歩』となるTPPの大筋合意ですが、国会批准までは時間が残されております。
この先も、北海道農業は日本を支え続ける基礎食料生産を持続していくためにも、私どもは決して諦めることなく、TPP断固反対運動の各種対策を講じてまいります。■
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北海道通信vol.4 生乳の仕組み、指定団体制度の役割
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北海道通信vol.5 バター不足の真実
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2015年12月10日
AMネット会報より「北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.1-北海道JAの役割-
AMネット会報LIM第76号(2015年6月発行)より、北海道農民連盟職員、清水さんから北海道の現状をお伝えいただきました。
TPPが与える北海道への影響、JAの役割、北海道農業と他地域との違いなど、現場からの報告vol.1です!
北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.1
清水 敬弘(北見地区農民連盟 事務局長)
私は現在、北海道・オホーツク地域で農業団体の職員、前職は知床に近い清里町で農家でした。
私が考えるこの先の『食と農と環境』への取り組みは、生産者と消費者双方の相互理解を求めていく粘り強い意識啓発の取り組みに尽きると考えています。
北海道農業で当たり前に感じていたことは、都会の方々からすると極めて『想像しにくい』ことであると、大阪出身の妻と結婚したことで、経験則として感じています。妻と知り合った頃、ドライブでコンビニエンスストアを中心にトイレ休憩を取ることを妻はとても不思議がりました。
実際、妻の実家がある大阪ではコンビニの駐車場は狭く、大手量販店などが立ち並んでいます。北海道の様に、地方都市に行くまでに【何もない】状態とは全く違います。
それらは、「地方と都市」あるいは「農村地域と大都会」を繋いでいる実情でもあります。
地方の生活コミュニティを維持するために、必要不可欠な『インフラ整備』は、生産現場のプロ農家と、それらの受け皿となる地域農協(JA)が各業界と連携構築し、支えてきました。
その様な状況において、60年振りに見直された国の『改正農協法』。
私どもはこれに反論する主張を続けています。【既得権益団体】と揶揄されても、守り抜かなくてはならない「農村景観」や「食料生産」の尊さを、皆さんにお伝えできればと思います。
かつて、小泉政権時代に【聖域なき構造改革】を御旗に郵便局が民営化されましたが、地方まで恩恵は届きませんでした。今も、全国津々浦々に銀行を構えているのは、郵便局とJAバンクのみです。
人口密度の違いを大阪と比較したいのではありません。地方で生活するために不可欠な『ライフライン(Aコープ・スタンド・金融の地域振興・雇用創出)』を歴年にわたり、私ども農業団体も地方自治体とともに、地域形成してきた経過をお伝えできればと思うのです。
また、北海道JAには都府県JAと比較して大きく違う要素があります。
北海道は、食料自給率200%、日本の『食料生産基地』と呼ばれるゆえんが、個別農家より信頼をもらい進めている農畜産物の『販売事業』です。
都府県のJA連合会では、野菜や果樹生産が大半を占め、作物特性上、鮮度やタイミングが求められJAではなく「市場や民間業者」への出荷が多くあります。
一方、『政府管掌作物(国が内外価格差を是正するため、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物)』と呼称される北海道の寒冷地作物は、「二次加工品」とも呼ばれ、米や野菜・果樹の様に市場や小売店に、直接販売することが難しい作物ばかりです。
反面、農水省が示す「大規模集約農業」には機械投資や乾燥・調整施設のハード面も含め、北海道JAがそれらを担ってきた背景があります。ここに、前述のJAバンクの「金融」、JA共済の「生保」が相まり、北海道JAは『総合農協』としての位置付けを明確にしてきました。
北海道の生産農家は自慢の畑が痩せないよう、春の「種まき(定植)」から晩秋の「穫り入れ(収穫)」まで、『輪作体系』を確立しています。小麦・てん菜・馬鈴しょ・豆類などをローテーションで植え、地元JAに出荷することで、肥沃な北海道の大地を守り抜いてきました。
その間、地元JAは『協同の精神』に基づき、大きなロットで預った農畜産物を北海道の経済連である「ホクレン」に一元集約し、全国のバイヤー・商社等と取引を行い、北海道ブランドとして皆さんの食卓に安心・安全と『安定供給』をお届けしてきました。
最後になりますが、【食料自給は海外依存で】と考える一部の消費者の方々や、【(何も知らない消費者は)食べるモノが無くなってから気がつけばいい】と達観する生産者双方の「相互理解の懸け橋」となることを求めて、この先も『食と農と環境』に対する意識啓発と理解醸成の取り組みを粘り強く進めてまいります。■
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北海道通信vol.3北海道農業事情
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TPPが与える北海道への影響、JAの役割、北海道農業と他地域との違いなど、現場からの報告vol.1です!
北海道通信〜この先の『食と農と環境』への取り組みvol.1
清水 敬弘(北見地区農民連盟 事務局長)
私は現在、北海道・オホーツク地域で農業団体の職員、前職は知床に近い清里町で農家でした。
私が考えるこの先の『食と農と環境』への取り組みは、生産者と消費者双方の相互理解を求めていく粘り強い意識啓発の取り組みに尽きると考えています。
北海道農業で当たり前に感じていたことは、都会の方々からすると極めて『想像しにくい』ことであると、大阪出身の妻と結婚したことで、経験則として感じています。妻と知り合った頃、ドライブでコンビニエンスストアを中心にトイレ休憩を取ることを妻はとても不思議がりました。
実際、妻の実家がある大阪ではコンビニの駐車場は狭く、大手量販店などが立ち並んでいます。北海道の様に、地方都市に行くまでに【何もない】状態とは全く違います。
それらは、「地方と都市」あるいは「農村地域と大都会」を繋いでいる実情でもあります。
地方の生活コミュニティを維持するために、必要不可欠な『インフラ整備』は、生産現場のプロ農家と、それらの受け皿となる地域農協(JA)が各業界と連携構築し、支えてきました。
その様な状況において、60年振りに見直された国の『改正農協法』。
私どもはこれに反論する主張を続けています。【既得権益団体】と揶揄されても、守り抜かなくてはならない「農村景観」や「食料生産」の尊さを、皆さんにお伝えできればと思います。
かつて、小泉政権時代に【聖域なき構造改革】を御旗に郵便局が民営化されましたが、地方まで恩恵は届きませんでした。今も、全国津々浦々に銀行を構えているのは、郵便局とJAバンクのみです。
人口密度の違いを大阪と比較したいのではありません。地方で生活するために不可欠な『ライフライン(Aコープ・スタンド・金融の地域振興・雇用創出)』を歴年にわたり、私ども農業団体も地方自治体とともに、地域形成してきた経過をお伝えできればと思うのです。
また、北海道JAには都府県JAと比較して大きく違う要素があります。
北海道は、食料自給率200%、日本の『食料生産基地』と呼ばれるゆえんが、個別農家より信頼をもらい進めている農畜産物の『販売事業』です。
都府県のJA連合会では、野菜や果樹生産が大半を占め、作物特性上、鮮度やタイミングが求められJAではなく「市場や民間業者」への出荷が多くあります。
一方、『政府管掌作物(国が内外価格差を是正するため、作物価格を決める「国家貿易品目」に指定される作物)』と呼称される北海道の寒冷地作物は、「二次加工品」とも呼ばれ、米や野菜・果樹の様に市場や小売店に、直接販売することが難しい作物ばかりです。
反面、農水省が示す「大規模集約農業」には機械投資や乾燥・調整施設のハード面も含め、北海道JAがそれらを担ってきた背景があります。ここに、前述のJAバンクの「金融」、JA共済の「生保」が相まり、北海道JAは『総合農協』としての位置付けを明確にしてきました。
北海道の生産農家は自慢の畑が痩せないよう、春の「種まき(定植)」から晩秋の「穫り入れ(収穫)」まで、『輪作体系』を確立しています。小麦・てん菜・馬鈴しょ・豆類などをローテーションで植え、地元JAに出荷することで、肥沃な北海道の大地を守り抜いてきました。
その間、地元JAは『協同の精神』に基づき、大きなロットで預った農畜産物を北海道の経済連である「ホクレン」に一元集約し、全国のバイヤー・商社等と取引を行い、北海道ブランドとして皆さんの食卓に安心・安全と『安定供給』をお届けしてきました。
最後になりますが、【食料自給は海外依存で】と考える一部の消費者の方々や、【(何も知らない消費者は)食べるモノが無くなってから気がつけばいい】と達観する生産者双方の「相互理解の懸け橋」となることを求めて、この先も『食と農と環境』に対する意識啓発と理解醸成の取り組みを粘り強く進めてまいります。■
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北海道通信vol.2北海道農業とTPP聖域5品目の関係
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北海道通信vol.3北海道農業事情
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